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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

彼女の生き血をねだられる。

2015年12月01日(Tue) 05:12:35

家族のだれかが、吸血鬼とかかわると――
ひとりひとり、血を吸われていって。
しまいに家族全員が、血を吸われてしまう。
そう話には聞いていたけれど。
まさか自分の家がそうなるなどとは、夢にも思っていなかった。
それも、何才も年下の男の子の手にかかって、そんなふうになるなんて。

さいしょは父さんだった。
その子の家とは、親同士が仲が良く、貧血を起こしたその子のため、せっぱつまって手首を咬ませてやったという。
たまたまそれが、親に連れられてうちに遊びに来たときのことで。
そうなると、その子はパスポートでも得たように、
いつでも自分の好きなときに、家のなかに入り込むことができるようになっていた。

つぎに狙われたのは、母さんだった。
僕も父さんも、知らないうちに――
母さんは台所で洗い物をしている最中に、
真昼間に侵入してきたその子に咬まれて、履いていた肌色のストッキングを、びりびりと破かれていったという。

小父さんにもお兄ちゃんにも、悪いから。
だからふたりのお留守のあいだに、小母さんのことを咬んでいたんだ。
その子の言いぐさを真に受けると、そんなことになるらしかった。

そのつぎは、僕の彼女のご両親が。
小父さんの紹介で、小母さんまでもが咬まれてしまって。
それからつぎが、彼女の番だった。

学校帰りに待ち伏せされた、ゆう子さんは。
正面切って、血を吸わせてってねだられて。
びっくりしたけれど、善意の献血のつもりで、応じてしまったという。

僕は知っていた。
吸血鬼が女のひとを襲うと、そのひとのことを犯したがるものだって。
とくに結婚している女のひとは、たいがい犯されてしまうのだって。
年端のいかない、ずっと年下の男の子だったけど。そこは油断がならないって。

ユウくんというその子のことを、公園に誘い出した僕は。
部活のユニフォームを着ていた。
むき出しの太ももにハイソックスという組み合わせを、彼が好んでいる・・・って。ゆう子さんからきいていたから。

お兄ちゃんの血を吸いたいな。
ユウくんは無邪気な顔をして、開けっ広げにそういった。
吸わせてあげてもいいけど・・・ 僕の声はなぜか、震えていた。
その代わり、ゆう子のことをあきらめてくれないか?
僕の問いに、ユウくんははっきりと、かぶりを振った。
わかったよ・・・
僕は心の中でうなだれながら、それでもむき出しの太ももをユウくんのまえにさらすのを止めなかった。

よかったなー、ユウ坊。
うちのお兄ちゃんのこと咬んだんだって?
父さんの声が、どこかから聞こえてきたような気がした。
小母さんの血がおいしければ、お兄ちゃんの血も気に入るだろうね。
若い子の血は、栄養たっぷりだからね・・・
身内のなかにさえ、手引きをする人がいるのなら。
僕はむしろ安心して、チクチクと咬み入れられてくるユウくんの牙を、身体の力を抜いて受け止めていった・・・

吸血鬼ってさ。
セックスしたことのある女のひとを襲ったら、セックスまでするんだって・・・?
自分の血を餌にしながらでも、どうしても訊いてみたいことだった。
ウン、そうみたい。
ユウくんは無邪気に、そうこたえた。僕の身体から吸い取った血で、真っ赤になった唇で。
でも・・・でも・・・ユウくんはまだ子供だから、女のひとの血を吸っても、そこまではしないだろ?
決定的なことを訊きだそうとしていることに、僕は半分後悔をした。
けれどもそのときにはもう、遅かった。
ユウくんはこともなげに、こたえを呟いていたのだから――
ううん、してるよ。

そうなんだ・・・
母さんも、ゆう子さんのお母さんも。もしかしたら、ゆう子さんだって・・・
僕はフッと、われながら大人びたため息をついて。
頭のうえの青い空を見上げていた。
ふり仰いだ頭は、貧血でちょっぴり、ふらふらしていたけれど。

帰り際、僕はユウくんと、指切りをした。
ユウくんが大きくなったら、ゆう子さんの処女を汚してもらうという、指切りを――

制服を着る最後の機会となる、卒業式の前の晩――
僕はユウくんの自宅を、ゆう子さんを連れて訪れた。
親たちが、前菜がわりにひとりひとり、血を吸い取られてぶっ倒れてゆくのを、
ゆう子さんと二人、半ばおびえながら見守って。
そのあとユウくんは、ゆう子さんひとりを自室に招いて犯してゆく。
わざと半開きになったドアの向こう。
たくし上げられてプリーツの乱れたスカートを気にしながら、
ちょっぴり顔をしかめて、気丈に応じてゆくゆう子さんの横顔が、ひどく眩しく映る。
頬ぺたを凛と透きとおらせて、食いしばった白い歯を覗かせて。
彼女を二人がかりで犯している――そんな錯覚は、たぶん錯覚ではなかったはず。
目じりにためた悔し涙は、いつか頬の火照りにかき消されていった。

あの晩は愉しかったね。
得意そうに笑うユウくんに。
こいつ、三回までだって約束だったのに。
そういって彼の頬ぺたを抓る僕――。
ゆう子さんはゆったりとした笑みをたたえて、年下の弟ふたりの悪さを咎めるように、優しいまなざしでにらんでいる。


あとがき
前作のヒロインの、彼氏目線からのお話です。^^
ノリがいまいちだったかな・・・。 ^^;
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