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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

吸血鬼の親心。

2015年12月01日(Tue) 08:04:11

すべての財産を失った桐原は、死を覚悟した。
それは、家族もろともの死であった。
けれどもそのとき、見知らぬ男からの電話が、すべてを変えた。
受話器の向こうから聞こえる、正体不明の声は、とある郊外の村に来るよう、桐原を誘っていた。

桐原は早速、声の主の求めに応じ、息子を伴って村に向かった。
もはやそうするよりほか、道はなかったからである。
どうして息子がいることを知っているのかなどと、考える余裕もなかったのである。
彼とその家族は、予期せぬ歓待を受けた。
相手は、電話の声の主だった。
しわがれた声色通りの年配の男は意外なくらいに物柔らかな紳士だった。
その背後には、ひとりの少年がいた。
引っ込み思案な暗い瞳が、同年代である桐原の息子に注がれた。
この子は病気だから、普通の食事ができないのだと、電話の主の老紳士は説明した。

久しぶりに、腹いっぱいの食事だった。
桐原の息子も嬉しそうに、ステーキをほおばった。
老紳士とその息子らしい少年とは、押し黙って二人の様子をうかがっていた。
息子が嬉しそうにごちそうをほおばっているのは、親として嬉しい限りです。
桐原はそういって、礼を述べた。
老紳士は、まったく同意という顔つきだった。
しかし、その直後だった。
様子が一変したのは。

気がつくと、老紳士は桐原のことを、羽交い絞めに抱きすくめていた。
桐原の首のつけ根には、深々と、老紳士の剥きだした犬歯が、食い込んでいた。
かすれた視界の向こう、息子もまた、自分と同年代の少年に襲われていた。
真っ白な半ズボンの下から覗いた太ももが、みるみる血色を喪ってゆく。
ひざ小僧から力が抜け、息子は硬い床の上に姿勢を崩した。

御覧なされ。
うちの息子・・・あんたのとこの息子の生き血を、それは美味しそうに飲んでいるじゃろう?
息子が嬉しそうにごちそうにありついているのは、親として悦ばしいかぎりなのじゃよ。
老人の囁きに、桐原はなにかに屈したように、頷き返すだけだった。

な?後悔はないじゃろう?
そういう老人のまえ、ふたりの少年は、血を吸うものと吸われるものと、正反対の立場にいながらも、
笑い声を交し合い、首すじを吸い、吸われていった。
血を吸うものばかりではなく、
血を吸われるものさえも、歓びに目覚めていったのだ。
そんな息子を咎める資格など、桐原にはもうなかった。
老人に完全に堕とされた彼もまた、自身の生き血を、惜しげもなく振る舞い始めていたのだから。

ふたりの少年は、じゃれ合い、転げ合って、血を吸い、吸い取られてゆく。
今度は、奥さんの番じゃな。
夜にお連れなされ。息子さんもごいっしょに。
父子ふたりがかりで妻を、母親を吸われる歓びは・・・もう察しが付くじゃろう・・・?
男の言いぐさに、桐原はまたも、頷いてしまっている。
明日をも知れぬ生活だったのが、いまは安住の地を見出した想いだった。
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