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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

潔癖OLのストッキング

2016年10月08日(Sat) 10:37:01

灰田君、きょうからきみの血を吸うから。
寺浦次長に呼び止められた灰田美織は、ビクッとして振り向いた。
あ・・・は・・・はいッ・・・
うろたえてつんのめった声で、あいまいな返事をくり返す美織に、
寺浦はニッと笑ってこたえた。
あとで、4階に来てね。
4階はもともと庶務部のあったところだが、今は空き部屋になっている。
そこは、寺浦が女子社員を呼び出して吸血する、「吸血部屋」と呼ばれていた。

寺浦に吸血の性癖があるのは、社内でもだれ一人知らない者はなかった。
吸血鬼と人間とが共存するこの街で、彼は排除されることも制圧されることもなく、
といっても本人も必要以上にのさばるということはまったくなく、
ふだんは人望もあって温厚な一社員の日常で通していた。

灰田美織は、OL3年生。
先輩の尾藤が結婚退職するとき、陰に呼ばれて言われたのだった。
――あたし、美織のこと次長に推薦しといたから。
えっ?私――?
戸惑う美織に、尾藤はいった。
あたし結婚しちゃうし、当分次長と逢うわけにいかないでしょ?それで、後任さがしてたの。
しっかりあなたに引き継ぐからねっ。
いつだか、それまで手こずっていた小面倒な顧客と本格的にモメた尾藤が、担当を美織に振り替えたとき。
たしかこんなふうに気軽に、言われちゃったっけ。
そう思い出したときにはもう、尾藤は目の前から立ち去りかけていた。
逃げ足の尾藤。
そう呼ばれたこの女はしかし、ランナウェイしようとしたきびすを返して、もういちど美織に向き直る。
いいこと教えてあげる。あいつ、ストッキング・フェチだから。
吸血するときは首すじももちろんアリだけど、脚咬まれるからねー。
美織の高そうなストッキング、あいつお目当てみたい。
ぼう然とする美織を取り残して、尾藤はわざとらしく幸せそうなハミングをしながら、今度はほんとうに背中を向けた。

終業後。
4階のフロアの照明は、ところどころ間引きされていて、ほかのフロアよりも薄暗かった。
ふだん使われていないこの部屋には、それまで同様スチール製の机がそれらしく並べてあったが、
壁ぎわには不要物が雑然と折り重ねられていて、いかにも見捨てられた部屋の様相を呈している。
「吸血部屋」というおどろおどろしい異名を想像させるものはなにもない、なんの変哲もない空き部屋。
けれども複数の先輩後輩から体験談を聞かされている美織には、
そうした机やついたてや、なにが入っているかもわからない段ボール箱たちさえもが、いかにもいわくありげに映るのだった。

呼び出されてあとから部屋に入った美織は、さっきまで寺浦以外のだれかがここにいたのを、なんとなく感じ取る。
寺浦の口許に紅いしずくがまだ滲んでいるのを認めた美織は、自分の直感が正しいのを知った。
美織の視線を敏感に受け止めた寺浦は、「おっと失礼」といって、口許をハンカチで拭う。
「尾藤とはもう、逢えなくなるからね」
寺浦の言葉で、さっきまで逢っていたのが尾藤なのだとわかった。
結婚して、ほんとうに切れるのだろうか?このふたり――妖しい疑念が、美織の胸をかすめる。
そんな美織の心境などおかまいなしに、寺浦はいった。

「ぼくがどこから咬むか、彼女から聞いてるね?」
寺浦の問いは、いかにも直截的だった。
「あ・・・は、はい・・・っ・・・」
美織はどぎまぎして、またもあいまいなあいさつをくり返す。
もともと小心で、さいしょに接客したときにはしどろもどろで舌が回りかね、あとで物陰で泣いたことが何度もある――
そんなとろくさい性格が、われながらもどかしい。
けれども同時に、いちど覚えた仕事はなにがなんでもやり抜く実直さと丁寧さとが評価され、
この春からは新人トレーナーを任されているのも美織なのだ。
彼女の目つきがほんの少しだけ、色を変えた。
「脚から・・・ですよね?」
「ご名答」
寺浦の応えはいささかシニカルだったが、思ったほどのいやらしさはそこにはない。

教わるまでもなく、美織はそうした光景を目の当たりにしていた。
10年選手の河西主任が執務中に脚を咬まれ、それでもなにごともないかのように執務をつづけ、
打ちつづく吸血に耐えかねて、とうとう突っ伏してしまったのも、つい先週のことだった。
気の強い河西主任は終始気丈に振る舞っていたけれど、
裂けたストッキングを穿きながら執務をつづけざるを得なくなったことを、しきりに恥じていた。
わたしもあんなふうに、気丈に振る舞うことができるのだろうか――?
そう思いながらも、そろそろ鈍い疼痛をしみ込まされるはずの足許が気になって、肌色のストッキングの脚をもじもじさせ始めていた。

「きみはまじめだし、身体も強そうだ。以前から気になっていたんで、尾藤に紹介させた」
あの・・・
美織にしては、人の話を遮るなど異例のことだったけれど。
口をついて問いを発してしまったのは、美織なりに気になっていたのだろう。
「あたしの穿いているストッキングのこと気にしてるって・・・尾藤先輩から・・・」
「いまどき、かかとのついているストッキングをちゃんと穿いてくる子は、珍しいからね」
寺浦はどこまでも、悪びれない。
「そういう礼儀正しさ、気に入っているんだよ」
言う人が言えば、気持ち悪いの一語に尽きそうなセリフが、なぜかしっくりと胸に落ちる。
まったくもって、うらやましい性格だ。
美織は思わず、寺浦を上目づかいに見あげた。
「高いんです、このストッキング」
「弁償しようか?」
「イイエ、そんなこと望んでません」
「じゃあ、私に咬まれるときには、安いのを穿いて来たまえ」
「そんな失礼なこと、できません――する以上は、きちんとお相手させていただきます」
口にした科白の大胆さに気づいて再びもじもじを始めた美織を見て。
肚が据わると、こいつ河西よりもしゃんとするな――寺浦はメガネの奥で獣の瞳を光らせた。
寺浦は腰かけていた上司の席から起ちあがると、すぐ斜め前の部下の席に座っている美織のほうへと歩み寄り、その足許にかがみ込んだ。

あ・・・・・
とっさに、逃げなきゃ、と、思った。
けれども脚は床に根を下ろしたみたいに、微動だにしなかった。
ストッキングごしに男のなまの唇を感じて、美織は縮みあがった。
唾液に濡れた舌が、唇が、美織の足許に吸いつき、しつように這いまわるのを。
恋愛経験が皆無の、うぶな小娘の本性をさらけ出して、しきりに恥じらいつづけていた。

気がつくと。
床に大の字にあお向けになっていた。
貧血が思ったよりも心地よく、頭のなかを空っぽにしてくれている。
立て膝になった片脚は、ストッキングが太くひと筋、裂け目を拡げていて、裂け目から露出した脛が、外気に直接触れてすーすーするのを感じた。
寺浦は、もう片方の脚のふくらはぎを舐めつづけていた。
すでにどれほど、血を吸い取られたのだろう?頭が、ぼうっとしている。
父さんと母さんから受け継いだ血を、こんなふうに愉しまれてしまうなんて。
中学・高校のころ不純異性交遊という言葉さえ嫌い抜いていた美織だったから、ハンパではない後ろめたさが心に満ちた。
そんな気持ちが、寺浦に伝わったらしい。
「気にするな。あんたが今しているのは、慈善事業だ。あんたが相手してくれてなければ、俺は明日から会社にいない。この世にもいない」
潔癖な罪悪感をたったひと言で斥けると。
寺浦はふたたび美織の足許に唇をおろして、薄地のストッキングに包まれたふくらはぎを、それはいやらしくいたぶり始めた。

嫌・・・厭・・・いやっ。
激しくかぶりを振る以外の抵抗を思いつくことができずに、美織はひたすら悩乱した。
無抵抗な悩乱に乗ずるかのように、男は美織の足許からストッキングを見る影もなく咬み剥いでゆく。
ふくらはぎから太もも、さらにその奥――
制服のピンストライプのタイトスカートをたくし上げられながら、美織はパンツが見えちゃう・・・と、見当違いな拒否反応を示す。
生命が危うくなるくらいの吸血をされているかもしれないのに。
男はあお向けの美織のうえにのしかかってきて、こんどは髪の毛を掻きのける。
豊かな黒髪は、丸ぽちゃで容貌がいまいちと自認する美織にとって、ほぼ唯一の自慢だった。
その黒髪を、男はまるで貴重品を取り扱うかのように、丁寧に搔きのけてゆく。
掻きのけられた黒髪のすき間から、白い首すじが覗くと――分厚い熱情のこもった唇が、強引に押し当てられてきた。
ナメクジかヒルのように這いまわる唇に秘められた唾液の熱さにへきえきしながら、美織は逃げ出したい思いをけんめいにこらえている。
その思いが通じたのか、寺浦は美織の肩をギュッと抱きすくめ、抑えかねた息遣いを性急に首のつけ根へとおろしてゆく。
ぢゅぶ・・・っ。
不気味だ・・・ホラーだよっ。
美織はそう叫びたいのをかろうじてこらえ、寺浦の吸血に身をゆだねた。
ちゅう――っ。
熱烈に這わされた唇が、けんめいに自分の血を吸い取ってゆくのを感じながら。
美織もまたけんめいに、悲鳴をこらえつづけていった。

きみは自分のことを、でぶだと言って、自虐しているそうだね。
でもぼくにとっては、きみのそうした肉づきのよさも、十分魅力なんだけどな。
なにしろ、きみの身体からは、血液がたっぷり採れる。これはありがたいことなのだ。
きみを襲う日は、同僚が1人よけいに助かるだろう。毎日2~3人襲っているからな。

寺浦の言いぐさに、美織は組み敷かれたまま冷ややかな視線を返しながら応える。

それだけじゃないでしょ?ストッキング・・・

う、ふ、ふ、ふ。
寺浦はくすぐったそうに笑う。
こんどから、穿き替えをいつもよりよけいに一足、持ち歩くことをすすめるよ。
もちろん、そうするつもりです――2足でも3足でも・・・
オフィスに救う魔物に魅入られた娘は、自分が術中に堕ちたとも気づかずに。
いつものひたむきさをひたすら、あこがれていた上司にぶつけつづけてゆく。
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潔癖OLのストッキング 2 ~恋人の視線~
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某男子校の学校案内より。

コメント

OL目線、良いですね。もしかしたら柏木さんって本当はOLさんなんじゃないですか?!

美織の少しふっくらしたOL制服姿を想像してしまいました。
OL制服のタイトスカートから伸びるストッキング穿いた脚は、吸血鬼じゃなくてもかぶりつきたくなりものですが、美織みたいに脚にかぶりつかれて、ちゅうちゅうされる様はかなりエロい状況ですね。

>・・・自分が術中に堕ちたとも気づかずに。
と言うことは、今後の展開もあるということでしょうか。もちろんまだ処女ですものね!?

OLさんの話もかなりツボにはまりました♪
by ゆい
URL
2016-10-10 月 06:10:24
編集
> ゆいさん
そういえば、OLの話ってあまり描いていないんですよね。
決して嫌いなテーマではないのですが。
「成人女子」というカテゴリのお話があまり多くないのも、ヒロインがOLというのが少ないからなのかも。

OLをテーマにした連作に、こんなのがあります。

連作:office
http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-category-19.html

10年くらい前に描いたものですが、当時はずいぶんとはまっていて、
↓みたいに登場人物の紹介記事まで描いていました。
(^^ゞ

http://aoi18.blog37.fc2.com/blog-entry-72.html

コチラを御覧になって、興味が湧いたら読んでみてね。^^

正体はOLなのでは?って言われて、どきりとしました。
そうなんです。
リアルに体験していることって、案外描きにくかったりするじゃないですか。(嘘)
by 柏木
URL
2016-10-10 月 08:30:37
編集

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