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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

娘の身代わり。

2015年12月26日(Sat) 07:52:51

忍田が足音をひそめて近寄ると、そこには女の影が佇んでいた。
濃い夕闇が視界を奪って、影の主がたれなのか、すぐに判別できない。
きょう待ち合わせているはずの少女は、16歳。
ふた月ほどまえから血を吸うようになった、県立の高校生だった。
案に相違して。
そこに佇んでいたのは、少女よりもはるかに年上の女だった。
面差しがどことなく、少女のそれと似通っている。
女はおずおずと忍田を見、気まずく口ごもりながらも、話しかけてきた。
「優香が・・・娘が体の具合を悪くして・・・」
みなまで言えずに言いさした言葉を、忍田は無遠慮に継いだ。
「お母さんが身代わりに、わしに血を吸われにおいでなすったのか」
女は凍りついたように、立ちすくむ。
赤いバラをあしらった小ぎれいなワンピースに、ぴかぴか光る黒のエナメルのハイヒール。
肩先に波打つウェーブの栗色の髪は、美容院でセットしたばかりのように鮮やかな輪郭を持っている。
女というものは、こういうときでさえ、己をひきたてようとするものなのか。
忍田の胸の奥で、なにかがぶるりと慄(ふる)えた。

優香と呼ばれる少女が血を吸われ始めたときには、週一回の約束だった。
それが週二になり、週三になり・・・いまではほとんど、毎日のように逢っている。
身体の具合も悪くなるわけだ。
それほどまでに、彼の牙から分泌される毒は、無防備な素肌に色濃くしみ込まされたのであろう。
ここは吸血鬼の支配する街。
逃げるだけの理性を持ったものたちはすでに逃げ、
残っているのはひたすら、支配を甘受しようとする者たちだけだった。
忍田はきょうの日の来るのを予期しながら、少女の血を容赦なく啜りつづけた。

今朝のことだった。
少女の家から出勤してきた背広姿の男が、目ざとく忍田をみとめた。
彼女の家のものには、面が割れていないはず。
それなのにいち早く彼を、娘の生き血を吸う吸血鬼だと察したのは、親というものの持つ本能なのか?
男は人目の立たない近所の公園へと忍田をいざない、真剣な顔つきで懇願した。
「娘の血を吸うことについては、なにもいわない。でもせめて、死なせないでくれ」
代わりに自分の血を吸ってもらえないか・・・?男の申し出は、要するにそういうことだった。
忍田は言われるままに優香の父親の首を咬み、ほんの少しだけ血を啜った。
けれどもやっぱり、無理だった。
「悪いが、どうしても男の血は受けつけないのだ」
身を挺してまで娘を守ろうとした父親に、忍田は衷心から頭を下げた。
けれどもそのあとには、血をほしがる本能が、忍田に冷酷な囁きを強いていた。
あんたの奥さんに、そう伝えてくれ―――――と。

自分の妻の血を吸おうとする男に、協力する夫などいるのか・・・?
そう問いたげな視線に、忍田はいった。
力を貸してくれたら、恩に着る。
もちろんふたりとも、殺(あや)めたりはしない。
最愛の妻とまな娘の生き血をみすみす啜らせた恥知らずな男だなどと――――
この街ではあんたのことをそう思うものはだれもいないし、
俺もそんなことを考えたりはしない。
ただ俺には、血を吸う相手がもうひとり、どうしても要りようなのだ  と。

男が勤務先から自宅へ、どんな連絡をしたのか、忍田は知らない。

優香の母親は相変わらず、こわばった視線で忍田を見あげている。
肉づきのよい身体つきをした彼女だったが、上背は忍田よりもずっと劣り、
彼女が体内に宿す血液の全量をもってしても、忍田を満足させられるとは思えなかった。
「わしは処女の生き血が大好きじゃ。だから娘さんには、手加減して愉しませてもらってる。
 しかしあんたは、大人の女だ。手加減はせん。
 どういう目に遭うのか、わかったうえで来なさったのか」
母親はこわばった顔つきをさらに凍りつかせたが、やっとの思いで、いった。
「主人と相談したうえで、伺いました」
忍田はちょっとだけ気の毒そうな顔をして、女を見た。
けれどもその口から発した言葉はみじかく、さらに容赦がなかった。
「わかった。来なさい」
忍田は門柱にもたれかかるようにして彼が通りかかるのを待っていた女の背中を邪慳に押し、
門の中へと追いやった。
硬く施錠されているはずの玄関は、忍田が手を触れると苦も無く押し開かれ、
ふたつの人影は鎖された古びたドアの向こうへと消えた。

「横になるかね?」
忍田の問いに、女はかぶりを振るばかりだった。
見通しの良い庭に射し込む夕陽は、門前の暗さとは裏腹な明るさをまだ持っていたが、
女はその情景に目をやろうともしない。
「わしの好みは知っていような?」
スイッと傍らにすり寄り、囁きかけてきた男の気配に女はビクッとして顔をあげた。
けれども、伸ばされた猿臂に両肩を抱かれ、身じろぎひとつできなくなっている。
「あんたの名は・・・?」
「美穂・・・永黒美穂といいます」
美穂さん・・・か。
名前を識ってしまうと、妙な親近感がわくものだ。
そこには人格があり、親族知人の係累がある。
かつてはその身に温かい血潮を宿していた時だってある。
忍田は相手のおびえを、なんとかして落ち着かせようと思った。
女の言葉が、忍田に一歩先んじた。
「ふくらはぎを咬むんですよね・・・?それから首すじ」
「娘さんから聞いたんだね」
「は、はい・・・」
「じゃあさっそく、お世話になろう」
忍田は並んで腰かけたベッドから腰をあげ、すぐにその場に四つん這いになると、
美穂の足許にそろそろと唇を近寄せてゆく。
「ひっ」
思わず避けようとした脚を掴まえると。
忍田は美穂のふくらはぎを吸った。
くちゅっ。
生温かいよだれを帯びた唇が、美穂の穿いている肌色のストッキングをいやらしく濡らした。

美穂はベッドのうえ、仰向けに寝かされていた。
男はさっきから、表情を消した美穂のうなじに咬みついて、
キュウキュウ、キュウキュウ・・・生々しい音をたてながら、生き血を啜りつづけている。
放恣に伸ばされた美穂の脚に、パンティストッキングはまだまとわれていたが、
あちこちに咬み痕をつけられて、むざんな裂け目を走らせている。
着衣ごしにまさぐられる胸が、恰好のよい輪郭を、くしゃくしゃにされたワンピースに浮き彫りにしていた。
「優香と同じ香りがする」
男は女の耳元で、彼女の娘の名前をわざと呼び捨てにした。
「家に・・・帰してください・・・」
「あの子もさいしょのときには、そう言っていた」
吸い取ったばかりの美穂の血をあやした唇が、彼女の唇まで求めてきた。
避けようとしたが、すぐに奪われてしまった。
二度、三度、重ね合わされてくるうちに。
舐めさせられた血潮の、錆びたような芳香が鼻腔に満ちて――――
いつの間にか女のほうから、忍田の唇を求めはじめていた。
どういうことなの?いったいなぜなの?
女は自問しながらも、忍田とのディープ・キッスを、やめられなくなっている。
男の手がだしぬけに股間に伸び、ショーツとパンストとを、いっしょに引き破った。

あっ・・・!と思ったときにはもう、遅かった。
男は目にもとまらぬ速さで女の股間に自分自身を肉薄させて、
怒張を帯びた硬い肉棒が、女の秘部にもぐずり込んでいた。
あっ・・・あっ・・・あっ・・・
女は有無を言わさず、犯された。
白濁した精液がどろどろとそそぎ込まれるのを、もうどうすることもできなかった。
征服・・・された?こんなに、あっけなく・・・?
脳裏に戸惑いを漂わせながら、女はなん度も吶喊を許し、不覚にも応えはじめてしまっていた。

こぼれた粘液がシーツをしとどに濡らすころ。
男はふと、呟いた。
――――我慢づよいご主人だ。
半開きになったドアの向こう。
忍ばせた足音がかすかに床をきしませながら遠ざかるのを、美穂は確かに耳にした。
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吸血鬼の屋敷のまえに佇む妻。 娘の身代わり(夫目線編)
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気を利かせ過ぎた夫

コメント

お久しぶりです
柏木様、
久しぶりに訪問させて頂きました。

先日はFC2のドジをお知らせ頂き有難うございました。
FC2からは、メールの返信がありましたが、かなりのチェックを掛けているようですね。

今年も押し迫り、私の方の更新は、多分今日が最後になりそうです。中途半端な所で終わってしまいましたが。

祥子さんも先日の更新で終わりのようです。

来年も相変わらずの駄文ですが、続けてゆくつもりですので、よろしくお願い申し上げます。
by masterblue
URL
2015-12-26 土 19:59:05
編集
> masterblueさま
そうそうにごあいさつ賜り恐縮です。

先日はまったく、びっくりいたしました。
10年の歴史を誇る?「妖艶なる吸血」も、ここで唐突に終焉か?とまで思いました。
当ブログは500作くらい描いた後事情があっていちどつぶして、いまの形にしたのですが。
今度クラッシュしたら、次はもうないかもしれません。

masterblueさまの精力的なご活動は、頭が下がるばかりです。
まさに本格的なSM小説!
来年もますますの健筆をふるわれますよう、応援しております。

当ブログは管理人が発作的に描きたくなりますと、ぎりぎりまで営業します。
お気が向かれましたら、また遊びにいらしてください。
by 柏木
URL
2015-12-27 日 15:14:35
編集

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