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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

強制デート  ~妻と吸血鬼との交際録~

2016年05月06日(Fri) 08:02:12

めまいとまどろみが去って、開けた視界の向こうにはあの男がいた。
さっきまでわたしの首すじから啜り取っていた血が、男の頬をまだ濡らしている。
服従することが安堵を生むことを、この男に血を吸われることによって初めて知った。
「気分はどうかね」
男はいった。
「最高ですよ」
わたしはこたえた。

この街では、吸血鬼と人間とが共存していた。
遠くの都会から越してきたわたしたちも例外ではなく、
この街の住人として受け入れられるためには、彼らのために血液を提供しなければならなかった。
わたしはそれを受け容れ、事前に相談した妻も、反対しようとはしなかった。
血を吸われた人妻は、例外なく犯される。
そんなルールさえ、知りながら。
もう――わたしたちを受け容れてくれる場所は、ほかのどこにもなかったから。

「あんたの奥さん、手ごわいな。3回めのデートで、やっとキスした」
男はぬけぬけと、そんなことを口にする。
「うちの仲間うちでも、評判になってきたよ。あんたの奥さんの身持ちの堅さ。亭主としては、自慢してもいいんじゃないかな」
男の目には、思うようにならない苛立ちではなく、むしろ称賛の色が込められている。
さいしょにわたしが襲われて、理性をなくしたわたしは妻も襲わせるため、男を自宅に招いていた。
その場で――妻は犯される・・・はずだった。
彼らの流儀では、モノにした人妻は必ずその場で犯すことになっていたから。
「待って!それはやめて!」
生真面目な妻は、頑なな性格をそのまま顔に出して抗い、ついに男を振り切った。
というか、男のほうからあっさりと、手を引いた。
「嫌なら無理にとはいわないがね」
男は妻から吸い取った血が口許に散ったのを手の甲で拭いながら、いった。
「でも、血は時々めぐんでもらうよ。さしあたってはあさって、俺の家に来てもらう」
救いを求めるようにわたしを見つめる妻に、わたしは言った。
「行ってお出で。ぼくは我慢するから。なにが起きても、許してあげるから」
妻は押し黙ったまま――それでもしっかりと、頷き返してきた。

それが最初の、妻と男とのデートだった。
訪問先の男の家で、妻がむざんに犯されるのを予期して・・・わたしは昂奮を感じていた。
抑えても抑えても、勃ってくる股間を、どうすることもできなくなっていた。
なんでだろう?
どうして昂奮なんか、するんだろう?
妻が今ごろ、犯されているというのに?
疑問符でいっぱいのなか、それでもパンツのなかの一物は、苦しくなるくらいに膨張を止めなかった。

その日も妻は、犯されなかった。
噛まれて血を吸われる行為は、目をつぶって許したけれど。
いざことに及ぼうとされたとき、嫌悪感が全身を走って、必死で抵抗したのだという。
妻の強い意志が通じたのか、男はまたも妻を力づくで犯すことを断念した。
それどころか、貧血でふらつく足取りの妻を、玄関のまえまで送ってくれたのだという。
妻が寝(やす)んでしまうとわたしは、彼のところに電話をかけた。
「すまなかったね。またもご意向に沿えなかったみたいで」
すんでのこと、妻を犯されるはずが、必死の抵抗ですり抜けてきた――そんなことのあったすぐあとに、夫が口にするべき言葉ではないことが、すらすらと口から出てきた。
胸の奥をチクリと、針を刺されたような刺激が走る。
男は受話器の向こうで、ちょっと笑ったようだった。
かすかな好意的な響きが、耳元に伝わってくる。
「きみが謝ることはないさ。でも、楽しかったよ。ストッキングを穿いた脚に咬みついて、ストッキングをビリビリ破りながら上目づかいに彼女の顔見たらさ、悔しそうに睨みつけているんだよ。ついつい興が乗って、ひざがまる見えになるまで咬み破っちまった」
男の言いぐさが、ひどく鼓膜に沁みついた。情景をありありと、想像してしまったのだ。

2度目のデートは、それから中2日置いた後だった。
毎日吸ったら、彼女が身体を壊すから。
といって、あまり日を置くとせっかく身体のなかに埋め込んだ毒液が消えてしまう。
せっかくここまでなじんだのだから、また一からやり直しはめんどうだからね。
めんどう――男の言いぐさはわざと真剣味を欠いたものだった。
けれどもその裏側にある想いは本気なのだ――と、夫であるわたしは直感した。
こんどこそ。こんどこそ・・・妻はあの男の女にされてしまうに違いない。
けれどもその日も、妻は無事に帰ってきた。
もちろ ん、したたか血を吸い取られて、顔色は真っ蒼になっていたけれど。
お礼の電話に出た男は、「かけてくると思ったよ」と半ばわたしを揶揄しながらも、語ってくれた。
「今回も、一歩前進。穿いてきてくれた黒のストッキング、自分から咬ませてくれた。びりびり破いてそれから外の公園をおデート。黒だと裂け目が目だつからね。すれ違う人がみんな、彼女の足許見るんだ。彼女、ずーっと俯いていたけれど、とうとういちども自分から帰ろうって言い出さなかったんだ」
義務感の強い妻だった。
吸血鬼に血液を提供するのが義務だと知らされると、首すじを咬まれても、脚を咬まれても、必死で耐えていた。
血液を良くするための食物を熱心に研究して、わたしにも食べさせ、自分も食べた。
中には、嫌いな食べ物もあったはずなのに。妻は、好き嫌いの多いほうだった。
デートの相手がストッキングを破ることを望んだから、彼女のなかでは非礼極まりない行為でも許したのだろう。
派手に破けたストッキングの脚を外気に曝して歩くことを強制されたときにも、自分を制してそれを受け容れたのだろう。

3度目のデートで初めてキスを済ませた。
そういう男に、わたしはいった。
「おめでとう。というか、頑なな妻ですまないね」
「いや、あんたに迷惑がられなくって、感謝している」
「きょうは妻のことを襲わないの?」
わたしはきいた。
デートの翌日、わたしの家に来た彼は、応対に出た妻に「ご主人に会いたい」といった。
あくまで他人行儀で、あくまで知人の家を訪れたときのその家の主婦に対する態度を、一歩も出なかった。
そして、妻をではなく、わたしの血を真っ先に望んだのだった。
彼らは女の生き血を好む習性を持っていた。
だからこそ、真っ先に夫を襲うのだ。
人妻をモノにするのに最大の障害である夫を手なずけてしまうことで、あとがどれほど有利に運ぶのかを、よく知っていたから。
それなのに、彼は妻ではなくわたしを真っ先に選んだことが、なぜか誇らしかった。
働き盛りの血液は、彼の血管をじゅうぶんに潤したに違いない。
わたしの問いに、彼はこたえた。
「もちろんね」

階下におりた男は、台所にいた妻をリビングに呼んで、ソファに座らせた。
わたしはベッドのうえであお向けになりながら、階下でのふたりの行動を、伝わる気配で察していた。
勃ってきた。またしても。
けんめいにこらえたけれど、パンツのなかが窮屈に張りつめてくるのを、どうすることもできなかった。
長い長い沈黙があった。
けれども、わたしが予期したような、ものが倒れる音や妻の悲鳴などは、とうとう聞かれなかった。
「お帰りになりました」
2階にあがってきた妻は、なにごともなかったようにそういって、テーブルに並べられたお皿や茶わんを片づけ始めた。

4回目のデートの帰りは、遅かった。
ドアを開けたわたしは、アッと声を出して息をのんだ。
荒々しく強姦された女が、目の前にいた。
髪を振り乱し、目じりには泣いた痕があった。
ブラウスはボタンが飛んで胸がはだけ、ストッキングは破れ、スカートの裏にはじわじわと、異臭を放つ粘液がからみついていた。
輪姦されたのだという。
さいしょは男が、いつものように妻の血を吸い、キスを重ね、抵抗の意思を奪うとブラウスのタイをほどいていった。
ストッキングを片方脱がされずり降ろされたふしだらなかっこうで、妻は男を受け容れた。
2度、3度・・・くり返される吶喊は、ひどくて慣れていて、いままでなん人もの女たちを手なずけてきたであろうことが、容易に想像できるほどだった。
自分が冷静なのを自分で訝りながら、けれども妻も、不覚にも耽ってしまった。
それくらい、よかったのだという。
それからだった。
男は別室に妻を連れ込んだ。そこには、彼の仲間が5人いた。
その全員に、吸血とセックスとを強要されたのだ。
わたしは妻の手を引いて、玄関からあがらせて、なおも手を引きつづけて――寝室に引きずり込んだ。
我に返ったのは、夜明けだった。
新婚以来、こんなにしつように二人で身体を重ねたことは、かつてなかった。
太陽が黄色く見える朝だった。

やっぱり私、大勢は無理。
妻は男に、そう語ったのだという。
あなたがどうしてもって望むのなら、でもその時はお相手します。
でも、愛人として認識できるのは、あなただけ。
そういうことにしてもらえませんか――?
彼女の意思は、すべて尊重された。

眩暈とまどろみからさめたとき。
開けた視界には、ふたりがいた。
わたしの身体のうえには、男が。
傍らのベッドには、妻が。
わたしたちは床を転げまわったあげく、部屋のまん中で身体を重ね合っていて。
妻はよそ行きのスーツを着て、夫婦のベッドのうえにいた。
「視ちゃったわ。男どうしって、思ったほど不潔じゃないのね」
股間には男の粘液が、生温かくまとわりついていた。
妻の身体の奥深くそそぎ込まれる粘液とおなじものを、わたし自身も愉しむようになっていた。
フフフ・・・と笑う妻は、男の好みに合わせて、ソバージュをかけている。
もはや、公然とした男の愛人だった。夫の公認で交際していることも、周囲のものはみな知っている。
じゃあ、奥さんをいただくよ。あんたの前で。
男はそういうと、夫婦のベッドのうえで妻におおいかぶさってゆく。
「あッ、イヤだわ。主人のまえで・・・そんなのいけない、いけないわ・・・」
妻はそう言いながらも、行為そのものは拒んでいない。
ブラウスを脱がされ、ブラジャーをはぎ取られ、わたしだけのものだったはずの乳房のあいだに顔を埋められ・・・
「ああっ、やらしい・・・やらしい・・・いや・・・あ・・・ん」
媚態もあらわに、小さくかぶりを振りつづける。
ずり降ろされたストッキング。目のまえに脱ぎ捨てられたショーツ。
それらのひとつひとつが、服従の愉悦になって、わたしの網膜を彩った。
彼は、わたしの血も好んでいた。
しつような吸血だった。
歓びのひとときだった。
失血で身じろぎひとつできないほどに血をあさり取られてしまいながら。
むき出しになった股間の昂ぶりを、抑えることができなかった。
「あ、勃ってる。勃ってる・・・」
妻のからかう声色さえもが、わたしをよけいに昂らせていた。
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