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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

供血ノルマ 4

2015年10月18日(Sun) 07:28:44

世帯数数十軒。
ほとんどが顔見知りという、この片田舎では。
ヤツのことは、すぐに広まるに違いなかった。
けれどもヤツにとって、そんなことはどうでもいいことだったらしい。
しゃれっ気のない村だな。どいつもこいつも、スカートなんかほとんど見かけない。
通りに面したガラス窓から道行く男女の品定めをしていたヤツは、どうもそんなことが、気になるらしい。
そうだな。
女たちがスカートを穿くのは、入学式や卒業式、女子の中高生、あとは葬式くらいのものだからね。
俺がそういうと、ヤツはムフフといやな笑いを泛べた。
それが狙いなのさ。
ひとの女房を吸い殺しておいて、ヤツの言いぐさはあんまりだった。
娘はショックで、きょうは学校を休んでいた。
密葬は家族だけで執り行う。
そんな村の風習が、ヤツに幸いしていた。
今夜の通夜に現れるのは。
血を吸われた住職と、俺と娘以外では。
近所に独りで暮らしている、うちのお袋。
それに、やはり近所で夫婦で暮らしている、女房の両親だけだった。
どちらも年寄りだぞ。
咎める俺に。
身近なところを固めないで、どうするんだ。きょうも最低2人だぞ。
ヤツは少しだけ、厳しい顔をした。

年寄りだと、2人でひとり分かな・・・
俺は俺で、わけのわからないそろばんを、薄ぼんやりとはじいていた。

その晩は、ちょっとした饗宴だった。
夕刻に姿を見せたお袋は。
やつの狙い通り、黒のワンピースに墨色のストッキングで足許を透きとおらせていた。
仏前に線香を供えるとき。
娘はなにか言いたげにしていたけれど。
さほど祖母になついていなかったのか、とうとうなにも言い出さなかった。
ヤツがお袋のまえに立ちふさがったのは、仏前からさがろうとするその時だった。
あァ~ッ!
いきなり首すじを咬まれたお袋は、その場で絶叫し、昏倒した。
嫁と仲の良くない姑は、嫁の仏前で喰われるのがスジだろう?
ヤツの言いぐさは、スジが通っていないようで、通っている。
そう感じる目の前で、お袋の穿いている黒のストッキングが、むざんに咬み剥がれていった。

ぐったりとなったお袋を、隣室に寝かしつけると。
入れ代わりに、女房の両親が現れた。
さいしょに義父が。それから義母が、相次いで血を吸われた。
朦朧となった義父のまえ。
義母は和装の喪服の帯をせわしげな指にゆだねて、装いをくつろげられていった。
そう、セックス経験のある女には、もうひとつの愉しみかたがあるのだった。
還暦を過ぎた義母の素肌は、意外につややかに輝いていた。

どういうことなんだね?
身づくろいする妻を俺とを見比べながら、義父は咎めるよりも怯えながら俺に訊いた。
ヤツは隣室に引き取っていた。
引き取っていたんじゃない。お袋と一戦交えている最中だった。
献血しなくちゃ、ならんのです。
どうして?という問いが、自分のなかで湧いた。
けれどもそれはもう、改めて問うまでもなく、俺のなかでは自明の義務だった。
一夜に最低二人。
やつのために、生き血を提供できる人間を連れてくる。
それが俺の務めなのだ。

もういちど、奥さんをごちそうになるよ。
羽交い絞めにされた義父はふたたび首すじを咬まれ、「ああああっ!」と叫ぶ。
血を抜かれてぐったりとなった義父のまえ。
義母は恨めし気に俺を睨み、すぐにあきらめたように、いちど着なおした喪服を、自らくつろげていった。

今夜は達成率150%。なかなかやるな。
お袋と義父母の帰った後。
ヤツはそう言いながら、娘の首すじまで咬んでいる。
これで200%。佳い夜ぢゃ。
娘さんは明日は学校だね?頬っぺが蒼くならないていどに、手加減しておくよ。
娘ははたして、ヤツの気遣いを受け入れるのだろうか。
畳には脱ぎ捨てられた黒のストッキングが一対、蛇のように横たわり、
その傍らには脱ぎ捨てられた白足袋が一足、金色のこはぜを光らせていた。
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