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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

父が夫となった話。

2016年08月14日(Sun) 17:02:29

長く単身赴任をしている男がいた。
男は親友に妻子を託していたが、その親友は独身だった。
というのも、親友は男の妻とも幼なじみで、ごく若いころから彼女を見初めていたからである。
親友である男は、貧家の出であった。
だから、女を幸せにすることができないと思い、想いを告げることなく身を引いたのだった。
男は、そうした事情をすべて知りながら遠地に赴任し、親友に妻と娘とを託した。
夫が長く家を留守にしているうちに、親友がその妻と通じるようになったのは、ごく自然ななりゆきだった。

男は妻と親友との関係を知ると、それを快く許した。
そして、そうなるまでのまる一年ものあいだ孤閨を守り夫に操を立てようとした妻をねぎらい、
むしろ二人が逢瀬を遂げられるよう、すすんで仕向けるようにさえなっていた。
親友である男は、幼い娘に対しても、養い親同然に尽くしていたので、母娘どちらからも慕われていた。
ただし、親友の家が貧しいことに変わりはなかったので、彼は自分の粗末な家に分かれて住み、
表だって男の家に居るときにも、使用人のように振る舞い、奥の座敷に入ることはなかった。

やがて、男が任期を終えて、家に帰ってきた。
親友はもとの粗末な貧家に戻ろうとしたが、娘は彼を強く引き留めた。
娘は父親の親友を、実の父のように慕っていたからである。
遠くからやって来たあの人は、自分の父ではない――と、娘は言った。
娘はごく幼いときから父親と別れていたので、父親というものがどのようなものなのか、わからなかったのである。
戻って来た実の父に娘が懐かないことは、二人の男を当惑させた。

親友は男に言った。
父親は敬われるものであり、夫は愛されるものである。
だから、私はあの娘に、あなたをきちんと敬うように仕込もうと思う。
その代わり、すでに愛されてしまっている私はあの娘の夫となって、ずっとあの娘のそばにいようと思う。
男は、妻につづいて娘をも親友に与えることを、躊躇しようとはしなかった。
託したものをすべて返してくれた親友を、心から信頼していたのである。
親友は、男の娘と契りを結び、娘は実の父を敬い、夫を愛するようになった。

男は自分の留守中に親友が男の家を訪れて、ときどき妻を抱くことに気づいていたが、
あえて咎めようとはしなかった。
最愛の二人の女性を二人ながら親友に与えることを、むしろ歓びとしたのである。
親友の妻となった娘もまた、夫が母のもとに通うのを知っていたが、
あえて咎めようとはしなかった。
もともと幼い頃から、彼が母とむつまじく共寝するのを知っていたからである。

四人の振る舞いを不貞であるとか、不道徳であるとか批評することはたやすいが、
彼らは皆、自分の務めを良く果たしただけである。
夫は遠地で務めを果たすことで妻と娘を養い、
親友は彼の最愛の妻と娘を護り、そして愛し、
妻は身近にあって自分と娘に尽くす男に、最も大切にすべきものを与えてこれを慰め、
娘は大人たちの訓えをよく守り、父を敬い夫を愛したのだから。

もしも最も称賛されるべきものをひとり挙げるとするのなら、それは遠地に赴いた夫ということになるだろう。
不自然に離れ離れになってしまった家族が、本当にばらばらになってしまわないために、
彼は賢明にも妻の不貞を許し、妻を慕う親友を留守宅に迎え入れて、
愛する者たちが好んで行うところを、快く許し受け容れたのだから。


あとがき
大昔の説話みたいなものが思い浮かんだので、フッと思い立って描いてみました。
どこか・・・おかしいでしょうか・・・? (^^ゞ
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相姦企業 ~一社員の手記から~
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なだれ込む「彼ら」。

コメント

このお話の内容、一般的には不道徳な形態なのでしょう。
ただ、誰も悲しまず皆が幸せと思えるのなら、世間の批評は当たらずと感じます。
それでも世の中は考え方が人それぞれなので、おかしいぞと言う方もおれば、いやいや良いではないかという方もいることと思います。

ちなみに私は後者の考えでいますが、実際にわが身となった場合に本当にそう思えるのか今はわかりません。
by ゆい
URL
2016-08-15 月 16:24:18
編集
> ゆいさん
このお話。
既存の秩序や家族形態というものを重視する考えの方には受け容れ難い説だと思います。
でも、儒教道徳が行きわたった江戸時代よりも以前の、もともとの「日本古来」のあり方はどうだったのでしょうか。
「妻問い婚」の時代は、いろいろなことがもっとゆるやかだったはず。
「ゆるさ」もまた、文化だと思うのです。
お互い許し合い受け容れ合う。
それが、柏木ワールドなのです。

人のことは許せても、いざ自分が当事者になれば・・・ごもっともです。
物事の理解には、どうやらそんなふうに、二段階ありそうですね。
たぶん――
柏木ワールドの住人ならば、そういう方を相談相手に択ぶことはあっても、
ご本人のお宅には伺わないのだと思います。
人に害をかける(害であると受け取られてしまう)ところにはおじゃまをしないというのも、たしなみですから。
by 柏木
URL
2016-08-16 火 07:57:34
編集

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