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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

意地悪な継母 紳士な吸血鬼

2016年02月15日(Mon) 06:58:39


昔の女学生みたいに、黒のストッキングを履いて。
町はずれのお邸に、週に一度お邪魔することになった。
処女の生き血を、吸われるために――



私は、もらわれっ子。
両親が急にいなくなって、叔母夫婦に引き取られた。
そこには一歳年下の女の子がいて――ことあるごとに、差別をされた。露骨なくらいに。
たまたま通っているのが同じ学校で・・・だから、今までと同じ学校に通わせてもらえたけれど。
街が吸血鬼の支配を受け容れて、血液の提供を義務づけられてしまうと。
叔母は躊躇なく、私一人を指名した――

毎週行くのよ。そこで血を吸われておいで。
麻由を行かせるわけにはいかないから、あなた一人で行くのよ。よくって?
よくって?もなにも・・・断れるはずはなかった。
すべては、この人たちに握られてしまっているのだから。

その日だけは、みんなが登校する朝に、私だけが行先を違えていた。
紺のハイソックスを通した脚が向かうのは、街はずれの古びたお屋敷。
吸血鬼は、そこに棲んでいるという。

お入り。
訪いを入れた私を、それは冷ややかに。
その老人は昏(くら)い瞳で、じいっと見つめてきた。
恥ずかしくなるほどまっすぐに、見つめてきた。
これが私の血を吸う相手――忌まわしい想いを抱えながら、私は相手の視線を見返していた。
男の無表情からは、冷ややかな欲望しか伝わってこなかった。
こんなひとに・・・父さんと母さんから受け継いだ血を、啜られるのか――
いまさらながら、無念さがこみ上げてきたけれど。
私は悔しさを押し隠して、おじゃまします、とだけ、いった。

“儀式”は、すぐに済んだ。
紅茶でも飲ませてやろうかと思ったけれど。
わしがいくらもてなしてやったところで、あんたのほうで落ち着かんぢゃろう。
だから、さっさと済ませようか・・・
男はそういうと、私を狭いお部屋に連れ込んで。
じゅうたんの上に、腹ばいにさせた。
いきなり首すじは、怖いぢゃろうからな。
下手に動かれて仕損じると、制服が台無しになるでのう。
男の言いぐさはひどくリアルで、制服を汚してしまう――という身近な恐怖に、私は素直になるしかなかった。
代わりの制服を買ってほしいという私に、叔母がどんな顔をして対するのか。
そんな想像のほうが、血を吸われる恐怖よりも身近に思えた。
男の口調が少しでもからかい言葉だったら、私は耐えられなかっただろう。
けれども男は淡々と、呟くだけだった。

男が狙ったのは、ふくらはぎだった。
男の呼気が、足許をよぎった瞬間――さすがに恐怖に震えた。
けれどもつぎの瞬間、太ももと足首とを静かに抑えつけられて――
男は、ハイソックスを履いたままのふくらはぎに、唇を吸いつけてきた。
聞かされておらなんだか。許せ。わしの愉しみぢゃ・・・
男はそう言うと、さも愉し気に、私のハイソックスをよだれで濡らしはじめていた――
校名のイニシャルを飾り文字にあしらった、制服のハイソックスを・・・
いいようにもてあそばれて――
いままでの学校生活までも、けがされるような気がして。
恐怖と屈辱に身を固くして、私は男の不埒なあしらいに耐えていた。
やがて。
圧しつけられた唇の両端から覗いた二本の牙が、ハイソックスのうえからあてがわれて。
ふくらはぎのあたりを、チクチクと刺して、うずめ込まれていった――

チュウチュウと音を立てて吸いあげられる、私の血――
父さんと母さんからもらった血を、こんなふうに辱められるなんて。
私は人知れず涙にくれながら、脚を咬まれつづけていった。
決して相手のまえでは、涙を見せまい。そう誓いながら。

ひとしきり、私の身体から血を吸い取ると。
男は身を起こし、私の身体をじゅうたんの上にころがして、やおら首すじに咬みついて来た。
もう、どうにでもされてしまえ――
自棄になった私は、血を吸い取られてゆくあいだじゅう、目を見開いて天井を視つづけていた。
牙を引き抜くとき。男は意外なことばを、口走った。
すまないね。ありがとう――と。
節くれだった大きな掌で、頭を撫でてくれさえした。

起ちあがろうとしたが、手足に力が入らない。
その場にすとんと、ぶざまに尻もちをついた私のことを、男は手を引いて、助け起こしてくれた。
すこし、ゆっくりしていきなさい。いきなり動いてはいけない。
お紅茶を淹れてあげよう。もう、むたいなことは、しないから。
血を吸っているとき以外、男はむしろ親切だった。
少なくとも、叔母よりは。
叔母は私の受けている危難など気にも留めずに、いまごろはきっと、洗濯物やアイロンかけに熱中しているはずだ。

来週も、水曜に来なさい。こんどはあんたの、妹さんの番だね?
叔母が予期した通りのことを、男は私に訊き、私は叔母に言い含められた通りのことを、答えていた。
イイエ、来週も私です。
そうすると、妹さんはいつ来るのだね?
毎週、私がお相手します。
妹をかばっているいいお姉さんに、見えただろうか?
ちょっとだけ、不安に感じた。



わしに逢いに来るときには、黒のストッキングを履いて来なさい。
脛の透ける、薄いやつをね。
きっとお母さんが、用意してくれるはずだから。
わしがあんたの脚を、どんなふうに愉しむか――もうじゅうぶんに、わかったろう?

男のおぞましい頼みごとを、断るすべなどなかった。
叔母でさえもが、私の背中を押して。
早く行きなさい。あちらがお待ちかねなんでしょう?
ストッキングなら、何足でも用意してあげるわよ。
そういって登校を急かす叔母の白い顔には、皮肉な笑みが秘められていた。

――アナタ、ソンナ嫌ソウナ顔シチャッテ。
――本当ハモウ、アイツノ毒気ニ当テラレテ、愉シンジャッテイルンジャナイノ?
――親タチニ似テ、イヤラシイ子ネェ・・・

薄いストッキングの脚で、街を歩くとき。
通りかかる人たちの視線が、気になっていた。
薄いナイロン生地ごしに、スースーとそらぞらしくよぎる冷気が、その想いを増幅させた。
黒のストッキングの女学生なんて、今どきほとんどいないはず。
紺のハイソックスの同級生たちと肩を並べながらも、彼女たちがいちように、私の足許を見ないようにしているのを、私は気配でありありと感じてしまっていた。
麻衣ちゃんが、黒のストッキング履いてる。
それがどういうことを意味するのかを、みんなわかってしまっていたから――

週に一度訪れる私に、男はむしろ優しかった。
処女の生き血を啜られるという、おぞましいばかりのはずの想いをしに来た私を気遣って。
暖かい部屋に招き入れ、
ゆったりとしたソファに、くつろがせてくれて。
香りのよいお紅茶を、淹れてくれた。
叔母と私との関係は、もうすっかりわかっちゃっているみたいだった。
なにも言っていないのに。すべてを察してしまっていた。

家には早く帰りたくないのだろう?だったら夕方まで、此処にいるといい。
あんたの昼食は用意する。なんなら、勉強も教えてやろうか?
男は怖ろしく博学で、おまけに教え上手だった。
私はお屋敷に来るのが怖くなくなり、むしろ楽しみにするようになった。
さいしょのうちこそ、血を吸われたりしなければ、もっと良いのに・・・と思っていたけれど。
男がせつじつに血を求めてくるのをむげにする気にはなれなくなって。
脚に通した黒のストッキングを、みるかげもなくなるまでチリチリに咬み剥がれてしまうのだった。
そのうちに。
彼が好む黒のストッキングを、ウキウキとして脚に通して、
素肌を咬まれるのはもちろんのこと、大人びた装いをしわくちゃになるまで舐めつづける行為すら、さほどいとわしいものに感じられなくなっていた。

あなた、変わったわねえ。
黒のストッキングを履いて出かけてゆく私をみて、叔母は怪しむようにこちらを窺う。
そんなことないです。行ってきます。
交わされる会話はいつも、チクリチクリとした嫌味で終わる。
そんなやり取りは、早く切り上げたかった。
若い身体から血を吸い取って、私を蝕んでいるはずの男のほうが、ずっと私に対して親身に接してくれた。
顔色のよくないときには、自分の欲求を我慢して、まったく血を吸わないときさえあった。
そういうときには私のほうから、指定外の日に連絡を取って、埋め合わせをした。
ふだん着のスカートの下に、黒のストッキングを履いて。
その時分には、もう――黒のストッキングで街なかを行き交う女子は、前ほど目だたなくなっていた。
クラスの子たちのなかのなん人かは、私と同じ黒のストッキングを履いて、
それぞれべつのお相手の棲む家を、訪問するようになっていた。

ここの家に住みたい。いつかせつじつに、そう願っていた。
理不尽な差別とかえこひいきとか、そんなもののない世界に。
このひとはたしかに、血を吸うけれど。
ストッキングやハイソックスの脚が大好きな、変態さんだけど。
ずっと私のことを気遣ってくれ、大事にしてくれる。
血を吸っちゃうくせに、身体の調子の心配まで、してくれる――
わずかな身の回りの品だけ持って、いつかこのお屋敷に“亡命”したい。
私はひそかに、そう願い始めていた。



あたし、ついていったらダメ?
ひとつ年下の従妹が、そういって私の横顔を窺ったのは。
叔母の留守のときのこと。
自分の母親が見せつける、露骨なえこひいきを、彼女は決して快く思っていないのは。
申し訳なさそうな顔色でいつも察していたし、
叔母のいないところでは、2人は意外に仲が好かった。

いつもお姉ちゃんだけで悪いと思ってるし・・・それにこのごろお姉ちゃん、楽しそうだし。
あたし、ひとりで置いてかれちゃってるみたいで。
家のなかではもっぱら主役の従妹だったけれど。
学校では、引っ込み思案な性格である彼女のための活躍の場は、ほぼなかった。
しっかり者の万年学級委員である私のことを知っているクラスメイト達はだれもが、
「ほんとうに姉妹なの?あっそうか・・・」
と、勝手に納得するしまつだった。
そのなかのなん人かは、私と同じように血を吸われるようになっていたし、
なかには2人ほど、曜日を変えて同じお屋敷に通い詰めている子もいた。

あたしも連れてって・・・そうせがむ従妹に、
そんなこと言ったら、お母さんに叱られちゃうよ――
従妹に向かってのときだけは、叔母のことを「お母さん」と呼んでいた。

「進展」は、意外にすぐに訪れた。
来ちゃった。
さきに学校に行ったはずの従妹が、目の前にいる。
私と同じ黒のストッキングを履いて、男の棲むお屋敷の門の前で。
公園のおトイレで、履き替えてきたの。
そういう従妹に、
さいしょのときは、ハイソックスでもよかったのよ。
私の苦笑に合わせるように、従妹はイタズラっぽく白い歯をみせた。



行ってきます。
黒のストッキングを履いて出かけていく私に、叔母は横っ面でこたえた。
行ってらっしゃい、なんて、もちろん言ってくれない。
聞こえた・・・といわんばかりに、うるさそうに顎をちょっとだけ上向けて応えるだけ。
そんな態度にも、もう慣れた。
行ってきま~す。
私より一歩おくれて、従妹がリビングを覗き込んだ。
叔母は別人のようににこやかな顔になり、「気をつけてね」と、従妹のほうだけを向いて――ぎょっとして目をむいた。
あなた・・・その脚・・・
従妹の脚は、姉の目にもなまめかしい、薄黒のストッキングに透けていた。

いったい、どういうことなのよっ!!
問い詰められたのは、私だった。
答えは即座に、叔母の背後から返ってきた。
いっ・・・いつの間に??
仰天した叔母のまえ、男がうっそりと、立ちはだかっている。

あんたのお嬢さんは大人しいようで、なかなかの発展家だな。
学校に履いて行くハイソックスも咬んでみたいとねだったら、夕べお招きを受けたというわけさ。
なあに、心配しなさんな。ほんの少し、軽い貧血ていどにしか、吸っていないから。
でもね、いちど招かれた家には、こちらは気が向けばいつでも、入り込めるのでね。
だからこうやって、お邪魔をした。
お嬢さんが、「お姉ちゃんとおそろいのストッキングで家を出たい」って宣言したから、きっとひと悶着すると思ってね。
お母さん、あまり世話をやかせなさんな。
こちらがその気になったなら。あんたの首すじを咬むのは造作のないこと。
それに、処女には遠慮をするが、ミセスの女性の場合、べつの愉しみもできるのがわし達だからね。
もっとも・・・あんたがそちらをお望みでも、わしとしては願い下げだがね。
姉娘のほうは、いただいていく。
あんたに養育する資格はないからな。
ただし、学費は全額、払ってやりなさい。
どうせ、この子の親からせしめた財産が、おつりがくるほどあるのだろう?

二の句も告げずにいる叔母に
とどめを刺したのは、従妹だった。
あたしも、お姉ちゃんといっしょに暮らしたい。

その後私たち姉妹がどうなったか?
それは、ここまで読んでくれた皆様の想像のままに。
でも今私は、とても幸せです。
愛する人と、ひとつ屋根の下で暮らしていて。
私はそのひとのすべてを許し、受け入れていて。
そのひとは私の献身を、心から感謝してくれているから。
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