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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

父さんのことは、忘れてほしくはないけれど・・・

2015年09月11日(Fri) 04:38:11

母さんの血を、このひとに吸わせてあげようよ。
虚ろな声で、若菜がいった。
いつものように、通学用の白ブラウスの肩先を、血のりでべっとりと濡らしながら。

血を与えるのは、ボクたち兄妹にとって、日課になりかけていた。
日課にしちゃうと、血がなくなっちゃうよ。
そうカツヒロにからかわれては、相手役を代わってもらったり。
木戸原くん、貧血だよね?
そう気遣う優衣が、男とボクの間に立って、淑やかにお辞儀をすることもあったけれど。
男にとって本命は、どうやらボクたちの血のようだった。
口に合うんだ。
男は淡々と、そういったけれど。
ボクはしらっとして、横目で男を睨んでいた。
ほんとうは、母さんが目当てだったんだろ?父さんの血を吸ってたさいしょの頃から・・・
図星。
男はニヤリと、昏(くら)く嗤った。

母さんの血を、吸わせてあげようよ。
あたしたちの血が口に合うんだもん。父さんの血だって、吸っていたんだもん。
きっと母さんの血も、気に入ると思うなあ。
若菜はうわ言のように、そんなことをいう。
自分の母親を吸血鬼に襲わせ、血を吸わせる。
そんなことをしていいのか?
そんなことにこだわるのは、ボクが息子で相手が女親のことだから?
でも、父さんが血を吸い取られちゃったのは、小気味よかったなあ。
若菜は時折、とんでもないことを口にする。

きみはどうなんだい?
カツヒロの問いかけに、ボクは本音をするりと洩らした。
父さんのことは、忘れてほしくはないけれど・・・母さんが愉しいのなら、それもアリかな・・・って。
ボクたちは知っていた。
セックス経験のある女の血を吸う場合、ほとんど例外なく犯されてしまうのだと。


かんたんなことだった。
家に上げてしまえばよかった。
もともと、ボクの部屋も若菜の部屋も、すでに男の根城と化していた。
ボクたち4人は、息を詰めて隣の部屋から、様子を窺う。
白地に黒の水玉もようのワンピースを着た母さんが、男に迫られていた。
気丈にも細腕をふるって、男を拒もうとしたけれど。
とうとう抱きすくめられちゃって、うなじを咬まれちゃって・・・
眉を顰めて、瞼をキュッと瞑って、悔しそうに歯を食いしばって・・・
生き血をチュウチュウと、吸い取られていった。
父さんのためだけの、貞淑な妻でいようとする努力を、男は完璧なまでにねじ伏せてしまっていた。

おかしいな。
そろいもそろって、あるシーンを期待していたボクたちは。
ちょっとだけ、顔を見合わせた。
母さんは男に、しきりとなにかを懇願している。
男はそんな母さんの哀願を受け流しては、
首すじをがぶりと咬んだり、
ワンピースのうえからわき腹に食いついたり(血がきれいに撥ねて綺麗だった)、
ディープ・キッスを奪ったり、
肌色のストッキングのうえから、ふくらはぎを咬んだり、
しまいにワンピースをはぎ取って戦利品にしてしまって、
母さんのことを、スリップ1枚にしてしまったり。
ありとあらゆることを、し尽くしたのに。
とうとう母さんのことを、犯そうとはしなかったのだ。
さいごには母さんの手を取って、手の甲に接吻までして、サッと身をひるがえして、立ち去ってゆく。

その場に取り残された母さんは、血の付いたスリップを屑籠に放り込んだり、
あたりに飛び散った血のりを丹念にぬぐい取ったり、
レイプされたあとみたいにほつれた髪の毛を、しきりに気にかけたりしていたり、
長いこと、身づくろいに余念がなかった。
どうやら男は柄にもなく、父さんを忘れたくないという母さんの気持ちを尊重して、犯すのはあきらめたらしかった。

つぎの日曜日。
母さんがウキウキとよそ行きのスーツに装って、出かけてゆくのを、
ボクたち兄妹は、素知らぬ顔をして見送った。
母さんのいなくなった部屋の中。
若菜は屑籠から、風の着られたストッキングのパッケージを取り出して、
新しいストッキングおろしたのね?って、白い歯をみせていた。
初めて襲われたあの日には、母さんがシャワーを浴びているすきに、やはり屑籠をあさって、
あのひとにプレゼントしようよ♪って、血の付いたスリップをねこばばしていたっけ。

あの晩母さんを犯さなかったことで、男は母さんから一定の信頼を勝ち得たらしい。
それからも、ふたりの清い?交際がつづいた。
もちろん、彼のために装った衣装は、いつも見る影もなくはぎ取られ、紅いまだらもように染められてしまっていたけれど。
母さんは惜しげもなく、父さんから買ってもらった洋服を、男の慰み物に供していった。


えっ???
息が止まるかと思うくらい、びっくりしたのは。
そこに立っていたのが、父さんだったから。
生き返ったの?
ああ、そういうことみたいだな。
父さんは以前と同じ、すっとぼけた口調で、ひとごとみたいにのんきな感じでそう言った。
へえー、父さん血を吸えるの?
若菜までもが興味津々に、父親にすり寄った。
もともとお父さん子だった若菜は、父さんが蘇生したのは大歓迎だったらしい。
自分たちが母さんを吸血鬼に襲わせたことなんか、おくびにも出さずに、お帰りなさい♪なんて、嬉しがっちゃっている。
うーん、血は吸えるみたいだけど、まだ吸ったことがないや。
父さんは、うら若い匂いをぷんぷんさせて迫ってくる娘に、辟易しちゃっていたけれど。
若菜はいっこうに、かまわないらしかった。
処女の生き血だよ?父さんにも吸わせてあげようか?なんて。
カツヒロが聞いたら卒倒しそうなことまで、こともなげに言いだしている。

父さん、あの、ボク・・・
やっぱり親の前では、つい正直になってしまう。
バカねえ・・・と顔をしかめる若菜のことは、横っ面で受け流して。
ボクはくちごもりながら、母さんと、あいつとが・・・って、言いかけていた。

父さんの反応は、意外なくらいさばさばしていた。
ああ、わかってるわかってる。
母さんの血をあいつに吸わせるために、キューピッド役を買って出たっていうんだろう?やるじゃないか。
ボクも若菜も、目を丸くして父さんを見た。

たぶんね、私が復活したのは、そのせいなんだよ。
あのままこちらに戻ってくることはできないはずが、
自分の女房が貞操の危機を迎えたってんで、舞い上がっちゃったんだろうな。
でも私は、もう少しおとなしくしていることにするよ。
母さん、あいつにどこまで本気になるかな?
さいごのひと言の呟きは、イタズラっぽく声を弾ませていた。


折々出没する父さんの影にも気づかずに。
母さんは男と、みるみる距離を縮めていった。
映画に行き、ドライブに誘われ、夕食もいっしょに出かけて行った。
そう、男はふつうの人間のように飲み食いも、するのだった。
父さんは、そんな母さんの変化を、賞賛すべき忍耐力で見守っていた。
むしろ、二人の交際が深まっていくのを、悦んでいるふしさえ感じた。
そんなことで、いいのかな・・・息子のボクのほうが、ちょっと焦っていた。
母さんを襲わせて、男に血を吸わせてしまった張本人のくせに。

ねえ、母さん、あのひととお付き合いをしてもいいかしら?
母さんがウキウキと、ボクにそんなことを口走ったのは、それから半月と経たないころだった。
再婚・・・するの?
おそるおそる訊くボクに、母さんは「まさか」と笑い、お付き合いをするだけよ、とこたえた。
わたしの夫は、父さんだけよ。父さんだけは別格なのよ。
ああ・・・そのひと言があるから。その気持ちがあるから。父さんは母さんのことを、許せるんだ。
初めて納得のいったボクは、母さんの好きにしていいよ、とこたえ、それから心を込めてつけ加えた。
「おめでとう」。
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