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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

巨大蛾

2015年09月09日(Wed) 07:37:57

クヒヒヒヒヒヒヒ・・・
奇怪な唸り声を嬉し気に響かせて、わたしの上にのしかかっているのは、巨大な蛾。
真っ白な重たい翅(はね)に、背広を着たまま捕らえられて、
首のつけ根には太い管をぐさりと挿し込まれ、生き血を吸い上げられてゆく。
めまいが・・・ひどいめまいがしてきた。
巨大蛾は、人語を囁いてくる。

お前の血は、旨い。お前の血は、旨い・・・
クヒヒヒヒヒヒヒ・・・

膨れあがった下半身をなすりつけるように摺り寄せながら、やつはわたしの血を吸い取ってゆく。
たしかに自分で言っている通り、それはそれは旨そうに。

この街に転入してきたら、吸血鬼に襲われるのが通過儀礼・・・とは教わってきた。
それでも夫婦ともども都会を逃れてこなければならない事情というのを抱えたわたしに、それ以外の選択肢は残されていなかった。
しかし・・・
よりにもよって、こんな怪物に襲われるとは!

いいかな?あんただけじゃない。奥さんも血を吸われるんだぞ。それでも赴任に同意するのかね?

まえの上長はたしかに、そう念を押してきた。
まあ・・・私もあそこには赴任した経験があるのだがね・・・
と、つけ加えることも忘れずに。
わたしは意思を喪った人形のように、こっくりと頷いていた。

たしかに、生身の男に妻まで襲われるということには、正直かなりの抵抗を感じていたし、
赴任後の上司との妻を交えた面談でも、そんな話をした覚えがある。
そうだな、蛾の怪物に襲われたのだというのなら、まだしもあきらめがつくのかな・・・
薄れゆく意識の下、わたしはうすぼんやりとそんなことを考えていた。

ヒイイイッ!
妻は喉の奥から悲鳴を漏らし、壁を背にして逃げ惑う。
なんとか逃れようとするのだが、巨大蛾は長い触手を伸ばして、妻の行く手を遮りつづける。
妻にしても、血を吸い取られた夫が足許にぶっ倒れている状況のなかで、いつまでも逃げ回ることができるとは、思っていないらしい。
そうはいっても、真っ白な巨大蛾が自分の血を求めて触手を伸ばしてくる光景には、本能的に恐怖を感じ、あらがってしまうのだろう。
脳天を薄ぼんやりとさせてしまっているわたしは、不思議な昂ぶりを覚えていた。
子供のころに観ていた特撮もののドラマに、そういえばこんな感じの怪人が登場していたっけ。
あのとき、ふつうの人間が襲われて餌食にされてゆくのを、たしかドキドキしながら見守っていたっけ。
それがいま、現実のものとなって目の前にあった。
ワンピース姿を触手にからめとられた妻は、わたしのときと同じように、首すじに吸血管を埋め込まれていった。

生身の男に妻が抱きすくめられて生き血を吸い取られるというのには、抵抗がある。
たしかにそう思っていた。
この街の吸血鬼は、そんなわたしの心境をくんで、こんな化け物を吸血相手に選んだのだろう。
血を吸われて昏倒した妻は、やはり血を抜かれて意識をさ迷わせている夫の傍らで、ずっと抱きすくめられていた。
ただし巨大蛾は、いまは人間の男に姿を変えている。
正体はきっと、こっちなのだ・・・わたしは薄ぼんやりとそう自覚して、自覚しながらも抱きすくめられている妻の肢体から目を離すことができなくなっていた。
男は膨れあがった下半身を、妻の股ぐらに擦りつけていって・・・もうひとつのおねだりまでをも、果たそうとしていた。

巨大な怪人が妻を襲って、征服しようとしている。
化け物が人に入れ替わっても、そんな情景に昂ぶりを覚えつづけているわたしは、いったいなんなのだろう?

自分の心のなかに棲む怪人の存在に気づきながらも。
犯されてゆく妻を――歓びに目覚めてゆく妻を目の当たりにしながら、
わたしは不覚にも、射精を繰り返していた。
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美味しいようなら、それがなにより。
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優等生の呟き。

コメント

化身
人でなければ許せる
人でなければ・・・
でも人だからこそ昂ぶることができる

NTRならではの秀逸な短編ですね
素敵です
by 加納 祥子
URL
2015-09-24 木 05:59:02
編集
> 祥子様
ご返事遅れて、ごめんなさい。
PCがいかれてしまったので・・・

練られたコメントに、うなりました。
たった3行にして、すでに短編の領域ですね。
(^^)

貴女の口からNTRという言葉をうかがおうとは。
PC復活を機に、愉しみも新たにしたいところです。
by 柏木
URL
2015-09-29 火 06:48:46
編集

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