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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

父親の立場。

2015年07月27日(Mon) 07:20:23

気がついたときには、家族全員が噛まれていた。
さいしょに噛まれたのは、息子だった。
同性愛のケでもあるのか?
あとになって吸血鬼本人に訊いたくらいだったが、必ずしもそうではないらしい。
夜道を歩く、紺のハイソックス。
それがやつのねらい目だったというわけだ。
地方の都市らしく、昭和な服装の男女が多い街――そのなかでも、ここの学校の制服は際立っていた。
男子のくせに、半ズボンなのだ。それもいまどきのハーフパンツというものではなくて、わたしが子どものころに穿いていたような、ちょうど女の子のショートパンツに近い丈――来ている本人も最初は恥ずかしそうにしていたが、周りじゅうがおなじ服を着ていたらいい加減慣れるというもの。学校に行くときには紺のハイソックスをまるで女の子のように、グン、と引っ張り上げるのが癖になっていた。

つぎに噛まれたのが、妻だった。
毎晩のようにハイソックスに穴をあけて帰宅する息子の挙動を不審に感じた妻は、夜中の勉強部屋をこっそりと覗いて――息子が飲むために淹れた紅茶はたたみのうえにぶちまけてしまい、代わりに息子の部屋に侵入していた吸血鬼のために、自分の血潮をブラウスにぶちまけるはめになっていた。
女に手の早い連中だった。きっと妻もそのときに――いや、ここではあえて触れまい。

息子をさいしょに落としたのは賢明だった。
息子の手引きで、妻も娘も噛むことができたのだから。
主婦をモノにしたのは賢明だった。
堕ちた息子と娘がひっきりなしに噛み破らせてしまうハイソックスを、夫に気取られぬようにひっそりと調達しつづけていた。
もちろん――吸血鬼のために自分が脚に通して噛み破らせる、あの薄々のストッキングもそのなかに、含まれていた。

相手の男は、わたしのことをよくわかっていた。
だって、昼間はよく気の合う、仕事仲間だったから。
わたしは言った。
この街に赴任するとき、会社のものに言われた。
この街はうちの社の創立者の出身地で、吸血鬼と共存しつづけている街なのだと。
そうして、故郷に錦を飾るため、創立者は自分の会社の社員とその家族の血液を提供するために、ここの事務所を作ったのだと。
どうせ家族もろとも血を吸われてしまうのなら――あんたが一番良いと思っていた――
口にしてしまった後で、案外それが本音だったのだと、気づいてしまった。

仲直りのしるしに――わたし自身も血を吸われた。
男の血じゃ、嬉しくもないだろう?
そう気遣ったわたしに、吸血鬼はかぶりをふった。
もっと切実な問題だ。
親から受け継いだ血を、むざむざと・・・
一瞬そんな想いもよぎったけれど。
つぎの一瞬で押し倒されたわたしは、妻と子供たちの前、飢えた吸血鬼をもてなす手本を示すはめになっていた。
自分の心づくしのもてなしを、ごくごくと旨そうに喉を鳴らして飲み味わわれるということは――思ったほどわるいものではない。
長い靴下に執着し、妻のストッキングを破りつづけた男のために、
ご婦人のものほど、面白味はないだろうけど、とことわりながら。
ストッキング地の紳士もののハイソックスを脚に通して、噛ませてやった。
やつはスラックスのすそを性急にたくし上げると、舌をぬめらせてきて・・・
わたしの穿いている靴下の舌触りを、ねっとりと愉しんだ。
薄い生地越しにしみ込まされてくる唾液は、妻や息子、娘の素肌を辱めた、呪うべき粘液。
けれどもわたし自身も不覚にも、その粘液の魔力に屈してしまっていた。
男は嬉しげに、わたしの靴下をぱりぱりと噛み破っていった。
やつが妻のストッキングや、息子や娘のハイソックスに執着したのも無理はないと思った。
わたしのものでさえ、こんなにみるかげもなくなるほど、愉しむくらいなのだから――

改めて家内を紹介するよ。
きみが家内を映画館やデパートやホテルに連れまわしても、ぼくは不平を言わないからね。

彼がわたしにご褒美をプレゼントする――と囁いたのは、そのときのことだった。
なんのことはない、もともとわたしの所有物だったものを、改めて得たに過ぎなかったのだが・・・必ずしもそうとは言い切れないのだろう。
彼がプレゼントしてくれたのは、実の娘の肉体だったのだから。

パパの好みに合わせたのよ。
図星を刺されて黙ったわたしのまえ、娘はセーラー服姿のまま、モデルのようにくるりと回る。
でも・・・セーラー服なんか着ていると、かえって実の娘だと意識しちゃうじゃないか。
だいじょうぶ。男のひとのことはわかるから。
面と向かって頷いた娘の顔が間近に迫って、息遣いが頬をかすめた。
どういうことだ?おまえもやつに、抱かれてしまったというのか?
声にならない声を、どうやって聴き分けたのか。
娘はわたしの無言の問いに、無言の頷きでこたえると。
信じられないことを、口にした。
でも、あのひと処女は抱けないの。だから、さいしょの相手はお兄さん。
だから、家族でするのも平気・・・
目の前をどす黒い眩暈がよぎり、わたしは恥ずべきことに、実の娘を襲っていた。

パパも血を吸うんだね。
無意識にやり遂げてしまった行為の残り香が、指先にまだ漂っている。
わたしは娘の血の付いた指先を行儀悪く口で吸い、首すじにキスをしながらバラ色の血潮を唇で拭った。
ああ、少しだけね。
兄さんもだから、だいじょうぶだよ。
娘は白い歯をみせて、クスリと笑う。
身内の血は美味しいんだってね。
あたしが相手をしているあいだ、母さんあのひとに犯されているんだよ。
わたしの腕の中で笑う小悪魔は、もろにわたしの心のツボを突いて、わたし自身を勃ちあがらせた。

あたしが相手をしているあいだ・・・
あたしが相手をしているあいだ・・・

いつか吸血鬼は我が家の周囲から姿を消して。
わたしが娘の部屋を訪れる夜は。
入れ替わりに息子が、妻と道ならぬ関係を結んでゆく。
歪んだ家族はいびつな欲情に身も心も焦がす一夜を過ごすと、
ふたたびなにごともなかったかのように、いままでどおりの日常に帰ってゆく。
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