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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

なだれ込む「彼ら」。

2016年08月09日(Tue) 00:58:45

家の外には、多数の吸血鬼たちがうごめき、われわれの様子を窺っている。
それをだれもが警戒していたのだけれど――
さいしょに狙われたのは、妹だった。
縁側に出ていた妹は、わずかのスキを突かれて彼らの餌食になった。
廊下でのたうちながら血を吸われて、気づいて駆けつけたときにはもう、彼らは去ったあとだった。

ピンクの浴衣に着かえた妹は、その夜ひっそりと家を出た。
「あなた、未華子さんが家にいないわ」
妹の姿が見えないことに妻があわてて、わたしのところに駆けつけた。
わたしはすぐに、妹のあとを追った。

ピンクの浴衣の後ろ姿が見えたとき。
妹の周囲には何匹もの吸血鬼が、すでに徘徊を始めていた。
「妹を返してほしい」
わたしは言った。
「もちろんそうするつもりだ。だが条件がある。家に入れてくれ」
「それは困る。妻や母まで襲うつもりなのか」
「もちろんだ。妹さんの相手はこの男が、あんたの相手はわしがする。お母さんの血を吸うのはこの男だ
 そうだ、奥さんの血もわしがいただく」
「そんなことまで決めているのか」
「我々は仲が好い。獲物は分かち合うことにしている。だが、さいしょに咬む相手だけは決め合っているのだ」
「そんな勝手なことは許さない」
「だが・・・見てくれ。妹さんはもう、我々と仲良くなりはじめているぞ」
男に促されて傍らを見ると、妹は吸血鬼どもに取り込まれて、ひたすらうっとりとなっている。
ひとりは妹の首すじを、ひとりはピンクの浴衣の襟足から胸もとを、
もうひとりは手の甲から、ほかのひとりは足許を・・・
一瞬みせたスキを突かれて、わたしも首すじに疼痛を覚えていた――

「なかに入れてあげようよ」
玄関までたどり着いたとき、妹は蒼い顔をあげて、わたしにそう訴えた。
「そんな・・・」
「いいの」
妹は問答無用とばかりに、玄関をからりと開ける。
妹を抱きかかえるようにして玄関に入ったわたしは、彼らの侵入を妨げようとしたが、
彼らはいっせいに、家のなかへとなだれ込んできた。

ああッ・・・!
仏間から聞こえるのは、母の悲鳴。
予告したあの男が、いまごろ母を咬んでいるのか。
妹もまた、浴衣の袖を振り振り、数匹で群がる男どもの餌食に、若い血を散らしてゆく。

妻の手を引いて夫婦の寝室に逃れたけれど、そこがわたしたちにとっての修羅場になった。
「あなた、あなた、なんなの?この人たち」
わたしは手を振って彼らを阻止しようとしたが、多勢に無勢だった。
さっきわたしの血を吸った男が、妻に迫って首すじに牙を突き立てる。
ほかのやつらは左右からわたしに迫り、腕といわず脚といわず、食いついて来る。
あ――ッ!
ひときわ強い悲鳴が、わたしの鼓膜をつんざいた。妻の声だった。

わたし自身も、むざんな吸血に身をさらしながら。
その場にうずくまった妻が頭を抱えて、ムザムザと生き血を吸い取られてゆくのを、見せつけられていった――

夜は深い。
その晩ひと晩じゅう、わたしたち家族全員は、芋虫のように身を転がしながら、彼らの欲望に身をさらし、
死なされはしなかったものの、ひたすら全身の血を舐め尽されていったのだった――


あとがき
縁側に出ていた妹が、まっさきに血を吸われた。
一人でお祭りに出かけた妹を追いかけて家に出ると、わたしまで食われてしまった。
そいつらはしつこくわたしたちにつきまとい、家の中にまで入ってきた。
母も妻も、食われてしまった。
じわじわと痛痒い食われた痕をひっ掻きながら、妻はこぼす。
――この夏はほんとうに、蚊が多いわねぇ。

おあとがよろしいようで。^^
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コメント

話の前半は、多数の男性に取り囲まれて大変な状況を想像してしまいましたが・・・
最後の落ちで、なるほど^^くすっと笑えるお話でした。

吸血は想像の世界でしか感じられなかった私ですが、よくよく考えれば、夏になれば憎き奴らにいとも簡単に知らぬ間にあっと言う間に吸血されているのですよね。
あぁ、蚊のいない涼しい秋が待ち遠しい~

by ゆい
URL
2016-08-10 水 00:12:51
編集
ゆいさん
ご返事おそくなってしまって、ごめんなさい。
このどんでん返しは、あとからできたんですよ。
どちらかというと、縁側で襲われた妹が吸血鬼と仲良くなって、自宅に侵入する手引きをしてしまう・・・というのが、メインのストーリーだったのです。
それが、どういうわけか「カ」になっちゃいました。
(^^ゞ
われながらオチがうまくいったのは、自分自身書いている最中はオチを意識しないで本気モードで描いていて、いきなり落ちたからかもしれませぬ。
^^;
by 柏木
URL
2016-08-13 土 21:36:27
編集

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