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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

不味い。

2016年03月30日(Wed) 07:49:06

不味い。
男の放った第一声は、はなはだ無礼だった。

家のなかにさ迷い込んできたその吸血鬼に、
夫婦ながら首すじを咬まれて。
血を抜かれて身じろぎひとつできなくなった、わたしの前。
抑えつけられた首すじに、やつはがぶり!と食いついて。
ひとしきり妻の生き血を吸い取った挙句、そう言ったのだ。

吸血鬼は人妻の血を吸うと、例外なく犯すという。
夫の目のまえで遂げられた屈辱の儀式を、妻は歯噛みして耐えた。


くやしいったらないわっ。もうっ!
あんなにひとの血を吸い取っておいて、「不味い」だなんて!
妻はプンプン怒って、半裸に剥かれた身を起こし、
身づくろいを、というよりもシャワーを浴びに浴室に駆け込んだ。
犯されたことなど、犬に咬まれたほどでもないらしかった。


それから妻の精進が始まった。
エステサロンに通ったり。
スポーツジムに通ったり。
血が美味しくなる・・・と思われるあらゆることに手を出して。
ある晩勤め先から、嬉々として帰宅してきた。

やったぁ~!美味しいって言わせたっ!
飛び跳ねるばかりにしてはしゃいだ妻の首すじには、新たな咬み痕が。
真っ白なブラウスに、バラ色の血をしたたせたまま。
スケスケのパンストを、ブチブチに咬み破られたまま。
でもそんなことは、惜しくもないらしい。
美味しいって言わせたっ!
美味しいって言わせたっ!
はしゃぐ妻の背後には、あのとき妻をモノにした、あの男が。

もう少し、お邪魔をするよ。夜道を歩く奥さんが、あまりに魅力的だったのでね。
こないだのひと言は、謹んで訂正させていただく。
はい、どうぞ。
妻の名誉回復に機嫌を直したわたしは、つい応じてしまっていた。
なにかがおかしい――そう感じながらも。
じゃあごゆっくり。
わたしはそういって、書斎に戻る。
帰宅そうそうの妻のスーツ姿を土間に抑えつけ、のしかかってゆく吸血鬼に、妻を独り占めにさせてあげるため。
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