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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

気丈。

2016年10月22日(Sat) 07:28:41

公園の朝もやのかなたから、濃紺の制服姿がのろのろと、こちらに向かって歩みを進めてくる。
足許を引き締めるのは、真っ白なハイソックス。
グレーのひだスカートとぴかぴかの黒の革靴にしっくりと似合う、絶妙のアンサンブル。

少女の歩みが遅いのは、ほとんど俺のせい。
夕べも吸った。その前の日も吸った。たぶん、そのまた前の日も――
なのに彼女は、俺の求めに応じて、今朝もこうして通学路をはるかにはずれ、来てくれる。
牙の毒でたぶらかしたわけじゃない。
そんなことだけでここまでいうことを聞いてくれるような、自分のない子じゃない。
いや、ほんのすこしはたぶらかしたか・・・
けれども強い意志を秘めた瞳は、まだあんなに遠くにいるというのに、
しっかりとまっすぐに、俺を目ざして近づいてくる。

遅れてごめんなさい。
きょうは、どうしても学校に行かなければならないの。
言いにくそうな謝罪の言葉。
そして、自分の事情を説明するには、あまりにも言葉足らずな言い訳。
ほんらいは、人に頭を下げることなど大嫌いな、高慢で気の強い少女。
それがいまは、俺の隣に腰をおろして、「どこから噛んでもいいわよ」って顔をしている。
すまないね。
俺はひと言囁くと、そろそろと彼女の足許にかがみ込む。
真新しいハイソックスに浮いた細めのリブが、ゆるやかなカーブを帯びて、たっぷりとした脚線に沿っている。
整然としたリブの流れは、「これから学校に行くのよ」という少女の凛とした気合を伝えるように。
まっすぐとしたカーブを描いていた。
俺はどうにもならなくなって、爛れた欲情でいびつに膨らんだ唇を、ブチュッと圧しつけていた。
恥知らずな唇を吸いつけて、しなやかなナイロン生地の感触をたしかめるように、ふくらはぎをなぞってゆく。
お行儀よくきちんと履かれたハイソックスを微妙によじらせて、
じょじょにずらしていった唇のあとを、よだれの痕が拡がってゆく。
そのあいだ。
彼女はじいっと何かをこらえるように、地面の一点を睨みつけて。
そして、俺のほうへは目も向けようとしない。
目の前の屈辱が、そもそも最初からありはしないのだと言わんばかりに。

いつもなら、そのままガブリといくところだったが。
きょうはなぜか気が引けて、彼女のハイソックスによだれの痕だけを残して起き上がる。
横抱きにして引き寄せると、彼女はなんの抵抗もなく、俺の腕のなかに落ちた。
咥えたうなじのなめらかな皮膚は、かさかさに干からびた俺の唇に、初々しい体温を心地よく伝えてくる。
俺はとうとう我慢できずに、ググッ・・・と牙を沈めていった。
じわじわとにじみ出るうら若い血潮を、じゅるじゅると汚らしい音をたてて、吸い取っていった。
そのあいだもずっと、彼女の目線は、おぞましい吸血行為を全く無視するかのように、地上の一点を睨みつづけていた。

今朝は少なくて、ゴメンね。
俺が手かげんしたのを、この子はとっくに見通していた。
かまわない。ちゃんと学校行けよ。
俺も瘦せ我慢をして、そう応えてやる。
明日は学校お休みだから、帰りにまた寄るね。
無理するんじゃないぞ。
無理なんか、してない。あなたこそ、無理しないで。
生意気な少女は、どこまでも減らず口をやめなかった。
ふと気がつくと。
彼女のことをしっかりと、抱きしめていた。

制服越しに伝わる体温が、彼女の心意気をありありと、伝えてくる。
だいじょうぶ。きょうもこの子は、がんばれる。きっとこの子だから、がんばれる。
帰りを愉しみにしているぞ。
虚勢を張った負け惜しみを、彼女はすぐに見抜いたはず。
けれどもそんなことは色にも出さず、しつようだった抱擁からスッと身を離すと、
期待しててね。
そっけなく言い捨てて、歩みを進めていく。
今朝はまだらもように彩られることのなかった白のハイソックスの歩みが、
整然と、ゆったりと、朝もやの彼方に消えていった。

見あげれば、天井が一段高くなったような青空――
気がつけば、周りは秋一色に彩られていた。
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