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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

息子が身代わりに。

2015年10月13日(Tue) 07:03:52

あんたンとこの息子さん、かわいいな。
血色もよさげだし、こんど貸してくンねぇか?
生き血を飲みたい。

顔なじみになった吉浦さんにそういわれたのは、
この街に赴任して三か月ほども経ったころ。
吸血鬼とひそかに共存しているこの街では。
だれもが吸血鬼に、噛まれてしまう。
だれもが吸血鬼に、家族まで紹介してしまう。
吉浦さんもまた、そういうご一家だった。
子供のころから家に出入りしている吸血鬼に、
妻子ともども献血を続けていて。
吉浦さんはいつも、蒼い顔をしていた。

たまにはいい顔いろになりたいんだよね。
ニッと笑う吉浦さんに、わたしは知らず知らず、頷いてしまっていた。

こんどの土曜に、敬太を連れて行くから。吉浦さんのとこ。
何気なくそういったわたしに、妻は異論を唱えなかった。
この地に赴任してしまえば。
自分だってだれかに血を吸われてしまうことを、彼女もよく心得ていたから。
そうでもしなければーーいまごろはもう、野垂れ死にか一家心中していたところだろう。
妻もわたしも、並外れた浪費家だったから。

ほほー、学校の制服、似合うようになったね。
息子を連れていくと吉浦さんは、ひどくゴキゲンになっていた。
濃紺のブレザーに半ズボン、ひざから下は今どき珍しい、白のハイソックス。
幼稚園か、小学校の低学年みたいだ。
そういって恥ずかしがって、登校するのをためらっていた敬太も。
いまではすっかり、そんな姿になれてしまったらしい。
服装は、人を変えていくものなのかもしれなかった。
じゃ、預かるからね。電話したら、迎えに来なさい。
ちょっと心配そうにわたしを見あげる敬太に、よく相手するんだよ、そう諭して、わたしは家を辞去していった。

電話がかかってきたのは、1時間後だった。
受話器の向こうの吉浦さんの声色は生き生きとはずんでいて、
わたしは妻と顔を見合わせて、敬太を迎えに行くのをさらに30分遅らせてやった。

迎えに行ったとき眠っていた敬太は、眼をしょぼしょぼとさせながら起き上がり、
まるで幼な児のようにして、わたしに手を引かれて家に帰った。
首すじにはくっきりと、紅い咬み跡がにじんでいて。
真っ白なハイソックスにも、バラ色の血を滲ませた、いくつもの咬み跡。
半ズボンのすき間から太ももにしたたる血潮が、そのあと息子がなにをされたのかを報せていたけれど。
わたしも、迎えに出た妻も、そこは本人のためにーーと、気づかないふりをしていた。

シャワーを浴びたあと。
敬太はわたしのところにやって来て、母さんに聞かれたくなさそうな顔つきをして、そっと言った。

お尻にお〇ん〇ん入れられた。そのあとなんだか、気分が変なの。

どうして欲しいんだい?わたしは訊いた。

わかんない。小父さんはまたお出で、って言ってくれている。
「言っている」ではなくて、「言ってくれている」だった。
でも小父さんの家にはまた行ってもいい・・・そうつけ加える敬太にわたしは、好きにするといいよ、とこたえていた。


数日後。
妻はたまりかねたように、わたしに訴えた。
敬太が学校帰りに毎日のように、吉浦さんのところにお邪魔している、と。
あちらもご迷惑なんじゃない?
口先ではそういいながら。
貧血を起こして帰ってくる息子のことが、母親として心配なのだろう。
私、明日敬太の帰りが遅かったら、止めに伺ってきます。
わたしはある予感をよぎらせながらも、妻を止めようとはしなかった。

翌日わたしが勤めから帰ると、妻はいつもどおり台所に立って、
お鍋からは湯気が、手元からはトントンという規則正しい包丁の音があった。
おかえりなさい、早かったわね。
そういって振り向く妻の頬は、別人のように蒼く痩せこけ、瞳は異様に輝いていた。
首すじにはどす黒い咬み痕がふたつ並んでいて、吸い取られた血潮がまだ、チラチラと滲んでいる。
オレンジ色のタイトスカートの下、肌色のストッキングには派手な裂け目が走り、
敬太のハイソックスと同じあしらいを受けた痕を、鮮明に残していた。
わたしはそんな妻の変化に気づかないふりをして、ああ、ただいま、とだけ、こたえた。

帰る道々、真っ白なハイソックスに浮いた紅いまだら模様を気にして周りを気にしていた敬太も、
つぎのときからは躊躇なく、いやむしろ自慢げに、ハイソックスに滲ませた血のりもあらわに学校通いをつづけていた。
妻もまた、吉浦家からの帰り道、息子と同じようにあしらわれた足許を、
派手に破けたストッキングの脚をさらして、家路をたどるようになっていた。


家内をすっかり、モノにされちゃったみたいで。
無言のまま、家族の足どりだけで交わされるやり取りに気まずさを感じたわたしが、思い切って口火を切れたのは。
吉浦さんがさいごまで咬まないでいたわたし自身の首すじに、くっきりとした痕をつけられた直後。
いい身体してますよ、奥さんも、息子さんも。
吉浦さんは屈託なくそうこたえると、ニッと笑った。
いつかどこかで見た笑いだと、わたしは思ったが、いつのことだったか、よく思い出すことができなかった。
くたびれた男の血は、まずいでしょう。さいごまで食指が動かないわけだ・・・
わたしがそう自嘲すると、そんなに捨てたものではないですよ、と彼は言い、「これ息子さん」と、一片の写真を手渡してきた。
てっきり妻の写真かと思った。
敬太は母親似だったから。
そう、写真のなかの敬太は、妻のワンピースをまとい、薄っすらと化粧までしていた。

こんな格好でね、いつも私ンとこに、来なさるんですよ。
それでね、私もそそられちゃって、
この子の血をたっぷり吸い取ったあと、コトに及んじゃう、というわけです。
女みたいに声あげちゃったりしてね、かわいいもんですよ。

さいしょからそれ、狙ってたの?そう訊くわたしに、
決まってるじゃないですか、と、吉浦さんは軽々といい、
やられちゃいましたね、と、苦笑いするわたしに、
まだまだ、ヤッちゃいますよ、と、吉浦さんも笑った。
くたびれてまずくなった血なんかじゃ、ないですから、と、吉浦さんはなおも笑いかけてーー
仰向けになったままのわたしに身体を重ねてきて、こともなげに唇まで重ねてきた・・・

お尻の穴に、お〇ん〇ん入れられた。そのあと気分がヘンなの。
口ごもりながらそういった息子の気持ちが、ふとわかった瞬間だった。
こんど、洋品店にごいっしょしましょう。
ご主人大柄だから、服は別にあつらえたほうがいい。
大きな店だから、きっと好みの服が見つかりますよ。
翌日わたしは、家を出るときに来ていた男の服を脱ぎ捨てて、
ワインカラーのジャケットに、タイトスカート。
濃い紫のブラウスの胸元に、ふんわりとしたリボンをゆらゆらさせて、
足許を染める黒のストッキングには、派手な伝線ーー
そんないで立ちで、家に戻った。
ぴかぴかとしたエナメルのパンプスは、見た目には格好良かったけれど、
始終つま先立ちしながら歩くような感覚は、さすがに閉口ものだった。
ただいま。
さすがにきまり悪げに自分の家に訪いを入れると、
出迎えた妻は一瞬息をのんでーーけれどもそれ以上、なにも言わなかった。
初めて吸われて帰宅したとき、わたしが気づかないふりをしていたように。
敬太は居間で寝そべって本を読んでいたけれど、
ちょっと顔をあげると、イタズラっぽくニッと笑った。
どこかで見た顔つきだと思ったけれど、それがどこなのかは、思い出せない。


お邪魔しますよ。
訪問を予告した吉浦さんは、ほかにも数人の男を従えていた。
みんな、あなたの同類ですよ・・・そういう吉浦さんがなにを求めているのか、それはわたしを含め、妻にも敬太にも察しがついた。
妻は観念したように、よそ行きのスーツ姿のまま、夫婦の寝室にこもった。
男たちも誘われるように、夫婦の寝室に消えた。
閉ざされるドアに視界を遮られる間際まで、
白のストッキングを穿いた妻の豊かなふくらはぎが、ひどく眩しかった。
どたん!ばたん!きゃあ・・・っ。
お定まりのもの音に、わたしと敬太とは顔を見合わせて、苦笑しあった。

服をはぎ取られ、一巡するまでが見ごろだった。
あとはただ、ねとねととした汗を浮かせた裸体が数対、もつれあっているだけだった。
手のあいた男たちは、自分たちだけで交わったりもしていた。
わたしはちいさくかぶりを振って、のぞき穴から身を起こした。
背後にいた敬太は、いつの間にか、妻のワンピースに着替えている。

小父さんが言ってた。
母さんがされちゃっているあいだ、きみは父さんの相手をするんだって。
ちょっと恨めし気な上目遣いに、わたしはまぶたの上に唇を当てて息子を抱き寄せ、
ふたりは静かに絨毯の上に身を沈めた。
唇に唇を重ねると。
歯のすき間から洩れてくるはずんだ呼気が、わたしの目をくらませた。
ドアの向こうのせめぎ合う物音は、いっこうに絶えない。
けれども父と息子とで息をはずませ合っているわたし達には、むしろ心地よい刺激にすり替わっていった。


あとがき
うわー、とんでもないお話になっちゃった。(^^ゞ
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