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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

人の生き血を吸う老婆

2015年09月11日(Fri) 02:50:46

夜道の街なかは、街灯が明るくても危ない。
街のように、人の生き血を吸う老婆が出没するようなところでは。
その晩餌食になったのは、40代の母親と、10代の娘。

宝井喜和子は、帰り道を急いでいた。
娘の彩菜の通っている学校で親子面談があり、それが意外なくらいに長引いたのだ。
まさか教師たちまでがぐるになって、母子の帰り道を昏(くら)くしたなどとは、その時点での彼女は気づいていない。
なにしろ宝田家は、つい先日夫の仕事の都合で都会から引っ越してきたばかりだったのだから。
夜道に吸血鬼が出没する・・・そんなうわさだけが、喜和子の耳に届けられていた。

ハッとして顔をあげると、痩せこけた着物姿の女が、ひっそりと佇んでいた。
彩菜をかばうように、胡散臭げに通り過ぎようとしたら、呼び止められた。
ククククク・・・ッ。そもじ、だまって素通りするつもりかえ?

よく見ると、ほつれた白髪に、ところどころシミの浮いた、みすぼらしい着物姿。
顔色は悪く、眼窩は落ちくぼんでいて、色あせた薄い唇はしまりなく弛み、ケタケタと人のわるい薄哂いを漏らしている。
どっ・・・どちら様でしょうかッ!?
喜和子はおびえる娘をとっさに身で庇いながら、声だけは気丈に尖らせていた。
どちら様もこちら様も、ねぇもんだ・・・
歯のほとんど抜けているらしい口許は、ひどくだらしなく、呟くようなだみ声は、ひどく聞き取りにくかった。
え・・・?
喜和子が目を細めて老婆の声に耳を傾けようとしたとき――その一瞬だけみせたスキが、命とりだった。

がばっ。
着物の裾を広げて、老婆が襲いかかってきた。吸血蝙蝠が、羽を拡げるようにして。
ああっ、なにをなさいますッ!
喜和子がとがめだてするのも聞かずに、老婆は痩せこけて色あせた唇を、喜和子の首すじに素早くあてがった。
ほとんど抜け落ちているかとみえた歯だったが、犬歯だけは健在だった。
不潔に黄ばんだ歯が、喜和子の白い首すじに突き立った
がぶり!
白のブラウスに赤黒い血がほとび散り、キャアッ!という悲鳴が、喜和子の唇からほとばしった。

老婆は喜和子を羽交い絞めにすると、うなじにかぶりついて、生々しい音をたてながら生き血を啜り取った。
じゅるっ・・・じゅるっ・・・じゅるっ・・・じゅるうっ。
汚らしい音が、きちんと装われたスーツ姿におおいかぶさってゆく。
気位も高そうな都会妻にのしかかり、むぞうさに啜り取ることで、喜和子の血を辱めてゆく。
あ・・・あ。。。ァ・・・っ。
喜和子はクタクタと姿勢を崩し、その場に尻もちをついて板塀でかろうじて背中を支えた。
傍らに立ちすくむ彩菜が、両手で口元を覆っているのを、老婆は見返った。

不吉な予感におびえた声が、老婆を娘からさえぎろうとした。
娘は・・・娘だけは見逃してください・・・
老婆はふたたび喜和子を見返り、ニタニタ哂いながらゆっくりとかぶりを振った。
なんねぇな。

老婆は母親から吸い取った血のりで頬をべっとり濡らしながら、少女のか細い影に迫っていった。
彩菜は中学の制服姿をひるがえそうとしたが、白のハイソックスを履いた両脚は、地面に根づいたように動かなかった。
恐怖と、母親を見捨てて逃げることへの懸念と後ろめたさが、彼女を棒立ちにさせたのだ。
ほほお、逃げんのか?
からかうような口調の老婆に、少女はおずおずと口を開く。
母を見捨てて・・・逃げられないです・・・

ククク。親孝行な娘ごよのぅ。褒めてやるわい。
老婆はニタニタとした哂いを消さずに、少女との距離を詰めてゆく。
親孝行だろうが親不孝だろうが、どうでも良い。
ただ、彩菜がこの場から逃げようとしないという、求める生き血を獲るのに都合のよい態度をとったことが、
老婆をご機嫌にさせた過ぎなかった。
クヒヒヒ。母ごに負けぬよう、たっぷりとめぐんでくだされや。
娘を咬ませまいと焦る母親が、失血のあまり起ちあがることもできずに地団駄踏むのをしり目に、
老婆は娘のおとがいを仰のけた。
白くて細い首すじが、頼りなげに闇に泛ぶ。
ホホホホ・・・
老婆の哂い声が、いちだんと高くなった。
そして笑みを泛べた唇を、まっすぐに少女のうなじに向けて近寄せて、
ツヤツヤとした黒髪を手早く掻き退けると、あっという間に吸いつけていた。
キャーッ!
第二の悲鳴が細く鋭く、夜道に響いた。

くちゃ・・・くちゃ・・・くちゃ・・・っ
少女のうら若い血潮もまた、汚らしくむさぼる音に辱められた。
やめて・・・よして・・・
母親はまな娘の受難の場から目をそらしながら、うわごとのように呟きつづけ、
いやっ・・・いやっ・・・
娘もまた、目を瞑りかすかにかぶりを振りながら、震える声で訴えつづけた。
老婆は彩菜の懇願に耳を貸す気などさらさらない、と言いたげに、処女の生き血を辱める音を、重ねつづけていった。

彩菜が母親がそうしたのと同じように、喜和子とは向かい合わせになって、道の向こう側に尻もちをついた。
よいな?真っ白なお召し物には、真っ赤な血潮がよう似合うでの?
老婆は彩菜にささやきかけ、彩菜はあいまいに頷いている。
よし、よし・・・
あやすように制服姿の肩先を撫でつけると、彩菜の胸元を引き締めていた紺のひもリボンを、サッとほどいた。
少女の胸元からせしめたリボンを着物のかくしにしまい込むと、
老婆はふたたび、少女のうなじに唇を這わせてゆく。
やめて・・・やめて・・・娘を放して。。。
喜和子はまだ、うわごとを呟きつづけていた。

彩菜がガクリと頭を垂れてしまうと。
老婆は耳元に口をあてがうようにして、意識をもうろうとさせた少女に囁きかけた。
白のハイソックス。美味そうぢゃの。咬ませてたもれ。破いてみとうなった。。
彩菜が童女のような素直さで頷くのを目にして、喜和子は目をそむけた。
くひひ・・・クヒヒヒ・・・
自家薬籠中のものになった少女の姿勢をくつろげると、
老婆は化け猫のような息遣いをはずませて、彩菜の足許に唇を近寄せた。
白のハイソックスに包まれたふくらはぎは、年ごろの少女のふっくらと丸みを帯びた脚線を、まぶしくひきたてている。
どうやら、おニューのようぢゃね?
老婆はぐったりとなった少女の顔をもう一度のぞき込むと、「ハウッ!」と声を漏らして食いついた。
くちゅ・・・くちゅ・・・ぐちゅうっ。
血潮を飲まれる音を洩らしながら、白のハイソックスに赤黒いシミが拡がっていった。

眠りこけた娘のうえから顔をあげた老婆の唇に、まな娘の身体から吸い取った唇がてらてらと光るのを、
喜和子は嫌悪と屈辱のまなざしで見返した。
けれども、どうすることもできなかった。
無抵抗の気丈さは、老婆の加虐心をそそりたてただけだった。

聞いておろうの。わしはおなごの履く長靴下が好みでな。
娘ごのハイソックスも、愉しませていただいたというわけぢゃ。
そもじの穿いている肌色の薄々のストッキングも、面白かろう?
チリチリにひん剥いてくれようの。

喜和子は激しくかぶりを振り、手をあげて老婆を制しようとした。
そんな喜和子の狼狽を愉しむように、老婆はニタリニタリと薄哂いを洩らしながら、ハイヒールの脚を抑えつけた。
黒のエナメルのハイヒールの硬質な輝きに、淡い光沢を帯びた肌色のストッキングが、なよなよとたよりなげに映えている。
うひひひひひひひっ。
老婆は卑猥な哂いをこらえ切れずに喜和子の脚にむしゃぶりつくと、赤黒く爛れた唇をヒルのように這わせていった。
ああああああっ!
嫌悪にかき乱された悲鳴を、街灯が無同情に照らした。

くっくっくっ。ケッケッケッ。
老婆はニタニタ哂いを、おさめていない。
意地汚く抱きかかえているのは、少女の脚から抜き取った血のりに濡れたハイソックス。
その母親が着ていたジャケットにブラウス、それにひざ丈のスカートまで、ひん剥いていた。
あの夜道で真っ裸でいたらどうなるか。
居並ぶ家々のあるじたちは皆、きょうの母娘のように、妻や娘、それに息子までも喰われたものたちばかりだった。
彼らはその見返りに、老婆の餌食になって道に身を横たえた女たちを、見境なく犯す権利を与えられていた。

なにも知らない足音が、むこうからこちらへと歩みを進めてくる。
足音の主は、喜和子の夫、彩菜の父親。背広を着ての勤め帰りだった。
老婆は人が変わったように愛想のよい哂いを泛べて、すれ違おうとする男の足音を止めた。
おや、おや、ご主人様、遅いお帰りで・・・お仕事、ご苦労様ですねえ。
そうしてわざとのように、痩せこけた頬をべっとりと濡らしている彼の妻や娘の血を着物のたもとで拭い取り、
ついでにわざとのように、両腕に抱えた女たちの衣類を取り落とした。
おや、おや、いかんの、せっかくの手土産。
持ち主の血に染まった白のボウタイブラウスが、くしゃくしゃにまくられた海老茶のスカートが。
学校の制服の一部だったひもネクタイが、しつような咬み痕をいくつもつけられた白のハイソックスが。
いぶかし気に地面に視線を落とした男は、せわしなく拾われてゆく衣類に見覚えがあるのに気がつくと、
顔色をかえてまっしぐらに、老婆がたどってきた道を駆け出して行った。

ホッホッホ。遅い遅い。遅すぎるでのお。でもだんな様も、たんまりお愉しみなされや。
女房や娘が喰われるところなぞ、そうそう目にすることはできぬでのお。

息せき切って走り抜けた終着点。
街灯の下、仰向けに転がされたふたりの女のうえに、いくつもの人影がのしかかり、息を弾ませていた。
妻はすっかり娼婦になり果てて、夫以外の男と悦楽の吐息を洩らしつづけていたし。
娘はさっき流したのとは別の意味の血潮を太ももにあやしながら、初体験の昂ぶりにわれを忘れかけている。
夫は立ちすくみ、茫然とし、初めて自覚する妖しい歓びに胸を染めてゆく――
そして、妻と娘とがヒロインを演ずるレイプシーンを、その場で尻もちをついたまま愉しみ始めていった。


あとがき
うーん。。。
老婆は、いつも唐突に現れます。^^
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美味しいようなら、それがなにより。

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