淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
妹分と 妹と
2015年12月21日(Mon) 07:43:53
母校のハイソックスを好んで咬み破る、あのいけ好かない吸血鬼に。
とっくに卒業しちゃったあの学校の制服を着てくれとせがまれて。
あいつは「まだまだ似合う」とかいって、おだてるけれど。
制服なんてぜったい――現役生のほうが似合うに、決まってる。
そんなわけであたしは、仲の良かった後輩を家に招んだ。
もちろん、あいつにはあらかじめ、声かけて。
やだーっ!やだーっ!
気丈なあの子もべそ掻いて。
あたしに両肩を抑えられ、あいつに胸と首根っこをつかまえられて、咬まれていった。
おいしそーって、思ってしまったのは。
あたしにもあいつの狂気が、乗り移りはじめていたから?
でもさいごには、力の抜けた身体をうつ伏せにして。
学校名の頭文字をあしらった、指定の白のハイソックスを履いたふくらはぎを、
あの子もしぶしぶ、咬ませていった。
真っ白な生地に包まれた、たっぷりとしたふくらはぎに、
赤黒く膨れあがった、飢えた唇を吸いつけられて。
真っ白な生地に、赤黒いシミを拡げながら、
あの子もあのときのあたしみたいに、チューチューおいしそうに、血を吸い取られていった。
よかった。かっこよかった。よくやった。
それでこそあたしの、妹分!
あたしはべそを掻き掻き羞ずかしがるあの子の頭を撫でて、ほめてあげた。
同じ香りの血を吸いたい。
そんなふうにあいつに、せがまれて。
あたしは貧血で、もうふらふら。
母さんだって、あたしよりひと周り大柄な身体をしぼませてしまったように、うつろな目になっちゃっている。
それであたしは、ひと肌脱いだ。
えっ?香奈ちゃんはまだ、早いって。
母さんはそう、たしなめたけれど。
ほかに吸わせてあげる女の血なんて、ないじゃない。
あたしはきっぱりと、そういった。
いい。母さんは知らん顔していて。あたしがうまくやる。
まだあたしのいたあの学校に入る齢ではなかったけれど。
あたしは妹の香奈を、部屋に招んで。
姉さんの制服着させてあげると、はしゃいでもらって。
紺のセーラー服に、プリーツスカート。
真っ白なハイソックスを、ひざ小僧の下までぎゅっと引き上げてやって。
夢中になってる香奈の後ろには、もうあいつが、迫っていた。
べそを掻き掻き、血を吸い取られる妹の、両腕をしっかりと、抑えつけてあげながら。
だいじょうぶ。母さんにも内緒に、してあげるから。
そんなふうに渡された引導に、妹もほっと安堵したようだった。
白のハイソックスのふくらはぎになすりつけられてくる、ヒルのような唇には、
いつまでたっても気持ち悪そうにしていたけれど。
だいじょうぶ。そのうち慣れちゃうんだ。
香奈も姉さんの学校に入ったら、自分の制服でご馳走してあげるんだよ。
うふふふふっ。
身体じゅうに毒が回り切っちゃったらしい妹は、やっといつもみたいに笑ってくれた。
さすがだよ。かわいいよ。
それでこそあたしの、妹だよ。
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