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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

彼女ができたら、わしに咬ませろ。  11 ――黒のストッキングで。――

2015年06月02日(Tue) 07:57:25

夏服に黒のストッキングなんて、見たことがない。まるで戦前の女学生みたいだ。
そんな風に漠然と、想っていたけれど。
小父さんにとっては、思い入れのある取り合わせらしい。
じっさいに。
遠い昔、上流階級の令嬢を襲ってモノにしていったころの小父さんは、
そういうお嬢さんの制服姿を好んでしたという。

翠さんが夏服のセーラーを着て、重たそうに揺らす丈長の濃紺のプリーツスカートのすその下、脛を薄黒く染めてきたのは。
ボクにナイショで小父さんに逢ったときのことだった。

履いてきてあげたわよ。約束どおり。
後ろ手に手を組んで、背すじをピンと反らせた翠さんは、
いつものようにちょっとすねたようなふくれ面。
相手を軽蔑するような、冷ややかな視線で、小父さんを見返していた。

ええ娘(こ)ぢゃ。
小父さんはいつものように翠さんにすり寄って、影と影とを重ねてゆく。
唐突に距離を詰められると、いつも反射的に後ずさりする翠さんが、
小父さんの急な歩調に合わせかねて、あっという間に猿臂のなかにくるまれてしまっていた。
すり寄るように首すじにあてがわれる唇が、白い素肌の一角を、こともなげに冒すのを。
ボクは息をつめて、見守ってしまっている――

どれほどの刻が流れたのか。
貧血になったのか、翠さんがふらりと身体を揺らし、そのままたたみのうえに姿勢を崩してゆく。
いつもより多い、吸血の量――
ボクはまがまがしい想像に、またもや胸をわななかせる。

仰向けになったまま、立て膝をして。
黒のストッキングのひざ小僧をピチャピチャお行儀悪く舐めはじめる小父さんのために。
翠さんは脚の角度をゆるやかに、変えてゆく。
紺のハイソックスの時も。白のハイソックスのときも。そうさせていったように。
淡くてしなやかな見栄えのする墨色に透けるストッキングにも、くまなくよだれを塗りたくられてゆく。

こんなことが愉しいの・・・?
皮肉そうな笑みを泛べた翠さんは、なぜかまなざしだけはいつになく鋭くて。
やはりいつになく熱っぽく自分の脚をいたぶりつづける小父さんのしぐさを、
逐一見逃すまいとするかのようだった。

もう耐えられない・・・というように。
小父さんはもういちど、翠さんの首すじに咬みついていった。
おおいかぶさる背中越し。
眉をひそめる翠さんの横顔が、ちらと見えた。
こちらを向いた墨色の脚が一対、妖しいくねりをボクのまえに、さらしてゆく――
薄黒のナイロン生地によぎる、微妙な濃淡が。
翠さんの脚のラインを、必要以上にきわだたせていて。
ああ・・・ああ・・・ああ・・・っ。
聞えよがしなうめき声とともに、乱れ舞う。

ガラス窓に顔を擦りつけるようにして。
淫靡にくねる翠さんの脚から、目が離せなくなってゆく・・・・・・




夏でも黒のストッキングを履く子は、この学校では珍しくない。
たいがいが・・・吸血鬼の餌食になっている子。そうでなければきょうはじめて、餌食になろうとしている子。
だから。
黒のストッキングは、ひとつの意思表明のようになっている。
白のラインが三本走った襟首たちのなかに立ち交じりながら。
翠は淫靡な風習の垂れこめるこの名門校の校門から、外に出た。

薄黒く染まった脚を、まっすぐに向けたのは。小父さまのお邸。
きょうも、ヒロアキくんには黙って脚を向けた。

黒のストッキングを履いて、一人で遊びにお出で。

小父さまに指定されたそのままの格好で。翠はいつものように背すじを伸ばし、大またで歩みをすすめた。


黒のストッキングを脚に通したのは、始業式以来だった。
こんななよなよとした、頼りない靴下・・・どこがいいんだろう?
どちらかというと、翠にとって。
ストッキングというものは、印象がよくない。
ママが小父さまと逢う時に、必ず身に着けるもの。
そして、パパが視ているのもわきまえもなく、
小娘みたいにきゃあきゃあとはしゃぎながら、咬み破らせてしまうもの。

やってきた翠の足許にチラと目をやると。小父さまは満足そうにほくそ笑んだ。
いや・・・
とっさに目を逸らしたすきに、小父さまはすっとすり寄って来て。
いつもより素早く、あっという間に翠を抱きすくめてしまっている。
首のつけ根にチカリと閃く、尖った異物に。
素肌をズブズブと侵されながら――

これだけは快感。

いつか目ざめてしまっている自分を、いやというほど実感していた。

ああ・・・ああ・・・ああ・・・っ。
もっと・・・もっと咬んで・・・っ。

羞ずかしいけれど。
これだけは、癖になってしまった。
小父さまに首すじを咬まれて、生き血をチュウチュウ吸い取られるこの感覚。
三半規管が麻痺したような、無重力な感覚のなか。
翠は夢中になって、黒ストッキングの脚をじたばたさせていた。

窓越しに、自分の婚約者の息詰まる視線を感じながら――それすらが、快感になりかけていた。
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