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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

相手の都合。

2015年12月14日(Mon) 00:35:53

(少女の日記)
朝8時。
いつもと同じころに家を出た。
出がけにママから、「気をつけてね」って言われて、あたしはちょっとだけ、ぞっとした。
そういえば、いつも表通りまでいっしょに出かけるパパは、早めの出勤だといって、とっくに家から出かけていた――
開け放たれた玄関の向こうに広がる外の風景が、いつになく薄暗く感じた。

(解説)
この街は吸血鬼に、征服されつつあった。
市内の中学・高校はいずれも吸血鬼を受け容れてしまっていて、
学校の周辺に出没する吸血鬼に若い血液を提供するためのルールを構築していた。
ある学校では「接遇」という科目を設けて、供血行為を正課として採用しているし、
別の学校では白昼堂々と来校して生徒の血を欲しがる彼らのために、出席番号順に当番を決めて相手をさせていた。
この少女が通う学校も例外ではなく、採血の対象となる女子生徒が日ごとにスケジューリングされていた。
当日血液を提供する義務を負う少女は、登校する際に保護者から、「気をつけて」と声かけをされることで、自分の役割を自覚した。

(少女の日記)
表通りに出るすぐ手前で、詩織ちゃんと出会った。
おはよう~と明るく声を交し合い、一瞬吸血鬼の予感を忘れることができたのだけど。
それはほんとうに、一瞬のことだった。
詩織ちゃんの履いているハイソックスの、真っ白なはずの生地が、ふくらはぎのあたりにべっとりと血のりをあやしていたから。
「どうしたの?」って訊くと、「彼氏に噛まれたの」とだけ、いった。
詩織ちゃんには特定の吸血鬼がついていて、いつもその人に血を吸わせていると聞いていたけど。
実際、その証拠をあからさまに見せつけられると、本能的な嫌悪が先に立つ。
あたしだって・・・
血を吸われた経験は何度もあるし、そういうこの街の日常に慣れかけてしまってはいるのだけれど。
それでも――噛まれるときの瞬間の恐怖と、血を抜かれるときのどうしようもない嫌悪感や敗北感だけは、どうすることもできないし、それを忘れてはいけないのだと思う。
忘れてしまう――ということは、恥を忘れることにつながるような気がするから。

(解説)
吸血鬼たちは、制服姿の少女を好んで襲っていた。
ブラウスの襟首を汚されることをきらう少女たちは、タイツやハイソックスを履いたふくらはぎを噛ませることで、相手の吸血鬼を満足させるよう努めていた。
穴の開いたタイツや血の付いたハイソックスを履いて登下校する獲物の姿を遠目に見守るのが、彼らの意地悪い嗜好のひとつだったのである。

(少女の日記)
近づいてきた定期試験の追い込みがそろそろ。
二時限目の数学では、絶対聞き落せないところがあった。
三時限目の現代国語では、試験範囲の説明がある。
・・・(略)・・・
放課後には、生徒会役員の打ち合わせ。
来年度の予算決めなので、絶対出席しなければ。
吸血鬼なんかに、襲われているひまなんかないのに・・・!

(吸血鬼の走り書きメモ)
きょうのターゲットについて。
氏名
 瀬藤まなみ 16歳 
所属
 私立〇〇学園 2年B組 学級委員と生徒会役員(書記)を兼務。
当日のスケジュール
 一時限 化学 本人の不得意科目。ただし授業態度は熱心
 二時限 数学 授業中、本人の不得意部分についての詳細解説の予定あり
三時限 現国 定期試験に関する説明を含む授業
・・・(略)・・・
放課後 生徒会役員打ち合わせ
本人にとって、特に忙しい予定が集中しているもよう。
上記は母親から聴取。
父親との関係も良好であり、家族間のコミュニケーションは深いようである。

(少女の日記)
三時限の真っ最中、またもあかねちゃんが、授業中に吸血鬼に襲われた。
そいつは突然、教室の後ろのドアを開けて入り込んできて、
最後列の座席に座っていたあかねちゃんの背中を羽交い絞めにすると、
やおら首すじにかぶりついたらしい。
叫び声を聞いたみんながふり返った。
でも先生は何事も起こらなかったような態度で授業を続け、
みんなもすぐに180度目線を移して、吸血シーンから黒板の板書に集中した。
おかしい。なにかが、おかしい・・・
でも、だれもそれを咎めることはないし、話題にすらのぼらない。
そうしたよそよそしい空気のなかに、あたしもいる。

(吸血鬼の呟き)
ターゲットの教室であるB組の三時限目を襲ったのは、Dだった。
俺の生前、俺と妻とを食い物にした男だった。
もともと露悪的な性格で、授業中とか、友達と廊下を歩いているときとかにターゲットを襲うのを好んでいた。
俺と妻の時も、血を吸われて眩暈を起こしてへたり込んだ俺の前で、これ見よがしに妻の生き血を吸い上げて、セックスまで遂げていった。
それに昂奮を感じてしまった俺も俺だったが、妻はそんな俺の態度を赦してくれた。
気持ちよかったから・・・それを大っぴらにできることに救いを感じる と。
倫理観や常識を、お互いの感情の利害の一致が吹き消していた。
やつはそういう、Мな天性の持ち主を見分ける嗅覚を持ち合わせていた。
襲われた生徒はもちろん同情に値するが、意外に状況を愉しんでいることは容易に想像できる。

(少女の日記)
六時限目まで、なにごとも起こらない。
出がけにママが呟いた「気をつけて」は、そういう意味ではなかったのかも?
でも、これからが大事なんだ。
生徒会の予算決め。
書記のあたしは、いろいろやることがある。
長い廊下を独り生徒会室に向かう。
襲われませんように。お願いだから、今出てこないで・・・
そんな想いだけを胸に抱きながら、人けのない廊下を急ぎ足で歩いた。

(吸血鬼の呟き)
嗜血癖がついた俺を、妻は見捨てることをしなかった。
妻はDの、いわゆる「オンリーさん」になっていたが、
夫婦間での供血は認めらていたので、
Dの許しを得つつも俺への献血を続けてくれた。
「次はいつ」
血を吸った相手にそんなふうに呟いてしまうと、「オンリーさん」になってしまうのだ。
「オンリーさん」になると、血を吸わせる相手はその男だけに限定される。
そういう意味では、気が楽になるのだと・・・あとからわかった。
以来妻は、Dに対しては文字通り献身的に、生き血を捧げつづけているのだが・・・
夫である俺としては、かなり複雑な気分ではある。
代わりに得たのが、いまの立場。
妻の生き血を日常的に吸われ、貞操をほかの男と共有する日々とともに、
女子学生をより取り見取りに襲うことができる特権を享受する。
きょう一日・・・あの少女をいつでも襲うことが許されていた。

びくびくしながら長い廊下を歩く少女の胸中を、俺は手に取るように察し尽していた。

(少女の日記)
生徒会の打ち合わせが終わると、あたしはだれもいなくなった廊下を抜けて、教室に戻った。
教室にも、もうだれもいなかった。
襲われるとしたら今?って思ったけれど。
夕暮れ迫る刻限なのに、妙に明るく感じられた。
今朝の朝らしくない昏(くら)さが、うそのよう。
ママの囁きはほんとうに、他意のないものだったのか?
あたしは鞄を手に取って、教室を出た。
念のため、真新しいハイソックスに履き替えて。

(解説)
当校のハイソックスは指定品で、校内の購買でいつでも購入可能である。

(少女の日記)
やっぱり――
あたしは目がくらむ思いだった。
男は家の近くの路上で、あたしのまえに立ちふさがったのだ。
手を引かれて近くの公園に引きずり込まれたあたしは、力いっぱい逃げ回った。
もちろんそんな努力は、徒労に終わるのだけど・・・
そうするしか、そのときのあたしには、選択肢がないと感じていた。
いよいよ追いつかれて羽交い絞めにされてしまうと。
やだ!やだ!放して!怖いっ!
あたしは思いつく限りの拒絶的な言葉で、訴えつづけた。
わかっているはずだ。
男のひと言が、あたしを黙らせた。
み・・・見逃してっ。
あたしはさいごに、そういった。
無理だとわかっているはずだ。
男は冷酷に、そう呟いた。
ずっとあたしのこと、狙っていたのね?
ああそうだ。朝からずっと。
どうして今なの?
生徒会の打ち合わせ、ご苦労さん。
男のひと言に、あたしの気持ちが崩れた・・・
こいつはなにもかも、知っている。

(吸血鬼の呟き)
少女はがっくりと、身体の力を抜いた。
飢えた唇が、うなじに触れさすと。
うなじに帯びたぬくもりが、ひどく心地よかった。
きょうの大事な御用は、ぜんぶ済ませたようだね。
俺は少女に引導を渡すつもりで、そういった。
少女はためらいながらも、こっくりと頷いてくれた。
俺はあてがった牙をそのまま、少女の柔らかな皮膚に、埋め込んでいった。
忘我のひととき――
この娘にとっては、身の毛のよだつ瞬間の連続にすぎなかっただろうけど。
俺にとっては、渇ききったものすべてを、暖かなねぎらいで満たす貴重な刻だった。

(少女の日記)
「次はいつ」って、しぜんと呟いていた。
男はビクッとしたようにあたしのうえから身を浮かせ、「いいのか?」って、訊いてきた。
「授業中に襲われるよりはまし」って、本音で応えていた。
いずれは、だれかのものにならなければならないのなら。
まだしも、こちらの事情を考えてくれるひとのほうがましだったから。
男は嬉しげに、あたしの足許に舌をしゃぶりつけてきた。
真新しいハイソックスが意地汚くいたぶられ、ずり落ちてゆくのを、どうすることもできなかった。
信じられないことに、あたしはそのとき、「咬んで」って、言っていた。
制服の一部であるハイソックスが咬み破られてゆくのが、ひどく小気味よかった。
夜風に乱れた髪を流されるままにしながら、あたしは目いっぱい、あたしの血を男の渇きを満たすために、ごちそうしていた。

(少女の日記)
朝7時――
いつもより早く、家を出る。
ママは今朝も「気をつけて」って、声をかけてくれた。
二人きりで約束をするようになっても、あの男は律儀にも、ママにも予告をしてくるらしい。
あいつがママの浮気相手だとわかった今も、あたしはごくしぜんに、あいつのことを受け容れていた。
何もかも知っているらしいパパは、ママのことを責めたりはまったくしないで、ふつうに接していたし、
昼間に人間の仮面をかぶって時々うちにくるようになったあいつとも、ごくしぜんにやり取りをしている。
そして、パパが出かけた後、ママが血を吸われ、あたしもハイソックスを破られる。

学校を早く出るときは、パパとは別行動になるけれど。
あたしが家を出てすぐに、パパも家を出るのだという。
そして、公園で待ち合わせているあたしが、ハイソックスを真っ赤にされてしまうのを、遠目に見届けてから、出勤していくのだという。

「おはよう」
詩織ちゃんはきょうも、血のりの付いたハイソックスを履いている。
「おはよう」
返事を投げるあたしも、血の付いたハイソックスを履いている。
通りかかる人たちがふり返るのを、気にもかけずに。
むしろ見せびらかす快感をさえサバサバと感じながら、
あたしたちはいつものように、通学路をたどってゆく。
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