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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

親たちの過去

2016年09月29日(Thu) 07:48:01

「優佳子をどうしても行かせるのか?あの教室に」
父親の真純は、母親の沙織にそう問いかける。
「だってもう、あの子も年ごろじゃありませんか。
 ご近所のお嬢さんで目ぼしい子たちはみんな、あのお教室に通っているわ」
沙織は何気なく、夫の問いに応える。
音楽教室に通わせるという、ただそれだけのことが。
夫婦の会話で、深い意味を持っていた。

その昔、男の子もハイソックスを履いていた時代。
真純はその教室に通っていたから、教え子たちが帰宅の途中でなにをされるのかをよく知っていた。
気に入りのひし形もようのハイソックスを無造作に噛み剥がれていったとき。
なんともいえない小気味よさが、悪寒のように襲ってきて。
もう片方の脚も、自分から噛ませてしまっていた。
それからというものは、自分を襲いに来る吸血鬼にハイソックスの脚を愉しませるのが面白くて、教室通いをつづけていた。
沙織と出会ったのも、その教室でのことだった。
二人して、複数の吸血鬼のために献血行為をくり返して。
代わる代わる覆いかぶさってくる獣たちを相手に、うら若い血を惜しげもなく、振る舞いつづけていた。

「だからあの子も――そうさせてあげましょうよ」
妻は妖しく、フフッと笑った。
夫は仕方なさそうに、目線を宙に泳がせた。

あんなふうに悩んだ振りをして。
明日は勤めを早引けして、優佳子の帰り道を見に行くくせに――
そううそぶく沙織でさえ、まな娘の帰り道を保護者として見守ろうと、心づもりをしているのだった。

「おかえりなさい。よくがんばったわね」
お教室のレッスンで先生に褒められたあとのように、
母親はかいがいしく、帰宅した娘の身づくろいをしつづける。
真っ白なハイソックスには赤黒いシミがべっとりと貼りつき、
薄いピンクのカーディガンにも、おなじ色のしずくがあちこちに、撥ねかっていた。
べそを掻いた痕がくっきり残る目じりを隠そうとせずに、
優佳子はきっぱりと、母親に告げる。
あたし、あの教室に通うから――その代わり、きれいなお洋服をいっぱい、買って頂戴ね。
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