FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

夕餉。

2015年06月27日(Sat) 10:14:39

三日にいちど。
彼はそんなふうに、決めているらしかった。

戸締りの不要なくらい平和な日常の漂うこの街で。
夕暮れ間近の刻限になると、施錠してない玄関の引き戸が、ガラリと音を立てる。

すまないね。馳走になるぞ。
男の声はしわがれて、くぐもっている。
我が家を訪れるときには、老いさらばえた銀髪で。
けだるく目を瞑った妻と娘を背に立ち去っていくときには、憎らしいほど若さをみなぎらせていて。
いったいこの男がいくつなのかは、生身の人間であるわたしには、わかりようもなかった。

はい、はい・・・
妻がスリッパの音を響かせて玄関に出迎えに行く。
わたしのもとには、淹れたての一杯の紅茶。
どうぞ、娘は二階の部屋です。
廊下から響いてくる妻の声は、渇いた吸血鬼に娘の居所を教えていた。

真っ赤なチェック柄のプリーツスカートを穿いた娘は。
空色のブラウスの襟元をくつろげて。
勉強机のすぐ傍らに、おとなしく仰向けになった。
どうぞ・・・とだけ呟いて、そのまま目を瞑る。
まつ毛をかすかに、震わせながら――
男は牙をむき出しにして、娘のうなじにかぶりついた。
アッ・・・とひと声、ちいさな叫びをあげただけで。
娘は黙りこくったまま、キュッと口許を引き締める。

ごく・・・ごく・・・ごく・・・
血を飲み耽る露骨な音に、けだるげに眉をひそめながら、
心細げに立て膝になった脚が、交互にすり足をくり返す。
たっぷりとしたふくらはぎを包む真っ白なハイソックスが、父親の目にも眩しく映る。

ひとしきり娘の血を吸い取ると。
男は顔をあげ、周囲を窺うと。
ぐったりとなった娘の身体をうつ伏せにひっくり返して。
白のハイソックスのふくらはぎに、そのまま唇を吸いつけてゆく。
ひときわ力を籠められた口許に、かすかなバラ色のほとびが散った。

周囲を窺っていたやつの目と、目が合ったとき。
不覚にも、かすかにうなずいていた。
首すじににつけられた疼きが、わたしにそう仕向けたのだ。
わたしは居所を失くしたように、階下に下りてゆく。

リビングで出迎えた妻は、ちょっとだけ緊張をした面持ちで。
――わたくしも、お相手しますね・・・
とだけ、囁いた。
いつの間にか着替えた、よそ行きのワンピース姿。
わたしは、「たばこを買いに言ってくる」としか、言うことができなかった。

娘の血を飲み耽る吸血鬼をまえに、妻は勉強部屋の敷居のまえで三つ指ついて。
ここからはわたくしが・・・とでも、言っているのだろう。
ふたりは階下に、降りて来て。
庭に面したお茶の間で、第二の饗応が始まる。
抱きすくめられた妻は、吸い上げられた自分の血で、情事の相手がゴクゴクと喉を鳴らすのに身震いしながら。
引き抜かれた牙から滴る血潮で、真新しいワンピースをむざむざと汚されてしまう。
白のハイソックスを汚した唇は、肌色のストッキングも欲していた。
ぬめりつけられるなまの唇を、苦々しげに受け容れながら。
娘にはまだ訪れないもうひとつの欲求に、身を固くしていた。

五回・・・六回・・・七回・・・八回・・・
若かったころ。
何よりも代えがたかった忘我の刹那を、べつの男に与える妻に。
わたしは窓ガラス越し、息を押し殺して――恥ずべき昂ぶりに身をゆだねていた。

別れぎわ。
男は妻に、囁いていた。
ご主人が風邪を引くといけないからね。
妻も素直に、頷いていた――


あとがき
2~3日前にふと浮かんだお話ですが。
ちょいと彫りが浅かったような・・・ 苦笑
前の記事
妻に血を吸われる。
次の記事
躊躇(ためら)う吸血鬼

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/3163-0f756be5