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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

初体験談

2016年06月14日(Tue) 05:24:46

初めて血を吸われたのは、学校でした。
その日の放課後、担任のN先生に保健室に呼び出されたのです。
たまたまいっしょにいた晴代さんにその話を聞かれて、「それきっと、吸血鬼の呼び出しだよ」と言われゾクッとしました。
「貧血で具合が悪くなったりする子もいるから、最初は保健室なんだって」
そう教えてくれた晴代さんはすぐに、「よかったね、おめでとう」と、言ってくれました。
他の子はほとんど咬まれてしまっているなかで、私はまだだったからです。
保健室にはいっしょに行ってあげる、あたしも約束してるから・・・と言ってくれた晴代さんは、きっと親切のつもりでそうしてくれたのだと思いますが、私が感じたのは、「逃げれなくなっちゃったなあ」という気持ちのほうが強かったです。
保健室にはN先生はいなくて、晴代さんは廊下で待ち合わせていた吸血鬼の小父さまと落ち合うと早々に、「じゃね」と言って、そそくさと行ってしまいました。
晴代さんが特定の人に血をあげているのは知っていましたが、相手の小父さまを見たのは初めてでした。
背広を着ていて、父と同年代くらいの、ふつうの男の人でした。
「友美ちゃんのお相手も、このひとくらいだよ」
晴代さんは別れぎわ、そう教えてくれました。
保健室には養護の先生がいましたが、いつになくそっけない態度で、「あちらですよ」と、白い衝立の向こう側を指さしました。
私は恐る恐る、衝立の向こうにお邪魔しました。
待っていたのは、やはり背広を着た、白髪頭の痩せ身の男性でした。
顔色が悪く、父よりも年上にみえました。
「よろしく」
男の人は、大きな目で私を見あげて、そう仰いました。
私も恐る恐る、「よろしくお願いします」と、答えました。
「原友美さんだね?話はお母さんから聞いているから」
どうして母のことが出るのか?私にはよくわかりませんでしたが、母の名前が出たことで、ちょっとだけ安堵を感じたのを憶えています。
男の人は腰かけていたベッドから起ちあがると、「寝なさい」といって、場所を譲ってくれました。
私は指さされたベッドにどうにか腰を落ち着けましたが、思い切って寝そべることがどうしてもできません。
男の人のまえで横になることが、ふしだらな感じがしたからです。
その人――小父さまとお呼びします――は、腰かけたままの私のすぐ隣にふたたび腰をおろすと、やおら腕を伸ばして背中に回し、私の肩を抱き寄せました。
めんどうな気遣いはいっさい省略するというのでしょうか。
思わず抵抗すると、小父さまは仰いました。「逃げられないから」。
その言葉が、私の行動を大きく制約したような気がします。
私はただただ、べそを掻きながら、「血を吸うのはやめて」と言いました。
「私はあなたの血をあてにしてここに来た」
セーラー服のままギュッと抱きすくめられた私は、もうどうすることもできなくなっていました。
どうやって彼に咬まれたのか、よく覚えていません。
私を身動きできないようにして、小父さまは牙をむき出すと、情け容赦なく、力づくで食い入らせてきたのです。

ごくっ・・・ごくっ・・・
私の血が露骨な音を立てながら飲み味わわれていくのがわかりました。
欲しがってる。欲しがってる・・・
ただそれだけがありありと、肉薄してくる厚い胸板や抱きすくめてくる力強い腕の力から、伝わってきました。
あと、首すじに吸いつけられた唇の強さからも。
ベッドに抑えつけられた私は、ただただ圧倒されながら、血を吸い取られていったのです。

私がぐったりとなってしまうと、小父さまはスリッパを脱がせて私をベッドに投げ込むと、うつ伏せに転がしました。
なにをするのかは、お友だちから聞いて知っていました。
脚を咬むんですよね。ハイソックスのうえから。
さっきのようにいきなり咬みついたりしない代わりに、小父さまは舌を這わせて私の履いているハイソックスをいたぶりました。
とても屈辱的な感じがしましたが、どうすることもできませんでした。
「すまないね。あんたには感謝するよ」
小父さまはまじめな口調でそう仰ると、やおら牙を突き立てて、ハイソックスを咬み破りながらふくらはぎを咬みました。
両脚とも代わる代わる、何度も何度も咬まれて、ハイソックスにじんわりと生温かい血がしみ込んでいくのを感じました。
とてもとても、屈辱的な感じがしました。
けれどももう、どうすることもできないで、半ば痺れた頭のなかを霧のようなものが渦巻くのを感じながら、「血を吸われちゃう・・・血を吸われちゃう・・・」と、呪文のように呟きつづけていました。

ひとしきり血を吸うと、小父さまは手を取って、私の身体を起こしてくれました。
「だいじょうぶかね?」
顔を覗き込んでくるのが、気を使ってくれているのがわかるのですが、でも顔をまともに視られるのがひどく羞ずかしくて、私はずっと下を向いていました。
養護の先生はもう、いらっしゃいませんでした。
私たちは灯りのついたままの保健室を出て、小父さまはジャケットを脱いで冷えた私の身体から外気を遮ってくれました。
このままいつまでも甘えるわけにはいかない――そう思いまして、「だいじょうぶです、一人で帰れますから・・・といって、まだ顔をそむけつづけていました。
「お友だち、待っててくれたみたいだね」
小父さまの声に顔をあげると、美智子さんや晴代さんの姿が、下駄箱のほうに見えました。
待っていてくれたらしいお友だちの影を見て初めて、涙が滲んできました。
「悪いが、退散するよ。きょうはありがとう」
「あ・・・いえ・・・」
へどもどとしたご返事しかできなかったのだけは、いまでも悔やまれます。

家に戻ると母が迎えてくれました。
血の付いたハイソックスに気がつくと、母は「見せて御覧」と言い、「派手にやられたね」と言いながら、髪をなでてくれました。
また涙が出そうになりましたが、かろうじてこらえると、「シャワー浴びてくる」と言って母の脇をすり抜けました。

翌朝――
気分は意外なくらい、普段通りの私に戻っていました。
いつものように朝ご飯をいただき、いつものように制服の袖を通して、ハイソックスだけは真新しいのをおろして、家を出ました。
きょうも小父さまが来る――なんとなく、虫が報せたのです。
いまなら思います。
私の身体じゅうの血が、小父さまに飲まれたがって――ざわざわと騒いだのです。
一時間目は家庭科でした。Y先生は私のことを呼ぶと、「旧校舎の3階のB教室に行ってらっしゃい」と、小声で指示を下さいました。
どういうことだかすぐにわかった私は、みんなのほうにさりげなく一礼をして教室を出ました。
みんなも私のごあいさつがどういうものなのか、察してくれたようです。さりげなく軽い挨拶だけを返して、すぐに実習に熱中し始めてくれました。

指定された教室に入っていくと、小父さまはこちらに背中を向けて、空き教室のなかでひとり、窓の外を御覧になっていらっしゃいました。
私の足音を聞きつけてこちらを振り向くと、私はお辞儀をして中に入り、すぐに小父さまのほうへと歩み寄ります。
「きみのハイソックスをまた、イタズラしてみたくなってね」
小父さまは朗らかに笑いました。
言っていることはひどいけど、いじましい感じはしませんでした。
私も不思議なくらい明朗な気分になって、言いかえしました。
「いけない小父さまですね。母に言いつけようと思います」
「口止め料に――きのうよりもたっぷりと、吸ってあげよう」
血を余計に吸い取られることが、どうして私に対する口止め料になるのか。
それは、教室の床に押し倒された私は、すぐに知ることになりました。
したたかに血を吸われた私は、貧血に蒼ざめた頬を横に振りながら、小父さまに言いつづけていたのです。
「だめ・・・だめ・・・もっと・・・吸って・・・」と。
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