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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

「お見合い」。

2015年11月17日(Tue) 04:00:45

不思議な風習だった。
役場に勤める前川明夫はある日、親に連れられて「お見合い」をした。
あくまで形式だから・・・親たちはそう、明夫に説明した。
しつけに厳しかった親たちにしては、なぜか弁解がましい口調だった。

お前はきょう、お見合いをする。
相手は、地元の女学校の若い教師である。
お前はその彼女を連れて、叔父さんの家へ行きなさい。
叔父さんが吸血鬼なのは、お前よくわかっているね?
お前は叔父さんにそのひとの血を吸わせて、帰り道はエスコートしなさい。
なに、お見合いというのは形のうえでの話で、
お前は要するに、叔父さんに若い女性を取り持ってあげればいいんだ。

京蔵叔父さんは、齢があまり離れていない、いまでも独身の叔父だった。
子供のころはなついて、よく遊んでもらった記憶がある。
親たちに隠れて、こっそり血を吸わせてあげたことも――
しかし、都会の大学に行って、試験に受かり、いまの役場に勤めるようになってから、
この風変わりな叔父とはしばらく、顔を合わせていなかったのだ。

引き合わされた女性は、初々しい化粧を刷いた、ピチピチとした感じのひとだった。
思った以上に若く、そして清楚な雰囲気を持つ美人だった。
なるほど、京蔵叔父が見初めるだけのことはある。
快活な彼女は、これから引き合わされる吸血鬼のことなどみじんも話題に乗せないで、
他愛のない雑談に、ひたすら興じていた。
さてそろそろ・・・と、両方の親たちから促されるままに、
明夫は彼女を伴って、叔父の家へと足を向けた。

何年も逢っていない叔父は、別人のように痩せこけ、老け込んでいたけれど。
甥が連れてきた若い女性をみとめると、それまでのうっそりとした雰囲気をかなぐり捨てて陽気になって。
振る舞われた酒に適度な酔いを感じた明夫は、彼女を叔父に託し、
叔父は甥をリビングに待たせたまま、女性を隣室へと連れ込んでいった。

アアーッ!
ちいさな叫びをひと声あげて、女性は首すじを咬まれていった。

毎週週末には、女性の行きつけという喫茶店で落ち合って。
明夫は女性――美奈子といった――を連れて叔父の家へと足を向け、
美奈子は従順に、いやむしろすすんで、白い首すじを叔父にゆだねていった。
独身で浮いた噂ひとつなかった叔父は、ある日明夫を隣室に待たせておいて・・・
いつものようにスーツ姿の美奈子を押し倒すと首すじを咬んで、
それからピンク色のタイトスカートをたくし上げて、犯していった。
隣室でなにが行われているのかを気配で察しながらも、
明夫は昂ぶりを抑えつつ、叔父の欲望の成就を心の中で見守っていった。

「教師のすることではありませんね」
ほつれた黒髪と伝線したストッキングを気にしながら、
部屋から出てきた美奈子は照れくさそうに、ちょっぴり悲し気にほほ笑んだ。
「わたしも、役人のすることではないことをしていますから」
さりげなく視線を外していった明夫の心遣いに、
美奈子は初めて、目じりに涙を滲ませた。

そんな風変わりな逢瀬を重ねていって・・・
半年後、美奈子は明夫を婚約者に選んでいた。

もともと、こういうことだったのか・・・?
披露宴の宴席の花婿の席で、ほろ酔いに浸りながら、明夫は自問した。
叔父はひっそりと、婚礼の場の末席を占めていて。
昔なじみたちと楽しげに、盃を酌み交わしている。
新婦となった美奈子は、純白のウェディングドレスの白いヴェールに恥じらい顔を包んで、
明夫の隣に淑やかにかしこまっていた。
純潔であるはずの腰周りのすみずみにまで、淫らな遊戯を教え込まれてなどとは――とても思えないほどの慎ましさで。

明夫はそれとは知らずに、未来の花嫁を吸血鬼に手引きをして襲わせ、
挙句の果てに純潔までも、むしり取らせてしまっていた。
その経緯を思い出すたびに湧き上がるのは、
怒りや悔恨ではなく――不思議な歓びや昂ぶりだった。

新婚初夜の床を、叔父は今夜も襲いに来るはず。
明夫はかつてのように若い血を叔父に与え、その場にへたり込んで。
花嫁の淫らな舞いを見せつけられることになる――
ふと臨席の美奈子を顧みると、ぐうぜんに視線が合った。
同じ想像に心を浸していたらしい新妻は、目じりを染めてあわてて視線をそらし、
お酒を注ぎに来た親類の年配夫婦に、にこやかな笑みを交えていった――
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