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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

意識の変容。 2

2016年04月23日(Sat) 17:19:23

勤め帰りの道ばたで。
わたしは初めて吸血鬼に襲われて、身体じゅうの生き血を、吸い取られてしまっていた。
血管が空っぽになって、初めてわかる彼らの気持ち。
きっと・・・こんな四十男の血でさえも。
とても美味しく頂戴したのだろうって。
不思議なくらい、ひしひしと身に沁みて、実感していた。

わたしの血を吸い取った吸血鬼は。
ずっと年配の、みすぼらしい男だった。
わたしの身体から抜き取ったばかりの血潮を、口許から滴らせて。
それを行儀悪く、手の甲で拭っていった。
手の甲に着いた血を、なおも意地汚く、旨そうに舐め取って。
はじめて得心がいったように、フーッと重い溜息をついた。

少しは愉しんでもらえたのかな。
闇夜のなか、うつろに響くわたしの声に。
あぁもちろんだ。たんと、たんのうした。礼を言うよ。
男は案外と、人懐こい親しみを見せてくる。
力づくでわたしのことを抑えつけて、
情け容赦なくうなじを抉ったときの強引さが、なりをひそめたのは。
味わい尽したわたしの血から得た、ぬくもりのおかげなのだという。

わたしはもう、死んじゃっているのかな?
滑稽な質問だと承知しながら、そう訊いたのは。
ちっともそんな実感がわかなかったから。
抑えつけられて――力づくで、血を抜き取られて――その場に尻もちをついたまま、吸い尽されていって――でも意識はずうっと、連続していたから。

そうさな。半吸血鬼ってとこかな。
男は目を細めながら、わたしをまともに見つめてくる。
どういうことでしょう?
大概の場合はな、おれたちは寸止めにするんだ。
血を吸った相手をみんな吸血鬼にしちまうとさ、競争相手が増えるから。
だから、あんたは人間のままさ。
でも、血の足りない身体にされちまったから。
血を欲しがるやつらの気持ちはわかる。
だからこんどは、俺たちの仲間になって。
血を欲しがる俺たちのために、むしょうに血を与えたくなってくるんだ。
そうそう。
ちょっとなら、血を吸うことだってできちまう。
この街に来て間もないね?あんた。
でも、いちど血を吸われたら、もうこの街の人間さ。
好きなだけ他人を襲って、血を吸うがいい。
なんなら、わしの女房を貸してやろうか?
齢の差婚だから、あんたとそう変わらん年恰好をしているぞ。

自分で血を吸いたい というよりも。
いまのわたしの本能は。
渇くものに血を与えたい。 そんな気持ちのほうが、強かった。
そう、この男のいうように。
血を欲しがる男のために、むしょうに血を吸わせてやりたくなってきたのだ。

もうじゅうぶんに、喉は潤ったのかね?
わたしは彼に、訊いていた。
わたしの血を吸い取った、本来なら仇敵と呼ぶべきはずの彼に。

そうさな。まだまだ足らんな。なにしろ、禁欲が長かったからねえ。
このごろはすっかり、よそ者がこの街に越してくることがなかったもんでな。
厚かましいお願いだと百も承知でいうのだが。
あんた、奥さんと娘さんといっしょに、暮らしているね?
よかったら。あんたの奥さんと娘さんを、紹介してくれんかな。
若い女の生き血がわしらの好物じゃということは。
向こうの世界でも、知れておるぢゃろ・・・?
あんたはこのまま、わしを家に連れ帰って。
そう――家ン中に入れてくれさえすればいい。
あとはわしが、うまくやるから。
あんたは家族を売ったことにはならないのだから。
あんたがこれからすることは、崇高な使命。
自分の血を吸い取った、本来仇敵どうぜんのわしに、
ご家族のうら若い、貴重な血をあてがいたくてすることなのだから。

さいごのひと言に、免罪符を見出したような気がして。
わたしは気もそぞろに、長い道草を終えることにした。
これから帰宅する。
新しい友だちを、伴って。
妻と娘の生き血を欲しがっている新しい友だちを、伴って。

ほんとうは・・・あんたじゃなくって、
もともとあんたの嫁と娘が目当てだったのさ。
男はあっさりと白状したけれど。
むしろその正直さが、嬉しかった。
それはそうだろう。
脂の乗り切った、四十前の人妻の血と。
まだ処女であるはずの、十代の若い娘の血とが。
彼の欲望を満足させるために、提供されることになるのだから――

かまわないですよ と、わたしはこたえた。
いまのわたしは、あなたに満足してもらうために
妻と娘の血を吸わせてやることしか、もう頭にないのだから。
ふたりの生き血が、あなたの気に入るとうれしい と。
異常な願望を、本音を込めて語ることは。
異常な歓びを生み出すものだと。その時初めて知った。


ひいいいいっ。
わたしの目のまえで。
来客にお茶を出そうとして後ろを向いた妻は。
わずかな隙を突かれて、男に背後をとられていた。
いきなり首すじを咬まれた妻は。
目を剥いて抗って。
抗う手をわたしに静かに抑えられて。
この街のことはうすうす気づいていた彼女だったから、
わたしの首すじに、自分がつけられているのとおなじ咬み痕を見出すと。
すぐにあきらめたように、身体の力を抜いていた。

ちゅうちゅう・・・ちゅうちゅう・・・
妻の生き血を吸い取ってゆく、生々しい音が。
男の卑猥で性急な喉鳴りが。
わたしの鼓膜を、妖しく浸す。
未練がましくすり足をしながら、吸血に耐える妻。
そのすり足さえもが、じょじょに緩慢になって。
やがて、動きを止めて、静かになる。
すべたがわたしのときと、まったく同じ経緯。
やつは妻の着ているブラウスに、吸い取った血潮をわざとぼとぼととほとび散らせて。
口許についた妻の血を、妻のスカートをめくってあらわにしたスリップのすそで、拭き取って。
これは俺の獲物なのだと言わんばかりに、わたしに満面の笑みを、投げてきた。
わたしはさっき夜道で放ったのと同じ、うつろな声で、応えている。
おめでとう――と。

肌色のストッキングを穿いた妻の脚を、男は意地汚く舐めつづける。
クチャクチャ、ピチャピチャと、下品な音をたてながら。
スケスケのパンストって、都会っぽくてエエなあ。
そんなふうにひとりごちる男の顔つきは、みるからにただの、スケベ爺いだった。
けれどもわたしは、卑猥にあしらわれる妻の様子に、
不覚にも目線を釘づけにしてしまっていて。
男をやめさせようとは、夢にも思っていなかった。

欲情まみれの唇をぶつけるように這わされて、
妻の穿いているストッキングは、みるみるうちに咬み剥がれてゆく。
スカートの奥に、手を入れられて。
みすぼらしくチリチリにされたパンティストッキングを、ずりずりと引きずり降ろされて。
せしめたパンストをポケットに無造作に押し込むと。
なんだったら、あとは座をはずしてもらってもかまわんですよ。
男は言外に、立ち去れと告げていた。

そのまま立ち去るのが、平均点。
強いてその場にとどまって、みすみす妻を汚されるのを目の当たりにして。
昂ぶりのあまり失禁してしまうのが、平均以上。
立ち去ったとみせて、その実隣の部屋からのぞき見をして、
彼が妻を相手に欲望の限りを吐き散らした後、黙々と後片付けをするのが、満点。
わたしの行動は、満点だといってもらえた。
あと始末を気にしたのは。もうじき娘が、塾から戻ってくる刻限だったから。

妻はさすがに、わたしと目を合わせようとはしなかった。
なにしろ、気持ちはこばんでも、身体が反応してしまうのはどうしようもなくって。
吸血鬼相手にあらわにしてしまった、そのどうしようもない反応を、
わたしが昂ぶりもあらわに見届けてしまったことを、彼女は意識していたから。
娘のまえに状況を隠ぺいする役割が、彼女に理性を取り戻させた。


ひどいっ!ひどいっ!やめてえっ。
娘は抱きすくめられた猿臂の中、目いっぱいの抗議を尽くしたけれど。
男を翻意させることは、ついにできなかった。
さいごに首すじをがぶりとやられると。
ああーッ!!
断末魔のような声をあげて、そのまま白目になっていた。
あお向けになって、だらりと伸びた両手両足に、己を重ね合わせていった男は。
ちゅうちゅう、ちゅうちゅうと音を立てて、
妻のときよりも貪欲に、生き血を啜り取ってゆく。

娘の受難を無念そうに見つめる妻は。
半分は無念さから。半分は嫉妬から、眉をしかめていて。
その傍らで妻を窺いながら、娘の受難に昂るわたしは。
妻や娘のうら若い血液で、干からびた血管を潤してゆく男を、
知らず知らず、同種族のものとして、満足そうなまなざしで見守ってゆく。

けれどもね。
妻は血を吸い取られ、犯されてしまったのに。
そこには歓びしか、感じることができなかった。
娘の場合は、処女を奪われることなく、血を愉しまれているだけなのに。
どうしてこうも、むしょうに腹が立ってくるのだろう?
無念そうな娘の歯ぎしりが。声にならないうめき声が。
むやみとわたしの心を、苛んでゆく――

娘のハイソックスも、むざんに弄ばれていった。
気絶した娘の髪を撫でつけながら、妻はうつろに呟いている。
学校のハイソックス、買いだめしておかなくちゃね。
彼女は彼女なりに、主婦らしい気遣いで、吸血鬼に仕えようとし始めていた。


道すがら、行きずりの吸血鬼に血を吸われ、
その吸血鬼と、意気投合をして、
妻と娘とを、引き合わせて、
自宅にひき込んだ、本来仇敵だったはずのその男が、
妻や娘がその身に宿すのうら若い血に酔い痴れるのを、
限りない満足を憶えて、見届けてゆく。
空っぽになった血管が、むやみと疼く夜。
彼らが欲する血潮を、今夜もわたしは与えようとして、
妻も娘も、俯き恥じらいながら、その欲望に屈してゆく――
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