FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ライオンに出くわしたウサギ。

2016年01月26日(Tue) 07:52:24

ライオンとウサギが道で出くわしたら、ウサギがライオンに食われるという運命しか訪れないように。
吸血鬼と勤め帰りのOLが夜道で出くわしたら、OLが吸血鬼に生き血を吸われるという運命しかあり得ないだろう。

コツコツとハイヒールの足音を響かせて、一人歩みを進めるそのOLのまえに。
嫁入り前の若い女がもっとも忌むべきそいつは、おもむろに立ちふさがっていった。
えっ!?
両手を口許に押し当てて、かろうじて悲鳴をこらえるOLを。
吸血鬼はこれ幸いとばかりに横抱きにして、近くの公園へ連れ込んだ。
その公園――地元では、「お嫁に行けなくなる公園」なんて、呼ばれている。
処女の生き血は貴重品だから。
彼らの多くはみだりに処女を犯さないとはいうけれど。
やっぱり半々くらいの確率で、処女も侵されてしまうというのが、実情らしかった。

あの・・・あの・・・許してください。見逃してください。
女もいちおうは、懇願するのだが。
希望が聞き取られる可能性は低いのだと、かろうじて残された理性は冷酷に告げる。
なにしろ相手は血に飢えて喉をカラカラにしているのだし、
自分はといえば相手の好みそうなうら若い生き血を、その身にたっぷりと宿しているのだから――
お互いにその事実を確かめ合うのに、ものの数秒とかからなかった。
でも吸血鬼のほうも、老いたりとはいえ紳士のようだった。
女はそこに、わずかな希望を賭けようとした。
そうだ、ここの人たちは、映画で見るような、脳みその欠落したモンスターみたいな獣じゃない。
人の言葉をきちんと話し、昼間はふつうの人間と同じように暮らすという。
たしかい老紳士は、女に話しかけてきた。選択肢を与えるために。
もっともそのどちらもが、女の好みに合ったものとは、限らなかったが。
首すじからと脚からと、あんたはどちらをご希望かね?

アアー。
絶望のうめきを女が洩らしたとき。
背後から遠慮がちに、男が声をかけてきた。
あのう・・・
はい?
吸血鬼も若いOLも、声のするほうをふり返る。
あ、すいません。こんばんは。お邪魔でしたか・・・?
頭を掻き掻き現れたのは、若いサラリーマンだった。
女はちょっとだけ、安堵したのは。彼がおなじ勤め先の顔見知りだったから。
でもこの時点で、彼女はまだ知ってはいない。
勤め帰りにこの吸血鬼に脚を咬みたいとねだられて、いつも穿いている脛の透ける薄い長靴下を、気前よく咬み破らせてしまっていた――なんていうことは。

お邪魔ではないけれど。
言葉を継いだのは、吸血鬼のほう。
ちょうど、食事にかかるところだったんだがね。
ああ、やっぱりそういうことですね。失礼しました。お二人、案外お似合いな感じがしますよ。
憤慨したのは、若いOLのほうだった。
この人は、なんという寝ぼけたことをいうのだろう?
せっかくこの場に居合わせながら、私を助けてはくれないの?
ひどいじゃないですか!!――女が発した叫びを遮ったのは、吸血鬼。
まあ、まあ、ひとの話はさいごまで聞くものだ。
女は、都会から来たばかりのこの同僚の男が、人は好いけれども小心者なのを知っていた。
もうひと言くらいは、チャンスをあげよう。
いま自分が置かれた立場を棚に上げて、女は値踏みするように、同僚を見た。

ああ、ごめんなさい。ご不快ですよね。おわびします。
男はもじもじと、けれども意外なくらい冷静に言葉を返す。
僕がお似合いといったのは――お二人の出会いがあまりにもうってつけ過ぎるからそういったんです。
だって、小父さんは若い人間の血をほしがっているし、若野さんは若いOLなんだし――
この人、変態なんですよ。
長い靴下を穿いた脚に咬みついて、靴下を破きながら血を吸うんです。
そうするのが、愉しくて仕方がないという人なんです。
小父さん、喉が渇いてしょうがないのなら、僕が代わりに相手をしますよ。
でも、若野さんも気持ちに余裕が持てるのなら、すこしだけでも協力してくれると助かるんですが。
この村にいる限り、吸血鬼の毒牙を逃れることは難しい――男は同僚にそういった。
彼女もまた、都会から転属してきたばかりだと知っていたから。
あなたも血を吸われちゃってるの?
恐る恐る、彼女が訊く。
ウン、ついこの間からね。
軽々と、彼が答える。
さいしょは少し痛いけど、すぐになじむよ。
男の言いぐさが、ひどくリアルに女の鼓膜に伝わった。

わかりました。協力します。仕方ないです。
女がしょうしょう投げやりにそういったのは。
男が自分から率先してベンチに腰かけて、スラックスを引き上げていったから。
老紳士は男の動きに合わせるように、彼の足許にかがみ込んで――長靴下のうえから男の脚を咬んだ。
お互いの動きがひとつになって、息が合っているのがはた目にもわかった。
このひと、相当慣れている――
ためらう女の怪訝そうな視線を受け流して、男は薄笑いさえ泛べて吸血鬼の欲望に応じてゆく。
ストッキングのように薄い靴下は、這わされた唇の下でみるみるうちにくしゃくしゃになって、ブチブチと裂け目を拡げてゆく。

だいじょうぶですよ。お隣にどうぞ。
男に促されるままに、女もベンチに腰を掛けた。男とすこしだけ、距離を保って、それでもすぐ隣に、ピンクのスカートを穿いた腰を落ち着けた。
ひざ丈のスカートのすそからは、黒のストッキングに包まれた肉づきのよいふくらはぎが、にょっきりと覗く。
薄手の黒のストッキングに透ける女の脛は、ジューシィなピンク色を滲ませていて。
はた目にもひどく、美味しそうに映った。
欲しがるのも、無理はないよねぇ。
同僚の囁きに、つい頷いてしまったのは――いったいどういうことなのだろう?
吸血鬼を受け容れて、自分の血を吸わせてしまうほど、果たして私は心の寛い人だったの?
あっ、唇が吸いついて来た・・・っ。

わずかな唾液を帯びた分厚い唇が、ストッキングを穿いたふくらはぎを、ヒルのように這いまわる。
生温かくねばねばとした唾液が、薄地のナイロン生地を通して素肌にしみ込むのを、女は歯を噛みしめて我慢をした。
隣の男は寄り添うように彼女の片方の肩に手をかけ、もう片方の手は女の手を励ますように握りしめていた。
掴まえられているみたい――きっとそういう意図もあるのだろう。
そうは思いながらも。
どうやら少し変態のケがあるらしい吸血鬼が、もっとストッキングの舌触りを愉しめるようにと、時折脚の角度を変え始めてやっている。
そんな仕草をするなど、屈辱以外のなにものでもないはずなのに――
ぴちゃぴちゃ。くちゃくちゃ・・・
唾液のはぜるいやらしい音を洩らしながら。
吸血鬼はストッキングを穿いたOLの足許を辱める行為に熱中し、
女は息をつめて、脚に通した礼装をくしゃくしゃにされて、じょじょにずり降ろされてゆくのを見守りつづけ、
男は女に寄り添いながら、ほのかな交情をわきたたせはじめたふたりを、サポートしつづけていた。

どうぞ、咬んでもいいですよ。
女は思い切って、声をかける。
自分の足許にすがりついた白髪頭は、それには応じずに舐めつづける。
女は思い切って、もういちど声をかける。
お願い、ストッキング破ってちょうだい!
傍らの同僚がビクッとするのが、妙に楽しい。
彼が横顔を見つめるのを完全に無視して、
ストッキングを破りながらチクチクと咬み入れられてくる牙が皮膚を冒すのを。
女は小気味よいと感じはじめていた。

彼女、頭の悪いひとでは、ないんだろう?
吸血鬼は男に、話しかける。
女の応えは、ない。
提供可能な血を吸い尽された彼女は、同僚にもたれかかったまま、気を喪っている。
自分のまえで気を失うということは、「血をいくら吸い取ってもかまわない」という意思表示をしたのと同じ。
だから、気絶した相手から血を全部吸い尽してしまうのは当然の権利だし、
仮にそうされても文句は言えないのだ――と、彼らは言い張っていた。
まあ、血を吸い尽されたうえで文句を言うとしたら、すでに吸血鬼になってしまっているわけだけれども・・・
彼らも競争相手をむやみと増やすのは本意ではないので、今夜の彼女が最悪の結末を引き出さずに済んだのも、そういう利害に由来するのに過ぎないのだが。
彼女は頭、悪くはないですよ。むしろ、賢いほうですよ。
よく気の回る同僚なのだ、と、男はふだんの彼女の仕事ぶりを説明した。
ちょっとぶきっちょなところは、あるけどね。
そこはあんたも、ひとのことは言えないだろう。
吸血鬼にそう言いかえされて、「傷つくなあ」とはいったものの。
彼女が気絶しちゃったのは、彼女がばかだからじゃなくって・・・気前が良すぎたか、あんたに同情しすぎたのか、そのどちらかだから――と、同僚のことをかばうことは忘れなかった。

この子は、処女だ。たしかにいい子だぞ。
吸血鬼は吸い取った血を滴らせながら、そういった。
街灯に浮かぶ鉛色の横顔に、撥ねた血潮をテラテラと光らせている。
黒マントの下に着込んだ真っ白なブラウスも、赤黒い血のりを毒々しく、輝かせていた。
あー、あー、せっかくの晴れ着が、台無しですね。
いつものことだ。
吸血鬼は吸い取ったばかりのうら若い血を、手の甲でむぞうさに拭った。
女は、黒のストッキングを半ばずり降ろされながらも、まだ脚にまとっている。
男は女の足許に手をかけて、破れた蜘蛛の巣のように裂けたストッキングを、たんねんに引き剥がしにかかっている。
男が穿いている薄地の長靴下さえ欲しがる相手だった。
彼女の足許からストッキングをせしめる行為をしているあいだに彼女が目覚めないことを、彼はひそかに祈った。
ストッキングを抜き取られた女の脚が、薄闇のなかで眩しく浮かび上がる。
送っていってやれ。
吸血鬼がそういうと、男はもちろん、と、頷き返す。
しかしあんたら、案外お似合いなような気がするな。
若い男はいつかどこかで似たようなセリフを聞いたような気がしたが、あえて深く考えようとはしなかった。

この間招んだ両親は、すべてを知りながら息子の招きに応じた。
父さんは自分の息子と同じ薄い靴下を、久しぶりに穿くんですよといいながら脚に通して、真っ先に血を吸い取られて気絶した。
だんなを見捨てて逃げたりはしないよな?
そう話しかけられた母さんは、恐る恐る頷くと。
若いころそうされていったように、肌色のストッキングの脚をばたつかせながら咬まれていって。
さいごはストッキングを片方だけ穿いた脚を足摺しながら、スカートの奥に割り込んでくる陽灼けした逞しい腰を、どうすることもできなくなっていった。
それを眺めている僕は、久しぶりの親交をあたため合う両親のことを、誇らしく見守りつづけていた――ひと晩じゅう。

そして今は。
もしかすると結婚相手になるかもしれない同僚のOLが、むざむざと吸血鬼の餌食になる手助けを買って出て、
彼女もまた持ち前の気前の良さをみせ、体内をめぐる血液をたっぷりと、血に飢えた男の渇きを癒すためにプレゼントしつづけた。
きっとこの関係は、どこまでも続くのだろう。
彼女のブラウスが公園の泥にまみれ、スカートの裏地やずり落ちたストッキングに初めての血が伝い落ちる日は、そう遠くないような気がした。
前の記事
ストッキングを履く女子校。
次の記事
オリのなかのウサギ。

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/3255-48d76f3d