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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

身代わりのはずが。  ~女装する夫~

2015年12月14日(Mon) 07:56:46

頬や額やおとがいに、ファンデーションをくまなく塗りこめて。
まぶたには色濃いアイシャドウ。
仕上げに濃いルージュをサッと刷く。
妻から教わった、覚えたてのメイクは、まだまだつたなかったが。
肩先をそわそわとかすめるウィッグの髪に囲まれた顔だちは、
男の輪郭をかなり消すことに成功していた。

鏡台の前から起ちあがると。
身にまとったワンピースがふぁさっと揺れた。
丈の短めなワンピースのすそから入り込む外気のそらぞらしさが、
薄手のストッキングに包まれた太ももにまで、伝わってくる。

行ってらっしゃい。
かけられた声に振り向くと。
ドアの向こうに佇む妻が、貴志の女装姿を見つめていた。
貴志は無言で腰を折り、妻に会釈を返してゆく。
しぐさのほうは――かなり女になり切っていた。

幾晩も。
立場が逆だった。
真夜中、家を抜け出して。
吸血鬼に血を吸われに出かける、着飾った妻――
それをむざむざと見送っていたころの悔しさは、もう貴志の意識の中にはない。
首のつけ根につけられた咬み痕が、むず痒く疼いていた。


吸血鬼の支配下になりつつあるこの街で。
娘が血を吸われ、妻までもが血を吸われた。
処女の生き血を好む彼らの嗜好のために、娘の純潔こそまだ無事だったけれど、
既婚の女性はことごとく、吸血鬼に襲われると犯されていった。
貴志の妻もまた、例外ではなかった――

さいしょは屈辱にふるえ、仕返しを誓った貴志だったが。
やがてそれが不可能になると知ったころには、
妻も娘も、身体じゅうの血を舐め尽されようとしていた。
彼女たちの生命を救うには、方法はひとつしかなかった。
彼自身も、血を吸われてしまうこと。
提供する血の量を増やすことだけが、生き残るための道だった。

好んで脚に咬みつく吸血鬼のために。
娘も妻も、ハイソックスやストッキングを咬み破られて帰ってくる。
貴志は愛用していたストッキング地の長靴下を履いて、吸血鬼のもとを訪ねていった。

あなたの好みに少しは合いますかね・・・
皮肉のように口にした言葉を真に受けて。
吸血鬼はむしろ感激して、彼を部屋の奥へといざなった。
そうして、ソファにうつ伏せになるように貴志に求めると。
スラックスを性急にたくし上げて、濃紺に染まった貴志のふくらはぎにしゃぶりついてきた。
ほの暗い照明の下。
紳士用の長靴下は、妖しい光沢に包まれていて。
薄い靴下ごしに這わせた舌を、貴志のふくらはぎに迫らせた。
ドキドキした。
その瞬間、チクチクとした牙が二本、ずぶりと貴志のふくらはぎに埋め込まれた。

42歳の働き盛りの血液は、吸血鬼をいたく魅了した。
男は貴志の脚にとりついて、彼の生き血を吸い、また吸った。
母乳を求める赤ん坊のように、性急でしつようだった。
半熟卵の黄身を吸い出すように、血潮を吸い上げられてゆきながら。
貴志はどうして妻や娘がこの男の手中に堕ちたのかをさとった。
さとったときにはもう、遅かった。
彼は吸血鬼に求められるまま、靴下の舌触りをくまなく愉しませ、なん度もなん度も咬み破らせてしまっていた。
そのうえで。
妻を犯した一物をさえ、彼は受け容れざるを得なくなっていった。
こんなに猛々しいものが、妻の股間に埋め込まれたのか――
貴志は狭苦しいソファのうえで身をのけ反らせ、いつか悩ましいうめき声さえ、洩らしていた。
あとから尾(つ)けてきた妻が、ドアの向こうに佇んでいて、
不覚にもあらわにしてしまった媚態を逐一見られてしまっているのを気配で感じながら、
もう・・・どうすることもできなくなっていった。


妻と娘の血を守るため、身代わりになる。
そんな大義名分が、貴志の行動を支えていた。
彼は勤務先にまでやってきた吸血鬼のために別室を用意して、いつも気前よくスラックスのすそをたくし上げていった。
濃紺や漆黒の、薄手のナイロン生地になまめかしく染めたふくらはぎを、同性の情夫に愉しませるために――


あなた、みつえの制服着てってちょうだい。
きょうは具合悪そうなのよ・・・
妻の誘いは、悪魔の囁きだった。
父親のひょう変を、最初は娘らしい潔癖さで嫌悪した娘のみつえは、やがて両親に協力的になった。
貧血が治らずに学校を休まなければならないのに彼からの呼び出しがきたときには、
娘をかばうため父親が、身代わりに娘の制服を着て学校に脚を向けた。
リブ編みのハイソックスは丈足らずだったけれども。
彼は娘のハイソックスを目いっぱい引き伸ばして、吸血鬼を応接したし、
吸血鬼もまた、女子高生の制服を着た貴志のことを、あくまでも女学生として扱った。
お嬢さん、生き血をたっぷりといただくよ・・・そう呟きながら、欲情もあらわな唇を、通学用のハイソックスのうえから吸いつけていくことで。


丈の短いワンピースで女装した貴志が向かったのは、公園だった。
こうこうと輝く照明の下。
黒い影がひっそりと、佇んでいた。
奥さんだね?
ひとのわるいやつだ、と、貴志は思った。
貴志だと知っていながら、妻と勘違いをしたふりをしている。
だんなの目を盗んで、家を抜け出してきたんだね?
男はなおも、言いつのる。
助平な女だ。淫乱な女だ。
男はさらに、言いつのる。
それでもわしに、ストッキングを破かれたくて、また来たのだな。
貴志は意を決して、女になり切った。
エエ、弓枝です。
そうなんです。主人を裏切って、貴男に逢いに来ました。
仰る通り、淫乱なんです。
弓枝は淫乱な、いけない妻です。
貴志さんの妻なのに。夫を裏切るのが愉しいんです・・・

クックックッ。
男は忍びやかに嗤うと、貴志の両肩を抱きすくめようとした。
イヤッ!!
反射的に声をあげて、飛びのこうとしたけれど。
力強い猿臂に、たちまち圧倒されてしまっていた。
ああ・・・っ。
女だ。女になり切っている。自分のなかの女が、目覚めてしまった。
貴志は実感した。
けれどももう、どうすることもできなかった。
ああ・・・っ、あなたあっ。
どこかに夫であり男である自分自身の目が、いまの女の姿をした自分のことを、暗闇の向こうから見つめているような気がする。
男である貴志は、女になり切った貴志を、嫉妬の目で見つめている。
嫉妬は甘美な陶酔を呼び、幻の貴志はスラックスの股間に手をあてがって、自慰に耽りだしていた。
そうよ、あなた嫉妬するのよ。あたし、このひとに抱かれちゃうのよ。
あなたの奥さん、犯されちゃうのよ。
あたし、声をあげて、悶えちゃう。
悶えて、悶えて、悶え抜いて、感じちゃっているのを見せつけてあげる。
そうよ。あなたの男としての愉しみは。
あたしが犯されるのを視ながら、自慰をすることで満たされるのよ。

貴志のなかで目覚めた”女“は、いちど語りはじめた言葉を語り止めようとはしなかった。
さいきん、妻は警戒している。
自分よりも、娘よりも、貴志の出番のほうが多いのだ。
妻が女として、自分に嫉妬していることに。
貴志は奇妙な誇りを覚えた。

夫が万一、血を吸い尽されてしまったら。
未亡人の装いで、黒のストッキングを破らせてしまおう。
今やそんなことくらいしか頭にないはずの妻が、むしょうにいとおしい。
首すじに食いついた唇が、傷口につよく押し当てられて。
貴志の温かい血を、ぬるり、ぬるり、と、抜き取ってゆく。
おぞましかったはずの感覚が、いまはゾクゾクとつま先立ちしたくなるほどの歓びを帯びていた。
もっと、吸って・・・もっと、吸って・・・ああ、素敵。吸い尽しちゃって・・・っ。
抱きすくめられた猿臂の力強さが、心地よい。
女の感覚として、歓ばしい。
男が貴志の失血ぶりを察しつつ、加減しながら血を吸っていることさえ忘れて、
彼は忘我の中で、叫んでいた。
貴男になら・・・あたしのたいせつなもの、全部あげちゃうわ・・・っ。


あとがき
初めは気が進まないながら、妻や娘の身代わりに血を吸われるようになった男が、
女の身なりをして吸血鬼の応接をくり返すうちに目覚めてしまう。
けっこう好きなパターンなんです。^^;
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女子大の庭で。
次の記事
姦の村 4  二度目のお嫁入り

コメント

このストーリーに目が行きました。

特に好きな部分

「あなた、みつえの制服着てってちょうだい。」
「・・・、身代わりに娘の制服を着て学校に脚を向けた。」

こんなこと言われたら、喜んで協力してしまいます。


「女の身なりをして吸血鬼の応接をくり返すうちに目覚めてしまう。けっこう好きなパターン・・・」

私もです^^

by ゆい
URL
2016-08-18 木 01:19:06
編集
> ゆいさん
過去の記事へのコメント、ありがとうございます。
じつはこの作品、かなり気に入っていたのですが、
たくさん描いているお話の中にまぎれ込んでしまっていて、
探していたのです。
(^^ゞ
はからずも探し物にご協力いただくことになり感謝です☆☆

> 女の身なりをして吸血鬼への応接をくり返すうちに目覚めてしまう。
この手のねたは、ちかいうちまたあっぷしたいな・・・と思っています。
(いつになるかわかりませんが)
こうご期待!
(^_-)-☆
by 柏木
URL
2016-08-18 木 04:33:14
編集

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