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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

気を利かせ過ぎた夫

2015年12月26日(Sat) 04:23:22

オイ、帰るぞ。
貢田(みつだ)博はふすまの向こうに、声を投げた。
法事のあとの宴も尽きて、皆が三々五々、家路につき始めたころだった。
はぁい、今すぐ。
ふすまの向こうからは、妻の声。
いつになくウキウキとした声色に、貢田の声の語尾が震えた。
ふすまの向こうでなにが起きているかは、先刻ご承知。
この村では、法事のあとにはきまって、人妻相手の濡れ場が展開する。
席に紛れ込んだ村の衆は、都会育ちの人妻を物色して、
法事のあとの宴が始まると、思い思いに夫婦の間に割り込んで、妻のほうだけを、別室へと連れ込んでゆく。
どうしてそんなことが許されるのかって?
この村を訪れる都会育ちの男女はだれもが、いわくつきの過去を持っていて。
世間から身を隠すのと引き換えに、妻の貞操を犠牲にする――――そんな取引が成り立っていたから。

ふすまの向こう側。
貢田加絵は背中に両腕を回して、ブラジャーをつけ始めていた。
それでも相手の男はなおも未練がましく、加絵の下肢にまとわりついて、
ひざ下までずり落ちた加絵のストッキングを、舌でいたぶって皺寄せてゆく。
もう、しょうがないわねえ。
加絵は甘い声で情夫を咎めると。
主人が行こうって言ったら、帰してくれるお約束よ。
そういって、相手をたしなめた。
男は案外と素直に、加絵を離した。
ふすまが細目に開いて、有無を言わせぬ語気が、そそぎ込まれた。
――――どうしても気が済まないのなら、夜の10時ころうちに来なさい。私はもう、寝ちゃっているから。
どこまでももの分かりの良い旦那だった。

またねぇ。
加絵が後ろを振り向いて、男に手を振る。
男は慇懃に、ふたりの後ろ姿に最敬礼をする。
そして、周囲を睨みつける。
あの夫婦をこばかにするやつは、ぶっ殺すぞ。そんな顔つきをして。

夜10時半。
やっぱり――――
失敗した・・・と、貢田は何度目かの寝返りを打った。
10時ころに、妻の情夫が家に来る。
そうわかっていたから、いつもより多めに酒を飲んで、早くに床に就いたつもりだったのに――――
あらかじめそんなことがあるとわかっていたら、とても眠れるものじゃない。
隣のリビングから洩れてくる物音を、彼はあまさず聞き洩らすまいと、知らず知らず聞き耳を立ててしまっていて。
そのために、睡魔はとうとう、訪れなかった。
男の訪問は、明け方までつづいて。
くたくたに疲れ果てた妻が、隣に延べた布団にもぐり込むや否や、貢田はその妻の身体に、のしかかっていた。

都会にいるころよりも。
夫婦の営みは活発になった。
ほかの男を識ってしまった妻の身体は別人のように若返り、貢田の求めに敏感に反応するようになっている。
これは災厄なのか。ご利益なのか。
貢田はいまだに、決めかねている。
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