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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

咬まれた痕は、咬まれた者同士にしか、見えないらしい。

2016年06月30日(Thu) 07:48:12

初めて咬まれた夜のこと。
家に帰った僕を迎えたのは、父さんだった。
その時初めて、父さんの首すじについた咬み痕に、僕は気がついた。
父さんも僕の首すじにつけられた咬み痕に、じーっと見入っていた。
咬まれた痕は、咬まれたもの同士にしか見えないということを。
僕はその時、初めて知った。

父さんは半ズボンを履いた僕の足許に目をおろして。
真っ白なハイソックスにべっとりと着いた血のりをみとめると。
母さんが帰る前に、脱いでいなさい。父さんは母さんをこれから迎えに行くから。
これは二人だけの秘密・・・ということを言外に滲ませて、
あとはいつものような仏頂面に戻って、ジャケットを羽織って家から出ていった。
この街に棲みついて、まだいくらも経っていないころ。
妻を襲われたくない夫たちは、夜道を歩く妻のエスコートを必ずすることになっていた。
いつものようににぎやかな雰囲気をまき散らしながら居間に戻って来た母さんは、
僕の首すじの咬み痕に気がつかなかった。

翌朝、出勤時間を早めた父さんは、僕と一緒に家を出た。
家が遠くなって、誰にも聞かれないのを見はからって、父さんは言った。
ほんとうは、父さんが母さんのことを連れていかなくちゃいけないんだけど、さすがにちょっとなあ・・・
じゃ、僕がするから。
生き血を欲しがる吸血鬼に母親を引き合わせるという行為を、
自分でもびっくりするくらい気軽に、引き受けてしまっていた。

気分が悪くなっちゃって。
いま、フジノさんのお宅にいるんだ。
電話に出た母さんは、僕のついた嘘を真に受けて、
敷居の高い家みたいだから、ちゃんとスーツ着て迎えに来てね。
息子のそんな風変わりな要求を、なんの疑いも抱かずに承知した。
僕を迎えに来た母さんは、いつもより半オクターブは高いよそ行きの声になって、
自分の血を吸おうとしている小父さんに礼儀正しいお辞儀をして。
黄色いスカートの下からにょっきり覗く肉づきのよいふくらはぎを、
そうとは自覚せずに見せびらかしていた。
脚に通してきた真新しいストッキングを、咬み破られるために穿いてきたのだとわかったときにはもう、
その場に押し倒されて、首すじを咬まれて、
僕のときよりもいちだんと速いペースで、生き血をチュウチュウ吸い取られてしまっていた。

もう~、どうして母さんにあんな嘘をつくのよっ。
言葉は叱っていたけれど、声色はもう、怒ってはいなかった。
女の人が穿いているストッキングを咬み破るのが大好きな小父さんに迫られた母さんは、
肉づきたっぷりなふくらはぎに、もの欲しげな唇を吸いつけられて。
ぱりぱり、ブチブチ、かすかな音を立てながら。
小父さんのために穿いて来たおニューのストッキングを、惜しげもなく咬み破らせてしまっていた。
そのまま、“征服”されていった母さんのことを、僕はずっと忘れない。
ふすまが細めに開いた隣室から、犯されてゆく母さんのことを、父さんが熱っぽく見つめていたことも――

ええーっ!?ケイくんのウソつきっ。
言葉は怒っていたけど、声色は決して、怨んではいなかった。
それから数年後のことだった。
僕が婚約者の綾香さんを、小父さんに紹介してしまったのは。
母さんのときとおんなじ経緯で、綾香さんは首すじを咬まれ、
スーツのジャケットをバラ色の血潮でびしょ濡れにさせて、
てかてか光るストッキングを、惜しげもなく咬み破らせていった。
その場で犯されてしまったのさえ、母さんのときといっしょだった。
嫁と姑、ふたりながらモノにしてしまった小父さんは。
父さんと僕のまえ、得意げに笑いながら。
妻をみすみす寝取らせる父親と、
婚約者をムザムザと汚されるその息子とを目のまえに。
スーツに着飾った女ふたりを、代わる代わるに犯していった。
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