淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
ぼくの純潔。
2016年08月29日(Mon) 07:38:55
セーラー服で女装して、夜の街を歩くぼくのことを。
その吸血鬼は、女の子として扱ってくれた。
だからぼくも魅入られた少女みたいに大人しく、血を吸わせてやった。
首すじを咬んでセーラー服を汚してはいけないと、
吸血鬼はぼくをベンチに腰かけさせて、
短いスカートからはみ出た太ももを咬んできた。
熱く押しつけられた唇の下。
初めて咬み入れられた牙は、ぼくの肌に執着した。
「本物の女の子みたいに柔らかな太ももじゃなくて、ゴメンね」
そういって謝るぼくに。
「こういうかっちりとした太ももも、悪くない」――男はそんなふうに応えながら、
女の子にしては筋肉質な脚に、強引に牙を咬み入れて、
ひと啜り、ふた啜り、ぼくの血を啜って、
ひと言、美味い――と言ってくれた。
ぼくよりもずっと年配の吸血鬼。
いったい、なん人の女の子のことを、咬んできたのだろう?
きみの血は、美味しいよ――彼はなん度も、くり返してくれた。
ハイソックスのふくらはぎも、ねだられた。
夕べやそのまえに襲った女の子たちにも、きっとそうしているんだろう。
ハイソックスをずり降ろそうとすると、履いたまま咬みたいんだとねだられた。
えっ?えっ?
たじろぐぼくに、お構いなく、彼は早くもぼくの足許にかがみ込んで、ハイソックスの脚を舐めはじめた。
しっかりとしたナイロン生地の舌触りを、愉しむようにして。
ハイソックスは好きだから、何足も持っているけどさ。
これ買うの、けっこう勇気要るんだよ。
妹のを買うような顔してさ。手に汗握りながら、はずんだ呼吸を押し隠しながら、買うんだよ。
言葉では、嫌だ嫌だとくり返しながら。
紺ハイソの足許に舌なめずりをくり返す吸血鬼のために、
もっと吸いやすいようにと、脚の角度を変えてやっていた。
ハイソックスを咬み破りたいというおねだりの裏に、
いかがわしいいやらしさと、心地よい屈辱感を自覚したぼくは、
彼の望みのままに、いさぎよく?気前よく?ハイソックスを咬み破らせてしまっていた。
それ以来。
彼とぼくとは、深夜にあの公園で、待ち合わせるようになっていた。
偽もの娘じゃ、がっかりだろう?
そういってからかうぼくに、
そうやって女の子のカッコして、若い血をめぐんでくれるだけで嬉しいのさ――男はそう応えてくれた。
血をご馳走することに慣れてくると、首すじからも吸わせてあげられるようになっていた。
えり首をまったく汚さずに、彼は血を吸うことができたけれど。
ほんとうは・・・セーラー服に血を滴らせながら女の子の血を吸うのが好みらしくって。
思い切って――かなえてあげた。
きれいにクリーニングして返すことを条件に。
しつような吸血を受けたあと、連れ出されたトイレの鏡に映ったぼくは、
まさにレイプされたあとの女学生。
真っ白な夏服のセーラーに、バラ色のほとびがあんなに似合うなんて、思わなかった。
セーラー服を脱ぎ与えると、素肌のままの上半身を、初めて彼に抱かれていた。
擦り合わされた肌は、ぞっとするほど冷たくて。
貧血でくらくらしているはずのぼくは、もっと吸いなよ・・・吸って頂戴・・・って。
彼に、おねだりをくり返していた。
その晩もお約束通り、ハイソックスの脚を咬まれてしまったけれど。
ぼくの履いている紺ハイソに執着してねっちりとかじりつく牙が、いつにも増していやらしかった。
そろそろ秋だね。夏服も終わりだね。
そう呟くぼくの唇に。
さっきまで首すじから血を吸い取っていた唇が、重ねられてきた。
ふとしたもののはずみ・・・?にしては、やけに長くてしつようだった。
丈の短いプリーツスカートを、せり上げられて。
やはり丈足らずの紺ハイソの脚を、めいっぱい突っ張って。
パンツを穿いていない股間に、ぼくは初めてのものを、受け容れていた。
まるで・・・女の子みたいに・・・熱っぽく・・・
それは、二度、三度とくり返されて、
それに、二度、三度と応じてしまっていた。
まるで純潔を捧げる乙女のように。
まるで少女を大人に変える男のように。
ふたりは熱っぽく、まぐわっていった。
不純異性交遊なんて、嘘だね。
純粋にあげたいから、差し出すんだね。
そういうぼくの首すじを、彼はまだ、ねっちりとしつように舐めつづけていて。
それが、ひどく幸せに感じられて。
つい、重大な約束をしてしまっている。
ぼくに彼女ができたらさ、紹介してあげるから。
その子が処女かどうか、確かめて。
もしもその子が処女だったら。
本物の女の子の処女の生き血を、たっぷりと飲ませてあげる。
彼女と小父さんとの相性がよかったら。
結婚する前に、先に姦らせてあげようか。
女の子のあしらい方のお手本を、ぼくも見せてもらいたいから――
ぼくの”純潔”を捧げた夜――
静かな涼しい風が、火照った肌にやさしく通り過ぎていった。
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