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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

公開処刑。

2016年06月07日(Tue) 06:32:33

ひい―――ッ!
妻の金切り声が、あたりに響き渡った。
ここは街の中心街に位置する広場。
頭の上は雲ひとつない空。真昼間だった。
広場に拡がる石畳の上には六畳ほどの畳が敷かれ、
妻はその狭い空間のなかで、立ちすくんでいる。
怯える目線の真向かいにいるのは、薄汚れた老婆。
みすぼらしい着物は、もとの色すらよくわからないほどに垢じみていて、
そのうえあちこちに、かつては血しぶきだった赤黒いシミを点々と散らしている。
そう、この老婆は、吸血老婆。街を支配する長老のひとり。
それがいま、意地悪げな目つきに底知れない欲情をあらわにたたえ、
ヨタ、ヨタ・・・とおぼつかない足取りで、一歩一歩、妻を追い詰めてゆく。
先に血を抜かれたわたしは、解放されきったその六畳間からすこし離れた場所で、
きつい縛(いまし)めの荒縄にぐるぐる巻きにされて、転がされていた。
択ぶほうを間違えた――夫婦ながら後悔した現実を、目の当たりにしていた。

「面白―いっ!」
「奥さん、美味しそ~」
「ダンナも哀れでいいねぇ」
周囲には、群れ集う見物人。吸血鬼の支配に狎れた、この街の住人たち。
それらが皆、吸血老婆の味方になって。
無責任な好奇心をむき出しに、これから妻の身に降りかかる受難を予想して視線を集中させる。
それらのなかには、着任したばかりの事務所に勤める上司や同僚の姿も交じっていた。
もしかするときょう、妻を輪姦する権利を手にしたかもしれない、男たち。
そう。
わたしたちは、この街の住人として認めてもらうための、二者択一を迫られたのだ。
吸血鬼に支配されて半吸血鬼に堕ちた男たちに弄ばれながら血を吸われるか。
それとも、街を支配する長老の誰かに身をゆだねるか。
吸血鬼が人妻の血を吸うとき、相手をした女は必ず、抱かれてしまうという――
せめて、もうひとつの恥辱は避けたい。
そんな想いから、夫婦一致で老婆を選んだのだった。
相手が女だったら、もういっぽうの恥辱だけは回避できるのだろうと。
その結果が、きょうの“公開処刑”だった。
六畳ぶん置かれた畳の傍らには、見世物小屋のような下品なたたずまいの立て看板。
そこには、雑な字ででかでかと、こうあった。

清楚な人妻、公開処刑! 街のみんなで見守ろう。


一週間前。
都会のビル街の一角にある、勤務先の本社。
わたしたち夫婦は、表情が見えないほど分厚いメガネをかけた人事担当者のまえ、恐縮し切っていた。
「で・・・借金がかさんで、日常生活が困難になったと?」
「あ・・・はい・・・わたしのギャンブル癖と、家内の浪費癖が重なりまして・・・」
「それで、なんとか会社の力で借金を棒引きにできないか?というわけですね」
「・・・」
「ずいぶんと、ムシの良いご希望ですね」
表情を消した人事担当者の口調が淡々としているぶん、
自分たちの身勝手さが、よけいにありありとあぶり出されるようで。
それでも「会社が何とかしてくれそう」という想いだけで、わたしたちはうわべの恐縮を取り繕っていた。
「性格検査は、ご夫婦ともに適格と判断されました」
1000問にも及ぶ問診と、血液検査。あれが性格検査だったのか。
「あとは、柳原さんと奥さん、ご本人の意思だけです」
「ええ、それはもう・・・」
「追い詰められているだけで、苦し紛れの選択をしないほうがいいですよ」
メガネの向こうの目が、初めて同情をたたえてわたしたちを覗き込んだ。
「いえ、それはもう、会社には迷惑をかけるわけですので、どんなことでも」
会社が迷惑をすべてひっかぶってくれる。こちらはなんの犠牲も払わずに。
そんなムシの良いことを夫婦ともに肚にわだかまらせながら、
わたしたちは酔ったように理性の抜けた耳で、相手が淡々と言い連ねる条件に聞き入っていた。

これから、遠方の街に赴任してもらいます。
あなたがたは行方不明になって、連絡が取れない――周囲のかたがたには、そういう連絡をします。
ですからいちど赴任されたら、街を出ることは禁じられます。
失踪宣告がされれば、戸籍も消えるでしょう。そのあたりの手続きは、会社に一任してください。
赴任先では家も与えられ、給与も支払われます。
通常の給与体系からはずれますので、今までの五割増です。
業務はとくにこれといって、ありません。出社して、事務所で一日過ごして居ればそれでよろしい。
事務所の抱える得意先のところで暇をつぶしても良いし、その気があれば帰宅も自由です。
「じゃあさいしょから、勤務しなければいいじゃないか」――ふとそう思ったわたしの気持ちを見透かすように、人事担当者は言った。

その場の成り行きで、貴男も身の処しかたがわかるはずです。

どういうことですか――?
わたしは訊いた。
男は冷ややかに横を向いて、口にした。

業務はないと言いましたが、厳密にはひとつあります。
でも、なにもしないで良いのです。
献血を要求されたときに応じていただく。これだけです。
貴方が赴任される街には、吸血鬼が棲んでいるんです。

吸血鬼などという文句は、追い詰められたわたしたちには、絵空事にしか聞こえなかった。
まさかそれが、公開処刑につながるなどと――


かん高い歓声と嬌声。
そのなかに、わたしたち夫婦は、離れ離れに置かれていた。
わたしは、血を抜かれて冷え切った身体を、靴下一枚以外一糸まとわぬなりにされて。
妻は、清楚に装うその身を、老婆の卑猥な視線にさらされつづけて。
純白のブラウスに真っ赤なフレアスカート。
見覚えのあるその衣装は、ユリともバラとも独身時代に讃えられたその魅力に、ピッタリと寄り添っている。
けれども、妻の品格を引きたてているはずの衣装は、老婆の劣情をそそるだけだった。

ウォ――ッ!!
獣じみたうなり声をあげて、老婆は妻にとびかかる。
とっさに飛びのこうとした脚は恐怖にひきつって、畳のうえに吸いついたままだった。
老婆は妻を羽交い絞めにすると、容赦なく首すじに牙を突き立てて、
突き立てた牙をガブリ!と喰い入れたのだ。

ジュッ!
鈍くて重たい音が血しぶきとともにあがり、
撥ねた血しぶきは純白のブラウスをみるもむざんに点々と染めた。
ああああッ!
恐怖のうめき声さえ引きつらせ、妻は羽交い絞めにされたまま、生き血をぎゅうぎゅうとむしり取られてゆく。
じゅるっ・・・じゅるっ・・・
クチャ・・・クチャ・・・
汚らしい音とともに啜り取られる、妻の血潮――
グレーのストッキングに包まれた脚を踏ん張り、畳のうえでわが身を支えるだけで精いっぱいの妻――
時折随喜のうめきをあげながら、三十六歳の人妻の生き血に酔い痴れる、醜い老婆。
なんという光景だろう!
それらを目の当たりに・・・わたしはいつか絶頂を自覚した。
そう、夫婦のベッドのなかでしか覚えたことのないあの歓びを、
不覚にも妻を目のまえで虐げられることで、あらわにしてしまったのだった。

「あッ、ご主人、勃ってる!勃ってるッ!」
無責任な群衆がわたしの不始末に気づいて、それを容赦なく暴露する。
「おおっ、ほんとだ、昂奮しちゃってるよ。ばかだねー」
「でも俺、ダンナの気分わかるわー」
「なに抜かすんだ、このド変態!」
無責任な声はさらに無責任な声を呼んで、理性と誇りを壊されたものを渦に巻き込む。

わたしに浴びせられる嘲罵すら、妻の耳には届かない。
グフッ・・・グフッ・・・
血にまみれた白ブラウスごし、老婆は妻の胸を揉みしだきながら、
大の字に倒れてしまった妻のうえにおおいかぶさり、
まるで淫したように、妻の生き血を飲み耽る。
首すじだけではない。
胸元にも、二の腕にも、わき腹にも。
着衣のうえからいたるところに、老婆の牙はあてがわれた。
男が女を弄ぶように、くまなくしつように、
飢えた唇がヒルのように妻の五体を弄ぶ。

白のブラウスはユリの花が踏み躙られるようにして引き裂かれて、
ブラジャーの吊り紐は引きちぎられて、
あらわになった乳首をしゃぶられて。

あーれー・・・

大昔の映画のヒロインのような叫びをあげて、
妻は自分の血で血浸しになりながら、畳のうえを転げまわる。
しっかりとした肉づきのふくらはぎが、目のまえでグレーのストッキングになまめかしく染まっている。
疲れ切ったわたしの目にさえ一瞬欲情をよぎらせた足許が、老婆の目に触れないわけはなかった。
ククククククッ。
ふくらはぎに吸いつけられた唇が、けしからぬ意図を帯びているのを、妻は本能的に悟ったらしい。
アッ、やめてください・・・ッ!そんな・・・ッ!
必死の懇願を無視して、老婆は唇に力を籠めた。
ストッキングがパチパチと音を立てて裂け目を拡げ、
擦りつけられた唇が、チュウッと圧し殺したような音をあげる。
「ああああああっ・・・」
妻は両手で顔を覆い、失血と恥辱に耐えつづけた。
わたしは目が眩み、その場で仰向けに倒れ伏した。
横目にかすかに視界に入った妻も、大の字になって。
ただひたすらに、老婆の食欲を満たしつづけていた。

血を抜かれて干からびた血管が、身体の奥で唸り声を洩らしていた。
血が・・・欲しい。身体を潤す血が・・・欲しい。
目のまえで老婆は、生きた餌にありついている。
豊かな肢体から、むしり取られてゆく血潮。
清楚な衣装のうえに、ふんだんに撥ね散らかされてゆく血潮。
なんという絶景。至福の光景・・・
そう、わたしはいつの間にか、老婆と気持ちをひとつにしていた。
もっと飲んでほしい。
妻の若々しい血潮を、想いぞんぶん賞玩してもらいたい。
心の奥底からあふれ出てくる衝動を、わたしはもう、どうすることもできなくなった。
昏い衝動が、わたしの理性を闇に堕とした―――


もう、よろしいでしょうか・・・?
柳原瑞恵は、自分のうえにのしかかる老婆に、上目づかいで問いかけた。
可愛い目をするのう。
老婆は組み敷いた生き餌と目を合わせ、ほくそ笑んで応えた。
まだまだじゃあ。
老婆の言いぐさに、瑞枝は「あらぁ・・・」と照れた。
ヒッヒッヒッ。久しぶりにありつく、都会育ちの人妻ぢゃ。
たっぷり可愛がってやるぞぃ。
老婆の言いぐさに、瑞枝はくすぐったそうに身体を揺らす。
あい。
瑞枝はうっとりと老婆を見あげ、裂けのこったブラウスをさらに揉みくちゃにされるのを、小気味よげに受け入れた。


周囲の男たちは見境なく、手近な女に襲いかかっていた。
吸血鬼もいれば、そうでないものもいる。

髪を振り乱し随喜の声をあげながら生き血を吸い取られる妻のかたわらで、
妻を襲っているのが勤め先の同僚だと知りながら、
夫は自分が組み敷いた女学生の、セーラー服の襟首から覗く白い肌に夢中になっている。

べつの青年は、親友と婚約者が戯れ合うすぐ傍らで、
かねて目をつけていた妹を犯していた。

自他ともに認める愛妻家といわれた柳原の同僚は、
自分の妻に息荒く迫る男たちのため、妻の肩を抑えつけてその劣情に応えさせ、
自らも妻に加えられる輪姦の渦のなかに交わっていた。


皆さん、すごいんですのね・・・
瑞枝は相変わらずうっとりと、老婆を見つめる。
老婆は瑞枝を広場の隅に引きずっていって壁に背中をもたれかけさせ、
さっきからしきりに瑞枝の脚に唇を這わせ、
グレーのストッキングを咬み破るのに熱中している。
瑞枝は自分の穿いているストッキングにふしだらな伝線が走り無造作に拡げられるのを、
面白そうに見つめながら、老婆の吸いやすいように脚の角度を変えてやっている。
主人、正気を喪っちゃいましたね~。
自らも理性を喪失していることに気づかないでいるくせに、
遠くから自分を見つめる夫の視線に宿る黒い歓びを見抜いてしまっている。
あたし・・・どうなるのかしら・・・?
もちろん、男どもの餌食ぢゃわい。
老婆は遠慮ないことをいう。
いずれもいずれ、お前の亭主の勤務先のやつらぢゃ。
仲良う相手するがええ。
なに?さいしょの約束?
そたらもん、いまの状態の旦那が、覚えておるはずはなかろうが。
愉しんじまえ。よがってしまえ。

老婆にそそのかされるまま。
つい先日、他人行儀なあいさつを交わしたばかりの夫の同僚たちが目の色を変えてのしかかってくるのを、
瑞枝は平然と受け止めていた。
裂けたストッキングを穿いた脚をこじ開けられて。
せり上げられるスカートの奥、恥知らずな性欲が鎌首もたげて迫ってくる。
主人以外のひと、初めてなんですよ・・・
そんな瑞枝のつぶやきに耳も貸さずに、最初の男はたけり狂った自分の一物を、瑞枝の奥深く埋め込んでいた。


妻が・・・妻が、堕ちてゆく。
わたしの目のまえで、瑞枝がわたしの同僚たちを相手に許しはじめてゆくのを、
わたしはどうすることもできずに、見守るばかりだった。
大の字にされて、奪い尽されて、
それから四つん這いにされて、飼い慣らされて。
しまいに泥まみれにされて、隷属させられてゆく――
そんな一連の儀式を、この街では「懇親の交わり」と呼んでいる。
そう。この場は男と女が慣れ親しみ睦みあう場。
妻の生き血を提供し、おおぜいの男に睦まれてしまった夫は、ほかの人妻を襲う資格を勝ち得るという。
妻のうえに群がっている男たちもきっと、自分の妻や娘を提供させられ狂わされた、わたしの同類――
狂った光景を灼きつけられたわたしの狂った瞳は、ただいっしんに、
わたしの同類たちが妻とひとつになってゆくのを、ただひたすらに熱っぽく、
劣情にまみれたただの男として、たんのうし切ってしまっていた。

つぎにこの街に現れる夫婦は、どこのだれなのか。
その人妻の貞操を共有する権利は、わたしにももたらされている。
けれどもいまは・・・ただひたすらに、妻への受難を愉しみたい。悦びたい。
空しい抵抗をくり返していた妻の手足が、いまは悦楽を帯びて、
自分に恥辱を与える男どもの背中を恥知らずに抱きとめてゆくのを、
夫婦関係が崩壊したことさえ小気味よく感じてしまっている私は、網膜に鮮やかに刻みつけてゆく――
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