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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

一体感。

2016年08月04日(Thu) 06:41:11

ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・
いつもながら彼は、豪快な音をたてて。
わたしの生き血を、飲み耽ってゆく。

首すじに牙を突き立てて。
両肩を、ギュッと抱きすくめられて。
身じろぎひとつできないほどに、がんじがらめにされながら。
わたしは体内をめぐる血液を、グイグイと力強く、抜き取られてゆく。
彼は支配欲もあらわに、わたしをがんじがらめにし、
わたしは彼の支配欲をそのまま受け入れて、わが身を心地よくゆだねていく。

気が向けば。
半ズボンからむき出しになった太ももにも。
ガブリ!と派手に、喰いついて来る。
いっそ小気味がよいくらいの咬みっぷり。飲みっぷり。
そんなふうに彼のわたしに対する仕打ちを、肯定的に感じるようになったのは。
たぶんわたしのなかに・・・人知れず嗜血癖が芽生えてきてしまったためだろう。


実際に、人の生き血を吸ったことは、ほとんどない。
首すじについた、吸い残された血を指先で拭って、
自分で自分の血を、チュッと唇に含んだくらいはあるけれど。

でも――なんとなく彼の気持ちが、わかるような気がする。
ねっとりと充実した、暖かいバラ色の液体を。
頬に撥ねかし口に含み、喉に流し込み、胃の腑にわだかまらせる歓びを。

人の生き血は、吸わないけれど。
彼にもっと血を吸わせてやりたい・・・そんな気持ちはとても強い。
だから、多少の貧血をいとわずに、彼に逢いに出かけてしまう。
家族に隠れてさえも。
けれどもそのうちに、そんなことをする必要はなくなってきた。
若い女の血を吸いたい。
そんな彼の願いをかなえるために、わたしは妹を逢わせてしまった。


ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・
白目をむいて気絶した妹の、足許にとりついて。
着ている制服を汚すまいと、彼はもっぱら妹の脚に唇を吸いつける。
履いているなハイソックスを脱がそうともせずに、ふくらはぎに咬みついて。
真っ白なハイソックスが真っ赤になるほど、彼が飲み耽るのを見届けたとき――
あの充足感は、なんなんだろう?
まるで自分自身が吸血鬼で、やっと活きの良い血にありつけたような、
そんな充足感が、身体のすみずみにまで行きわたる。

気がついたときには、気絶からわれに返った妹を助け起こして、
これからこの人に毎晩血を吸ってもらうんだよ・・・って、納得させていた。

わたしの血と、妹の血と。
それだけでも足りなさそうな彼をまえに。
妹は囁いたのだった。
――母さんの血も、吸わせてあげようよ。


ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・
白目をむいて放心した母のうえにのしかかって。
彼女のご自慢のワンピースに、持ち主の血をふんだんに撥ねかしながら。
咬みついた首すじのうえ、彼はいつも以上にせわしなく唇をうごめかせてゆく。
母の生き血を吸いあげる勢いの良さが、どうしてかむしょうに、小気味よく耳をくすぐる。
――よかった。母さんの血も、気に入ったみたいだね。
飼いはじめたペットが餌を勢いよく食べるのを見てほっとしたときの妹を思い出す。
いまも同じ顔つきで、目を細めて満足そうに。
自分の血を美味しいと言ってくれた男が母を生き餌(え)にする有様を、見守っている。
控えめだった妹の、べつの顔を見たような気持になったけれど。
いっぽうで。
共犯者の連帯感を、安堵とともに噛みしめていた。
母が咬まれて、生き血を吸い取られていくという、シリアスな状況のはずなのに。
そう。
まさに共犯者だった。
抵抗する母の手足の動きが、じょじょに緩慢になってゆくのを、
妹とふたり、肩を並べて見入っていて。
妹なんかは小声で、がんばれ、がんばるんだ吸血鬼さん・・・って、
自分の母親を組み敷いて血を吸う男の肩をもっていたくらいだから。

気がついたときには、気絶からわれに返った母は妹を助け起こされていて、

母さんも捨てたもんじゃないんだね。
これからはこの人に毎晩血を吸ってもらうようがんばらなくちゃね

・・・と、気丈な納得ぶりを、まだ立ち去らないでいる情夫の耳に届けるように、そういった。
自慢のワンピース、着れなくなっちゃったから。記念にあなたにあげるわね。
血の撥ねたワンピースを、初めて襲われた相手に渡す行為は。
相手のすべてを受け容れることを意味していた。
ワンピースの肩先に撥ねたのは、母の血潮だったけれど。
すそをどっぷりと濡らす、生温かい半透明の粘液には、
母も息子も娘も、気づかないふりをしつづけていた。

母のワンピースをもらえる彼が羨ましいと、半分は嫉妬を覚えたけれど。
母のワンピースをあげたいと、もう半分は私自身も熱烈に思っていて、
まるで私じしんが受け取ったかのようなうれしさを覚えてしまったのは。
私が彼になり、私が母になり切っていたからなのかもしれない。
そういえば妹のときも。
私じしんが妹の制服を着て襲われているような――奇妙な一体感が、そこにはあった。


わたしの血と、妹の血と。母の血と。
それだけでも足りなさそうな彼をまえに。
妹は囁いたのだった。
――真由子さん、襲わせてあげようよ。まだ処女なんでしょ?

婚約者の真由子は、会社勤めのOLで。
ふっくらとした豊かな肢体の持ち主だった。
もちろん、彼の相手として、なん度夢想したかわからない。
だって、彼女の豊かな肢体をめぐる血潮が、彼の気に入らないはずはないのだから。
妹のそそのかしに、われを忘れたわたしは、翌日真由子を、いつもの公園に呼び出していた。

目と目を見つめ合った瞬間から。
真由子は相手の正体を察したらしい。
ちょっと顔を蒼ざめさせて。
わたしの首すじにつけられた咬み痕に、目を見張って。
ものも言わずに、駆け出した。
はじめから勝ち負けの決まっている鬼ごっこを、
わたしはどちらにも手を貸さず、佇んだまま見守っていた。

彼は獲物がわたしの婚約者だと知りながら、
獣が獲物を掴まえるような荒々しさで、
後ろから追いついた真由子の肩を引き寄せたのも。
勤め帰りのスーツ姿を引きずり倒して、泥まみれにさせたのも、
わざと粗っぽく、牙を叩きつけるようにして、彼女の首すじをガブリとやって、
真っ白なブラウスにバラ色のしずくをふりかけたのも。
脚をじたばたさせて彼女が抗い、その抵抗を力ずくで抑えつけていったのも。
チュウチュウとあからさまな音を立てて真由子の血が吸われ、
音が深まるにつれ、脚のじたばたが弱まっていったのも。
妹のハイソックスをみるかげもなく咬み破ったように、
真由子の履いているテカテカとした肌色のストッキングも、
むぞうさにブチブチと、咬み剥がれてしまうのも。
わたしはまるで自分がしているかの錯覚をおぼえながら、
ゾクゾクとした昂ぶりもあらわに、
妹や母をも汚した男が、わたしの婚約者を征服していくいちぶしじゅうを、見守っていた。

ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・
真由子の血を、彼が旨そうに飲んでくれているのを。
ああよかったと感じているわたしがいた。
彼が活きの良い血液にありつけたことを、ああよかったとだけ感じていた。
まるで自分自身が、血で満たされた吸血鬼のように。
彼が彼の胃の腑を、わたしの未来の花嫁の血で満たしてゆくのを、
ひどくうれしく感じていた。

彼女が生命を落とすことはない。
だって、彼は若い女の生き血を継続的に欲していたから。
くり返し突き入れられた牙は、彼女の理性を見る見るうちに麻痺させていって。
彼女はぼーっとなって、
奪われるまま、生き血を飲み耽られていった。
自分の身体をめぐる血液が、相手の男の渇きを満たしていくのを、
ただただぼう然として、寄り添いつづけていた。

白目をむいて仰向けにぶっ倒れ、満天の空をうつろな目で仰ぐ真由子を。
わたしはあろうことか、彼が真由子の血を吸いやすいようにと手助けをしてやっていて。
勤め帰りのジャケットのうえから、彼女の両肩を抑えつづけていた。
ブラウスをはぎ取られ、ブラジャーをむしり取られて、
乳首を含まれ、ぞんぶんに舐められて。
でも、彼女の裸体をまだ目にしたことのないわたしは。
まるで、自分自身が彼女を犯そうとしている気分になって、
彼の所業を妨げもせず、視つづけていた。
彼と手を組んで、ふたりがかりで彼女をねじ伏せようとしていた。

ストッキングを片方だけ脱がされて。
彼女はふたたび、足摺りをくり返していた。
初めて受け容れる男の肉に、恐怖と期待とを滲ませながら。
受け容れなければならない男の肉が、婚約者のそれではなくて、
そうしたことを、婚約者自身が望んでいて、
自分自身さえもが、血を吸われてしまった以上は・・・と、
あきらめと観念と無念さと、ひそかに感じはじめた好奇心を秘めながら。
彼女はゆっくりと、自分から脚を開いてゆく――

突き入れられたものが引き抜かれる瞬間、彼女はすすり泣き交じりの吐息を洩らし、
それから言った。
ケンくん、ゴメン・・・っ。
きっと感じてしまったのだろう。
彼はそんな真由子になおものしかかって、
草の褥のうえで、なん度もなん度も彼女を犯し、辱め抜いてゆく。

婚約者の純潔が散った夜。
わたしも、わたし自身の「初夜」を過ごした。
彼女のうえにおおいかぶさる吸血鬼は、もうひとりのわたし。
わたしは今、自分の血を共有する男といっしょになって彼女を犯し、血を抜き取ってゆく。
妹や母さえも、そうしたように・・・


あとがき
昨日から構想し、やっと書き上げました。
頭のなかでわだかまっていた二作があっぷできて、すこし安堵。
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ご夫君の勤務中に犯された奥方は、意外に冷静である。

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