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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

真夜中の庭先で。

2015年12月04日(Fri) 08:03:20

薄闇に包まれた縁側に、白い素足が映えた。
ピンクのネグリジェを着た少女は、庭先のかすかなもの音に耳を澄ませ、
豊かでつややかな黒髪を揺らして、音のしたほうを振り返る。
さっきまでだれもいなかったはずの庭に、人影がひっそりと佇んでいた。

「あ・・・来てくれたのね?」
少女はひっそりとそう呟くと、素足のまま庭先に降りた。
冷気を含んだ地面が足の裏に染みたが、少女はかまわず歩みを進め、人影との隔たりを詰めていった。
「すまないね」
影の主はそういうと、目を瞑って寄り添う少女の耳朶に、唇を近寄せてゆく。
ひそひそと囁かれる声色に、少女はくすぐったそうに応えると。
「どうぞ」
と、ひと言だけ呟いて、肩までかかる髪の毛をサッと掻きのけた。
男の赤黒い唇が、少女の白いうなじに、ヒルのように這った。

ちゅうっ。
薄闇のなか、生々しく洩れるのは、おぞましい吸血の音――
少女は自分がなにをされているのかをはっきりと自覚しながらも、影に託した身体を離そうとはしない。

ちゅーっ。ちゅーっ。
心地よげな吸血の音が、どこまでもつづいた。
ひとしきり少女の血を吸うと、吸血鬼はか細い身体をいとおしげに抱きしめて、
もと来た縁側へと、少女を促した。
少女は従順にこっくりと頷くと、半開きになった雨戸の向こうへと、足音を消して身をすべり込ませてゆく。
とざされた雨戸のほうへと、男は両手を合わせて伏し拝むしぐさをすると、踵を返して家の敷地を出ようとした。

「あの」
ためらいがちにかけられた声を、予期していたかのように、男は声のほうをふり返る。
声の主は、さっき彼に対して事前行為を施していった少女の母親だった。
昼間のようにブラウスとスカート姿の彼女は、少女とよく似た面差しをしていた。
「うちの子は、あとどれくらい、身体がもつんですか」
女の声が、かすかに震えている。
「安心しなさい。死なすつもりはない。そうするには、あの子の血はとても美味しいからね」
処女の生き血が大好物であることを、少女の母親はよく心得ているらしい。
「あの」
彼女はもういちど、声を励ました。
「もしよろしかったら、私に代わりが務まらないでしょうか?――あの子が不憫で」
「べつだん、気の毒がることはない。あの子はあの子で、愉しんでいる」
男はよどみなくそういったが、ふと女の顔つきに目を留めた。せっぱつまった顔をしていた。
「既婚の女を相手にするとき、わしがなにをするか知っているね?」
「あ・・・はい」
女はうろたえて声を返すと、
「主人は、知らないことにすると申しております」
とだけ、いった。
「心得た」
男はにんまりと笑うと、初めて女のほうへと歩み寄り、
だしぬけに猿臂を伸ばして抱きすくめた。
「あ!」
不用意にあげた声を恥じる女に肉薄すると、もう首すじを咬んでいた。
地味なモスグリーンのカーディガンが、赤黒いシミに濡れた。

狭い縁側のうえ、窮屈そうに腰を振る女を組み敷いて、男は荒い息をたてている。
獣のような無言の呻きは、時折女の切なげな吐息と折り重なって、深い口づけとなっていった。
破けてずり落ちたストッキングが、少女の母親が堕落したことを、如実に物語っている。
「あんた、だんな以外の男は、初めてのようだね」
下品な囁きに、女は無言の頬を染めて、肯定していく。

安心するがいい。
あの子はそれなりに、愉しんでいる。
奥さんもそれなりに、愉しめるようになった。
あんたは見て見ぬふりを続けるがよい。
うわべの安穏を守っておれば、時というものはさりげなく、流れてゆくものなのだから。

庭の茂みから注がれる熱っぽい視線に、男は心のつぶやきを返してゆく。
いちど彼に血を吸われたものだけに伝わる、心のつぶやきで・・・


あとがき
庭先で妻が生き血を吸い取られるシーンを愉しめるようになっているだんな様も、
しっかり血を吸われてしまっているようです。^^
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「怖ろしい吸血鬼に、生き血を吸い取られてしまうんですよ・・・」
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吸血鬼の親心。

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