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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

彼女ができたら、わしに咬ませろ。 9 ―どうして・・・?―

2015年06月01日(Mon) 06:09:59

どうしてあたしが辱められていないのか、ヒロアキさんにはわかって?

翠の問いに虚を突かれたヒロアキは、棒立ちになったまま口をぽかんと開けていた。
まだ十代の男の子だわ。
自分だって同い年のくせに、翠はそんなことは棚に上げて、いつものように怜悧に相手を観察してしまっている。

ばかねぇ。
感情が顔に出るのもかまわずに、翠はつづけた。

処女の生き血がお目当てだからよ。
誇らしげにピンと反らせた胸もとが、真新しい白の夏服に包まれていて眩い。
きちんと襟首を引き締める黒のネクタイまでもが、誇らしげにみえた。

あのひと、いつも2~3人は処女をキープしてるみたいよ。
だから、うちの学校に出入りしてるんだわ。

翠はすっかり、訳知り顔。
なにもわかってないのね・・・と、わざと小ばかにした態度をことさら取るのは。
知らず知らずこの小心な婚約者の存在が、彼女のなかで意外に大きくなりつつある証しだということに、彼女はまだ気づいていない。

もうひとりかふたり、余分にキープできたら。
次あたり、きっとあたしの番ね。

なにが・・・?

おずおずと訊ねる声に、「ばかじゃないの?」翠はわざと冷たく言って、ヒロアキに背を向けた。
もちろん、あの男がいま獲ている以上のものを欲しがっていることに、気づいていないふたりではなかった。
「あたしを犯したがっている」なんて、わざと言わせようとするほどのしたたかさを、ヒロアキが持ち合わせていないことも、翠にはよくわかっていた。
たぶんあの問いは、ぶきっちょな彼そのものなのだろう。

数歩離れてふり返ると、彼女のご機嫌を損ねた少年は、立ち尽くしたまま彼女の行く手を見守っている。
あくまで忠実な婚約者に、翠はふふん、と、鼻を鳴らした。
満足げな笑みが口許にこぼれるのを、ヒロアキは不思議そうに見つめている。

ううん、なんでもない。
けっこう似合うな・・・って、思っただけ。

珍しく履いてきた白のハイソックスに、赤黒い飛沫が派手に散っている。
あの男が無造作に、べっとりと塗りたくっていったのだ。

真っ白なハイソックスを血で濡らしたまま、ふたりはいつものように街なかを通り抜けて、家路についたのだった。
周囲の目線など、もうどうでもよかった。
これ見よがしな小気味よさに心震わせながら、翠はヒロアキの傍らを歩みつづけた。

すぐ隣を歩いていたら、あんまり盗み見れなかったでしょ?

そう言いたげに、翠はフッと笑みを泛べた。
改めて見せつけられて、大きく目を見開いたヒロアキの反応に満足すると。
スカートの前で手を揃えて、ことさらお行儀よく、お辞儀をする。

じゃあまた明日。御機嫌よう。

背すじを伸ばして、赤黒い血を滲ませたハイソックスの脚を恥じらいもせず、大またの歩みを進めてゆく翠を、ヒロアキはぼう然として見つめつづけた。
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