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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

家族が家族となった日。

2015年10月13日(Tue) 07:45:52

お義父様が、わたしに言い寄るんです。
改まった態度でわたしの前で正座をした妻は、尖った表情でそういった。
都会育ちの生真面目な妻に、やはりこの土地での生活は無理だったのか。
母を早くになくした父を気遣って、
「ごいっしょしましょうよ」
幸せいっぱいの婚約者は、頬を初々しく紅潮させてそういってくれたのだが。
あれから三か月ーー父は無理に押し隠していたこの土地の風習を本性を交えてあらわにしかけていた。

都会から近いようで遠いこの街では。
そういう関係は決して珍しいものではなく、妻も街の婦人会でしょっちゅう耳にしているはずだったが。
「じき慣れる」
いまは父の、そんな言葉を頼るしかなかった。

せめぎ合う息を、鎮めかけて。
わたしはようやく、解放された。
身にまとっているのは、妻のよそ行きのワンピース。
もうじき冬という季節に、季節外れの夏物は、辺りの冷気を遮りきれず、
寒々としたものを着衣のすき間から忍び込ませていたけれど。
子供のころから身をゆだねていた父の熱い抱擁のまえに、
そんなものはすぐさま、雲散霧消していた。

「孝枝さん、なかなか頑強だな。なかなか堕ちん」
そうひとりごちる父に、まあ仲良くやってくださいね、という息子。
「仲良くやる」は、「無難で円満な関係を保つ」という表向きの意味の裏に、べつの意味を含ませていた。
父ならそれが、わかるはず。
わしが孝枝と仲良くなれれば、人前に出せない母さんのことも、表に出してやることができるからの。
そう、死んだことになっている母は、もちろんぴんぴんしている。
若いころに血を吸い尽くされて、ふつうの身体ではなくなってしまったけれど・・・

わたしが妻の服を着て、父といかがわしい関係を結んでいる。
妻にわかるのは早かった。
予想よりも早く、妻が季節外れのクローゼットを開放したからだ。
その翌日から・・・
ないはずの視線が、ふすまのすき間から注がれていた。
わたしはその視線を意識しながらも、父の熱い唇を自分から、むさぼりつづけていた。

夜勤に出かける時だった。
妻は瞋恚(しんい)のまなざしをこめて、わたしに告げた。
今夜、お義父さまの夜這いを受けますから。
父の妻に対する夜這いは、わたしの帰宅でいつもきわどいところでせき止められていた。
初めての夜勤は、その均衡を突き崩そうとしている。
以前の妻なら、その晩一晩だけでも、実家に帰るといいかねないはずだった。
そういう都会の常識と潔癖さを、妻は備えているはずだった。
妻が身にまとっているのは、夏もののワンピース。
一週間前、妻の視線に気づかないふりをして、わたしが父の前で袖を通したもの。
あなたまで、お義父さまの手引きをなさるんですものね。
心底愛想が尽きた・・・そんな態度に一抹の不安を残しながら、わたしは玄関をあとにした。
表向きだけでも「健全な」我が家を目にするのは、これが最後なのだろう。

おかえりなさい。すぐお寝みになる?
一夜明けて出迎えてくれた妻は、いつもと変わらない態度だった。
夏物のワンピースは跡形もなく、普段着だった。
とうとう何事も起きなかったのか。そんなはずはない。
いつも家のなかではパンツルックのはずの妻は、珍しくスカートをつけている。
ああ、シャワーを浴びてすぐにね。
わたしがそういうと、妻はちょっと嬉し気に横顔で笑い、
すぐ着替えの支度をしますね、と、顔色を読まれまいとするかのように、そそくさとその場を起った。

夫婦の寝室に一人で入るとき。
妻は「ごゆっくり♪」といってくれた。
わたしはそんな妻を振り返って、
家のなかでも穿くようになったんだね、スカート。といった。
妻は気の毒なくらい、慌てていた。
やっぱりなるようになったのか。どす黒いものが、胸をよぎる。
けれども妻を責める資格は、わたしにはもちろんない。
最初のうちだけでも決め込んだ妻の素知らぬ顔つきが、妙になまめかしくよみがえった。


せめぎ合う吐息は、父とわたしだけのもの。
妻の身体に満足したふたりは、異種の歓びを求めて、ふたたび枕を交し合う。
昼間は父が。夕食後はわたしが。
代わる代わる、妻の肉体を愉しんでいる。
仲が良いのね。わたし、時間差でまわされているみたい。
妻は照れ隠しに、わたしにディープ・キッスを仕掛けてきた。
わたしはじゅうぶんにそれにこたえて、父さんのとどっちが大きい?なんて訊いてしまっている。
こたえのかわりにくり出された、甘えた平手打ちに満足をして。
わたしは夫婦のベッドを、再び父に譲っている。

いまは父と入れ替わりに、母がーー
息子の嫁を組み敷いて、首すじを咬んで・・・・・・生き血をむさぼっている。
こんなの、アリなの!?
妻は戸惑いながらも、異種の歓びに理性を蝕まれていった。
女ふたりを見つめながらも、ふたりきりにしてやろうといざなう父と、居間に向かった。
フローリングを濡らす粘液は、妻がきれいに拭き取ってくれることだろうから。

母さん、孝枝さんの血を吸い終えたら、お前の血を飲みたいそうだ。
久しぶりに、相手をしておやり。
親孝行がすんだら、母さんのことを好きにして良いから・・・
そういう父さんは、孝枝のことをまた抱いちゃうんだろ?
二対の夫婦入り乱れての夜は、まだまだ長そうだった。


あとがき
ちょっとおぞましいのが、二話続いてしまいました。(^^ゞ
この頃煮詰まっていたんだけど、ぜんぜん考えもしてなかったようなお話がスッと出てくるから不思議です。
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供血ノルマ
次の記事
息子が身代わりに。

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