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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

こんぺいとう

2015年07月30日(Thu) 08:09:13

きよみ、どうだったー?
帰ってきた返事は、ストレートだった。
いやらしかったー! ><

ふたりの通う、地元の名門女学校には。
しばしば、いわくつきの賓客が来校する。
彼らは外見上、ふつうの人と変わりはなかったけれど。
一点だけ、ふつうの人間とは決定的に違う習性を持っていた。
人の生き血を吸う――という。
出席番号順に招ばれた第一号は、青田きよみ――庵原ゆかりの親友である。
入学式の日に席が隣になってから妙にウマが合い、以来ほとんど毎日登下校を共にしている。

ハイソックスを履いたふくらはぎに好んで咬みつくという彼のために、
きよみは真新しい白のハイソックスを履いて応対したのだが。
男はきよみをうつ伏せに寝かせると、
荒い息をしながらその足許に這い寄って、いきなりがぶり!とやったのだ。
ちゅーちゅー吸い上げる音が、やらしいの・・・
きよみは身を縮こまらせながら、上目づかいで親友を見た。


おあがり。
ゆかりが前にした勉強机のうえに置かれたのは、小さなおひねりがひとつ。
口の開いたおひねりからは、色とりどりの金平糖が幾粒か、顔をのぞかせている。
甘いものは、お嫌いかな――?
相手はふさふさとした白髪の、老紳士。
このあたりでは見かけないタイプの、彫りの深いハイカラな目鼻立ちをしていた。

いいえ。
ゆかりはやっとの思いでこたえた。
ここは、ゆかりの家。
生徒のほとんどは吸血鬼の応接を学校でしたが、ゆかりの場合はどういうわけか、自宅が選ばれた。
スリッパにつま先の隠れた足許を覆うのは、きよみのときと同じ真新しい白のハイソックス。
両脚ともいつも以上に内またになって、未練がましくもじもじとさせてしまっているのは、潔癖な少女としてはとうぜんのことだろう。
男は武士の情け、とでも思っているのか、そうしたゆかりの逡巡には、気づかないふりをしていた。

失礼なことをお許し願うんだ。ちょっとでもくつろいでもらおうと思ってね。
ない知恵を絞っているのさ。
男は自嘲するように、ふふっと笑った。
前のときには、コーヒーにしたんだが。
その子の手が震えて、カップを落としてしまってね。火傷にならなかったからよかったようなものの――
男の言い草はさりげなかったが、どこか琴線に響くリアルさをもっていた。
飲み物の要らない程度の甘いものって考えて、それで・・・
こんぺいとう?
ふたりの声が同時に重なり、お互いに顔を見合わせた。
吸血鬼は少女に笑いかけている。
ゆかりはぷっとふくれて、そっぽを向いた。
こんなものに、だまされないわよ。
横顔にはっきりと、そう書いてある。

嫌われてしまったか。しかたないね。
でもこれだけは言っておく。
わしはきみに感謝こそすれ、きみのことを決して小ばかにしているつもりはないのだから。
そういう言葉――聞きたかったような。聞きたくなかったような・・・
ゆかりは男の言葉をなん度も反すうしながら、いった。
早く済ませて、お部屋から出てって。
お気に入りのスリッパをつま先から押しやると、未練がましくもじもじとしていた脚のゆらぎが止まった。

男はそろそろと少女の足許にかがみ込んで、
もはやむだ口ひとつたたかずに、白のハイソックスのうえから唇を吸いつける。
素肌からなまの唇をさえぎる厚手のナイロン生地ごしにかすかな唾液がしみ込むのを感じて、ゆかりは潔癖そうに眉をしかめた。
刺し込まれる牙のぶきみさに耐えかねて、少女の口のなかでこんぺいとうががりり・・・と、砕かれた。

真っ白なハイソックスのふくらはぎに、赤黒い血のりがべっとりと沁みて、生々しく光っている。
貧血にちょっと蒼ざめた頬をこわばらせながら、少女は気丈にも、なおも続けられるしつような吸血に耐えていた。
男は少女の上体を机のうえに押し伏せて、肩までかかる初々しい黒髪を掻きのけて、首すじに咬みついている。
うなじに密着させた唇からは、血を抜き取るたびに貪婪な音を洩らしつづけた。
ちゅう、ちゅう、ちゅう・・・
キュウッ、キュウッ、キュウッ・・・
まるでひとを小ばかにしたような音だった。
ゆかりは食いしばった白い歯を口許から覗かせながらも、目を瞑ってなにかを懸命にこらえている。
大柄の男は華奢な少女の身体におおいかぶさっていたが、
どこか母親に甘える幼な児のように、頼りなげに影を寄り添わせていた。

こっちの脚は、魅力的じゃないの・・・?
蒼ざめた頬にうつろな笑いを浮かべながら、ゆかりはまだ咬まれていないほうの脚を差しのべた。
真新しい白のハイソックスが、本人の目にも眩しい。
いいのかね?
ええ、もちろんよ。
吸血鬼はゆっくりと少女の足許ににじり寄り、ハイソックスを履いたふくらはぎに唇を這わせる。
口許に力がこもり、チクッとした痛みが皮膚の奥へともぐり込む。
入れ替わりにじわっとほとび出る血潮が、ハイソックスの生地を生暖かく濡らした。
さっきのくり返しを、少女はじっと見守りつづけた。

男は少女を抱き寄せて、まだ咬んでなかったほうの首すじに牙を埋める。
ちゅう・・・っ。
ひとしきり少女の血を啜り取り牙を引き抜くと、少女はいった。
小父さま、紳士的なのね?
おだやかにうなずいた男に、少女はまたいった。
だけどやっぱり、いやらしい。
少女は男の頬を、軽くひっぱたいた。
蒼ざめた頬に泛べたほほ笑みが、気力を見せたさいごだった。
少女は目を回して、姿勢を崩す。
男はセーラー服姿をさっと抱き取って、ゆっくりと寝かせた。
こわれものでも扱うときのような慎重さだった。
吸血鬼は畳のうえに仰向けになったゆかりの乱れた髪や服装を整えてやると、
もういちどだけ足許にかがみ込んで、ハイソックスの脚を吸った。
それから胸元に手を伸ばし、黒のネクタイをその首周りから抜き取った。
真っ白な夏用のセーラーブラウスには、紅いシミひとつ、撥ねていなかった。
眠りこける少女のおでこに軽くキッスをすると、男は部屋をあとにした。
少女の胸もとから抜き取った黒ネクタイを、だいじそうに懐にして。

応接間では、ソファに腰かけたゆかりの母が、息をつめてかしこまっていた。
廊下と室内で目を合わせた男に、「あの・・・」と、言いよどむ。
まな娘の生き血を吸い取った男を相手に、どんなあいさつをすればよいのだろう?
母親のきまり悪げな逡巡にかたをつけてやるために、男は足早に彼女との距離を詰め、
花柄のワンピースの両肩をソファに圧しつける。
ソファが倒れなかったのは、壁ぎわにしつらえられていたおかげだった。
それを勘定に入れて、男はさっき生き血を吸い取った娘の母親を、壁のあいだに挟み込む。
荒い息遣いがネックレスをした首もとに迫り、あっという間に咬みついていた。
ジュッ、とほとび出た血潮は、少女のときと違って、ワンピースをしとどに濡らした。

ちゅうっ、ちゅうっ、ちゅうっ・・・
キュウッ、キュウッ、キュウッ・・・
人をこばかにしたような吸血の音が、しつようにつづいた。
女はそれを、感情を消した横顔で耳にし続け、やがて口を半開きにして白目になって、姿勢を崩した。
肌色のパンティストッキングを、太もものうえから咬み破られるとき。
彼女は童女のようにいやいやをしたが、
いい子で聞き分けるんだ、と囁かれると、やはり童女のように素直に応じ、
薄手のストッキングをぱりぱりと見るかげもなくなるまで、咬み破らせていった。

ククク・・・
男が娘を気絶させたのは、せめてもの情けだったのだろう。
セックス経験のある女からは、容赦なく操をむしり取るのも、彼らの習性だったのだから。
男はゆかりの母をじゅうたんのうえに組み伏せると。
薄い生地のワンピースの胸元を引き裂き、すそをせりあげていって、股間をくつろがせる。
まだかすかに意識を残した女は、身体のあちこちにまさぐりを入れてくる男にこたえるように、
破れたストッキングをまとったままの両脚を、ゆっくりと開いていった――


ゆかり、どうだった?
朝顔を合わせたきよみが気遣うほどに、ゆかりの顔色は悪かった。
ごらんのとおりよ。たっぷり吸われた。
あたしの血がよっぽど、気に入ったみたい。
生真面目なゆかりにしては珍しいほど露骨な言い方だったが、きよみはそのこたえに、まだじゅうぶんに満足していない。
そうじゃなくってぇ・・・
いやらしかったの?あたしのときみたいに、下品にあしらわれちゃったの?
きよみの顔つきは、露骨な好奇心が満ちあふれている。
そうねぇ。
ゆかりは白ぱくれた頬で親友のストレートすぎる好奇心を受け流しながら、呟いた。

思ったよりずっと、紳士的だったよ。
でもやっぱし、やらしかったな・・・
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次の記事
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コメント

甘かったかしら
こんぺいとうを振舞われた少女の血はほのかに甘かったのかしら、なんて考えてしまいました。

まだ、この男性との関係には先があるのに。
もう心を捉えられている様子は、きっとヴァンパイアにも魅力的に見えるのでしょうね♪
by 加納 祥子
URL
2015-08-15 土 21:06:36
編集
>祥子さま
やらしかったな・・・

そうつぶやきながらも少女は、男の誘いを断ることはないのでしょう。

小父さま、甘口なんだよね・・・って。
精いっぱいの憎まれ口をたたきながら、
吸血鬼のためにきょうもこんぺいとうをほおばるのです。
(^^)
by 柏木
URL
2015-08-17 月 07:47:28
編集

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