FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

彼女ができたら、わしに咬ませろ。  10 ――窓辺の外と中――

2015年06月01日(Mon) 08:07:31

週にいちどか、二度くらい。
翠さんはボクに黙って、小父さんに逢いに行く。
そういうときには決まって、「ご用があるから」「きょうはごいっしょできないの」って。
詳しいことはなにも告げずに、背中を向ける。
あとを尾(つ)けたりなんかするのは、いけないことだ。決してするまい。
自分で自分にそう言い聞かせながら。
誘惑に勝てたためしなど、じつは一度もなかったりする。

裏口をあけてくれる執事さんに、お礼の印にちょっとだけ血を吸わせてあげて。
小父さんと趣味が同じな執事さんに、ハイソックス越しに咬まれた痕を、ひりひりさせながら。
足音を忍ばせて、庭先に回り込む。
小父さんはどこまで、ボクの行動を知っているんだろう?
行為はいつも、窓辺の広間でされるのだった。

翠さんは小父さんと二、三歩距離を置いて、なにか話をしている。
会話の通じる吸血鬼。
だから気を許したのかも――翠さんでさえ、いつだかそんなことを言っていたっけ。
そう。
いきなり襲い掛かって咬みつくことなど、小父さんはいちどもしたことがない。
ボクを初めて襲った、あの日を除いたら。

「制服汚さないでね」
窓ごしに聞こえるのは、翠さんの声。
いつもと同じ、ツンと取り澄ました冷たい響きに、ボクは胸をぞくりと騒がせる。
「きょうはヒロくんには内緒で来たんだから」
ちょっと目を伏せ、口ごもるのは、翠さんにしては珍しい態度だった。
すこしは、ボクを裏切ることを、後ろめたく思ってくれているのだろうか?

翠さんはためらいもなく、真っ白なセーラー服を脱いでいった。

透けるような白い膚が、広間の薄闇になまめかしく映る。
白無地のブラジャーのストラップが、肩先をきりりと引き締めていて・・・けれども目に痛いほどの白い素肌は、隠しようもなかった。
あの身体が、ボクのものになる。
一瞬、ほんの一瞬だったけど。そんなフラチな想いが、胸をかすめた。
けれども、ボクのものになるはずの翠さんは、
ボクにナイショで小父さんに逢って。
あの白い素肌をこんなふうにして、惜しげもなくさらしてしまっていた。

ククク。
ええ心がけぢゃ。
小父さんは翠さんの黒髪をあやすように撫で、スッとにじり寄る。

あっ・・・
ダメ。ダメダメッ・・・

思わず自分で自分の口をふさいでいるすきに・・・

小父さんは翠さんのおとがいを仰のけて――唇で吸っていた。そう、唇を重ね合わせて。

ボクだって・・・ボクだってまだの口づけを。
小父さんはボクの盗み見ている目のまえで、こともなげに奪っていった。

離れた唇はそのままおとがいを伝うように降りてゆく。
ねっとりと添わされた唇が、首のつけ根まで流れると。
その唇に、やおら力を籠めていった。

ァ・・・

ボクか、翠さんか・・・
声を洩らしたのは、どちらだっただろう。

むき出しの肩を抑えられながら、立ち尽くす翠さんは凛として背すじを伸ばして――
小父さんの吸血を、受け容れてゆく。

キュウキュウ・・・ちゅぱちゅぱ。じゅるうっ・・・

生々しい音を立てて啜るのは、ボクに聞かせるため?
聞えよがしな吸血の音が、ボクの鼓膜をチクチク刺した。

「制服は汚さないで。ハイソックスは、咬んでもいい」
翠さんは顔色ひとつ変えないで、ボクを抜きにした奉仕をつづけていって。
さいごにはソファに腰かけたまま、紺のハイソックスをためらいもなく、咬み破らせていった―――


ヒロアキくんに黙って此処にお邪魔するのは、なん回めだろうか?
お邸の扉のドアノブに手をかけながら、翠はひっそりと、そう思った。
さいしょのときには、まるで魂を売り渡すような心地がしたものだった。
母にそそのかされて、その気になったこととはいえ。
いざ実行に移すと心が震えてしまうのは――やっぱり十代という若さのせいだろう。
いつものように優しく迎え入れてくれた小父さまは、優しく優しく翠のことを咬んでくれた。

制服を汚されたくないのなら――脱がなくちゃいけないよ。
イタズラっぽく笑う小父さまに、翠もフフフ・・・と笑いを返して。
黒のネクタイをほどいてしまうと、あとはかんたんなことだった。
下校してきて自室で着替えるしぐさとおなじことを、この場で遂げてしまうだけ――
手指が意思を持っているように、いつものようにすらすらと脱いでしまったのが、自分でも訝しいほどだった。

部屋の冷気が素肌を打つのを、かばうように。
小父さまは翠を抱き寄せて、そっくり猿臂のなかにくるんでいった。
肩先に、いちど。首すじに、二、三回――
チクリと突き刺された感触が、翠の心を震わせた。

ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・ちゅうっ・・・

押し殺すような吸血の音が、いつになく重苦しい。
しつような吸血に、翠は気丈にも立ったまま、応じつづけた。

ソファに腰かけたときに、ちょっとだけ血の気が戻ったような気がした。
小父さまが手加減してくれたのか。
もしそうだとしても――それは翠の身体から血を吸い取る愉しみを、もっと引き伸ばしたいからにちがいなかった。
翠は、応えてやるつもりだった。
ヒロアキの嫁になる女の務めとしても・・・

きょうのハイソックスは、通学用の紺の無地のやつだった。
小父さまは翠の足許に這い寄ると、片脚をつかまえて、唇を這わせて来る。
しなやかな厚手のナイロン生地の舌触りを愉しむように、二度、三度と、翠のふくらはぎを舌で舐めつけてくる。
わざとたっぷりとよだれをしみ込ませて来るのに淡々と応じながら、脚を差し伸べてゆくと。
小父さまがだしぬけに、言った。

ヒロの友達の妹ごが、土曜日に誕生会を開いての。
半井くんのことだ。きっと。
婚約するまでいつもいっしょに登下校して、おそろいの紺のハイソックスを並べて血を吸われていたというクラスメイトとは、面識があった。
妹ともいちどだけ、なにかの機会に顔を合わせたことがある。
可愛い子だったな。あの子も血を吸われているんだろうか――たしかそんなことを、思ったっけ。
どうやら図星だったみたいだけど。

それで・・・
冷然と訊きかえす翠に、吸血鬼も淡々と言葉を継いだ。

処女を三人、モノにした。

モノにしたって・・・

戸惑う様子を面白がられていると感じた翠は、わざと冷やかに訊いた。

犯しちゃったの?

ふん、さすがに賢いの。

問いのなかに含まれた否定に、吸血鬼は満足そうだった。

せっかくありついた処女の生き血じゃ。なん度も愉しませてもらうのがすじというもんぢゃろう。

それはそうね。
妹さんに、お友だちを招(よ)ばせたというわけね。

ああ、まだまだ年端もいかぬ子たちゆえ、怖がらないようにそっと咬んでやったが・・・
ふだん着のハイソックスというのも、エエもんじゃな。
ピンクのリブ編みに、
フリルのついた白いやつ、
さいごは赤と紺のしましま模様。
女の子たちも、心得たもんでの。
きゃーきゃー騒ぎながらも、気前よう咬み破らせていただいた。

それから、三人を家まで送りながら、ご両親にご挨拶をして。
――どんなご挨拶だか。と、翠は思う。
これからも時おり馳走になりたいとお願いしたら、皆が皆娘をお願いしますという始末ぢゃ。
それって、自慢?くだらない。
言いかけた翠は、ふと口をつぐんだ。

処女のストックは確保した・・・ってことよね?小父さま・・・
前の記事
彼女ができたら、わしに咬ませろ。  11 ――黒のストッキングで。――
次の記事
彼女ができたら、わしに咬ませろ。 9 ―どうして・・・?―

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/3158-4daabf11