FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

町工場の兄弟 4 ジュンの家。

2016年02月27日(Sat) 11:25:00


いいよ。トシヤとも、初キス済ませたから。
目をつむって差し出された唇に、欲望のまま熱い吐息を含ませてしまうと。
女はいともあっさりと、その行為のくり返しに応じてきた。
うふっ。一歩前進♪ トシ、悪く思うな。
男としての勝利を得る味は、相手が弟の婚約者であっても変わりはない。
いや、むしろ増幅するとは、思ってもみなかった。
俺はこの女を、モノにしたい。
最近つのりはじめてきた想いが、いま爆発寸前まで、昂りつつあった。
それでもそのいっぽうで。
せっかく初めてできた女を、弟から奪ってはならない。
そんな想いもまた、兄としては当然ある。
どっちなんだよ――自分で自分に突っ込んでおいて、答えがみつからない。


俺のキスが強烈だからって、トシヤとの想い出も忘れてくれるなよな。
いい気な言いぐさを、「当り前じゃない」と、手厳しくはね返しながら。
それでも手慣れたキスが求めてくる強さに、不覚にも夢中で応えてしまっている。
やっぱりこのひと、女殺しだ。
弟の婚約者という縛りがあっても、お互いにこれなのだ。
妹の加奈がいともかんたんに堕ちたのは、無理もない。
ついでに乳首も舐めさせて。
つい悪のりをしてしまっては、「ダメ!」と拒否されているあたりが、この男らしいけれど。
そのあとに性懲りもなく、スカートのなかに手を入れてこようとしてきた。
かろうじて自制して振り払ったけれど。
順序が逆だったら、もしかしたらショーツを脱がされてしまっていたかもしれない。
それをねらって、わざと順序を間違えてきたのか。
問いただしたところで、まともな答えが期待できないのはわかり切っていたので、
敏恵もまた、愚問を投げかけることは控えていた。

脱がされてしまったパンストは、初手からネチネチといたぶられて、あちこち穴だらけにされていた。
穿いてたらかえって、みっともないだろ。トシにも見られたくないし。
そんなもっともらしい言いぐさにつられて、つい脱ぎ捨ててしまったのだが。
あいつ、私のショーツまで狙っていた。
気づいたのは、スカートのすその取り合いをかろうじてはね返したあとだった。
本気で狙う気だったら・・・まんまとせしめられていた。
それなのに。やつはわざと失敗をして、戦利品はパンストだけで満足するつもりらしい。
いったいどうして?
女たらしのくせに、露骨に欲しがったり、さりげなく手を引いたり。
そんな矛盾し合った行動の裏に、弟に対する逡巡を見抜くのは、そう難しいことではなかった。

ありがとうございました。
こっちが恥ずかしくなるほどばか丁寧に、義姉になるはずの女に、ジュンはいつも最敬礼をする。
弟には面と向かって礼を言いにくいから、あんたからうまく、伝えといて。
ジュンはそういうと、敏恵を解放した。
あのばか丁寧な最敬礼。慇懃無礼なわけじゃない。そんな器用な男じゃない。
たぶん半分は、弟への謝罪で頭を垂れているのだ。
そんなもの、すぐにうやむやにするに決まっているのに。
でもたぶん、このひとは私を犯しても、弟への想いは忘れないはず。
たった30分足らずの吸血プレイに応じるなかで、女はそこまでのことを感じ取ってしまっていた。



婚約者が忠実なのを、トシのために祝いたいね。
枕元においた寝酒を引っかけると。
ジュンはふたたび、敏恵の胸に顔を埋めてくる。
いままで敏恵の胸元を覆っていたブラウスは脱ぎ捨てられて、部屋の隅っこにきちんと折りたたまれていた。
ここは、ジュンの棲むアパート。
想像していた通り、たたずまいは古くさくてみすぼらしく、
部屋のなかも、これまた思った通りの散らかり具合。
わずかに畳の覗いた床にハンドバックを置いて、あきれて周囲を見回していると。
後ろからいきなり、抱きついて来た。

裏切らないようにしよう。トシくんのこと、裏切らないようにしよう。
必死でそう言い募るうちに、相手がいったん手をゆるめかけたのを、敏恵は感じた。
だいじょうぶだから。二人きりのときには、さいごまではしないから。
その囁きを信じて、こちらも身体の力を抜いたのは。
半分は、この男の弟想いの部分に、信頼を寄せたから。
半分は・・・欲望に逆らえなくなりかけてきたから。認めたくないけど。
けれども、ブラウスを脱いだのは、自分のほうからだった。
「乳首を舐めたい」とふたたびせがまれて、とうとう断り切れなくなっていた。

きょう、兄貴の家を訪れることは、あらかじめトシヤにも告げている。
というか、トシヤがわざと、敏恵を兄貴のところに行かせたのだ。
加奈ちゃんがずっと具合悪くって、兄貴も「ノドカワ」だから。
でもきょうは工場にお客が来て、支払いとか契約とかで立て込んじゃって、そういうことに使えないし。
ふたりのこと信じているから、行ってきて。

もしもかりに、私がこのひとの信頼を裏切るようなことをしてしまっても。
たぶんこのひとは、許してくれてしまうだろう。
でもそれは、あまりにもムシの良すぎる不当利得なのだと、敏恵は自分に言い聞かせた。
そのギリギリの落としどころが、「乳首舐め」?
だれの乳首とも、ひと味ちがう。いや、ふた味はちがう。
そんな勝手なことをほざいて舌なめずりをする男は、ジュルジュルと聞こえよがしな音をたてて、敏恵の乳首を吸った。



契約で来店をしたお客は、急ぎの用を控えているとかで、手早く手続きを済ませると、
ポンコツになった車を置いて、代車のエンジンをふかしてそそくさと走り去った。

ジュンは意外に顔が広く、ときどきこういう客を拾っては、工場に新たな収入をもたらしてくれる。
兄貴は仕事人としてはどうしようもなかったが、弟の律儀な仕事ぶりは評価されて、
すこしずつではあるけれども、お客がつくようになってもいた。

お疲れさまでした。
お茶出しを頼んだ加奈は来客のためか、いつもよりいいカッコをしている。
真っ白なニットに、ピンクのミニスカート。ショートの黒髪も、美容院に行ったばかりらしく、きちんと整えてくれていた。
姉の敏恵はいつも、都会のオフィスか街なかの大通りに似合いそうな、キリッと隙のないスーツかワンピース姿。
それにくらべると加奈はもっとカジュアルで、ふんわりとした感じの服装を好むようだった。
そのふんわり感が、いまのトシヤには癒しにさえ感じられる。

張り切り過ぎじゃない?お客さん、15分で帰っちゃったよ。
初対面の客を苦手とするトシヤも、十分気張り過ぎていたのか、拍子抜けした安ど感が満面に出ていた。
余りのコーヒーでごめんなさい、といって淹れてくれたコーヒーも、とびきり旨かった。

コーヒーぐらいで、ごめんなさい。
小さな声を重ねて、加奈が言う。振り向くと、申し訳なさそうな顔をしていた。
そう、いまごろ兄貴は、自分のねぐらに敏恵をひき込んで、コーヒーよりももっと熱い飲み物に、舌鼓を打っているはず。
シンコクに考えないほうがいいよ、とだけ言って、トシヤは仕事に戻ろうと工具に手を伸ばす。
その手に、白くて小ぶりな掌がおずおずと重なって、工具を持とうとする手を止めさせた。
もう少し、いいじゃないですか。コーヒー、もう一杯淹れますから。
あんまり飲んだら、茶腹になっちゃうよ。
笑って取り合わないでいたら、加奈は不意に悲し気な目になって、こんどはトシヤのまえに立ちふさがった。
ジュンがごめんなさい。
あまりシンコクに構えるなって。そう言おうとしたら、加奈がいきなり抱きついて来た。

どうやって受け止めたものか――ただいえることは、それはまずい。マズイよ・・・
持っている理性を振り絞って、抱きついて来た腕を振りほどく。
落ち着いて!
加奈に対するのと同時に、自分にもそう、言い聞かせる。
もっともっと、ややこしいことになっちゃうぜ?
ただでさえおれ、ヘンなヤツだから。
きみの姉さんのこと兄貴に襲われると、変に昂奮するんだ。ぜったい・・・変だよね?
ヘンなヤツなんだから、おれにあまりかかわらないほうがいい。
トシヤは自分を「ヘンなヤツ」と片づけることで、加奈との間合いを作ろうとした。

加奈は姉譲りの大きな瞳を見開いて、トシヤを見る。
怜悧で美しい姉の瞳の色とは別な、もっと穏やかで優しい色が、そこにあった。
それ、姉からききました。あたし、変じゃないと思います。
姉を愛しているからそう感じるんだって。うらやましいかもしれません。
でも、女の側だと、そうは感じられないんです。
姉にジュンを取られちゃうみたいで――あたしはたぶん、素直に姉貴孝行は、できそうにない。

おれは、兄貴に婚約者を犯されかけている。そういう意味では被害者だけど。
でもおれなりに納得して、状況を受け容れてしまっている。
でこのひとは、うちの兄貴に血を吸われたうえに、実の姉と浮気までされてしまっている。
状況を黙認しているおれだって、このひとから見たらどう映っているのか・・・
いつも軽い足取りで気軽に工具を取り、お茶を淹れたり買い物してきてくれたり、
みんなへの愛をさりげなく、行動で表してくれる人――
無邪気な明るさの裏側に、こういう心理が隠れていたのか。
やっぱりおれは、なんにもわかっちゃいない。これじゃ兄貴と変わらない。女をただ無自覚に、傷つけているだけの男――
しみじみとした後悔が、胸をかんだとき。

シンコクに考えないほうがいいよ。

はっと前に向き直ると、加奈はイタズラっぽくほほ笑んでいた。
だいじょうぶですよ。ふだんはいい子にしていますから。
でも時々ね、言ってみたくなるんです。そういうときには、つきあってやってくださいね。
あのひとたちがいないとき限定になると思うけど――

なにごともなかったように給湯場へと背中を向ける彼女の、ミニスカートの下から覗く生足が眩しかった。
あっ、それと。
加奈はいきなり振り向き、トシヤの視線が自分の後ろ姿に注がれているのを確認すると、
そんなことはあっさりと黙殺をして、いった。
ガマンできなくなっちゃったら、あたしのこと犯してくださいね。
こんど、いつか、きっと。
前の記事
おわび。
次の記事
町工場の兄弟 3 初キス。

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/3277-6dd32a1e