FC2ブログ

妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

情夫つきの婚約者

2017年01月11日(Wed) 07:59:22

お見合いの席で、彼女は言った。
「私、もう処女じゃないんです。
ちゃんと男がいるんです。
結婚してもたぶん、その人とのお付き合いを続けると思います。
そんな女と、結婚したいとは思いませんよね?
この縁談。できれば貴男のほうから、お断りになってください」
お見合い写真に添えられた佐知子という彼女の名前は、
清楚な面差しをたたえる顔写真と良くマッチしていたけれど。
彼女の告げた穏やかならざる告白もまた、容貌との落差とは裏腹に、
その繊細な目鼻立ちと不思議にしっくりと重なっていた。
僕は言った。
「もしかして、お相手の男性は吸血鬼ではないですか?」
彼女は驚きに、目を見開いた。
ふつうの人には見えないといわれる首すじの咬み痕が、僕にははっきりと見えたのだから。

「友だちに、吸血鬼がいるんです。
子供のころから面白半分に血を吸わせてやっていて、
“お前が結婚するときには、お嫁さん紹介してくれ。できれば処女の生き血を吸いたいな”
なんて、言われているんです。
友だちの嫁さんのほとんどは、あいつの餌食になっているんですよ。
だから僕もたぶん、あいつにやられちゃうんだろうなあと思っていて、
それでつい、結婚が遅れてしまっているんです。
ああ、でも、もしも僕たちが結婚したら、貴女の彼氏と、僕の友だちと、吸血鬼同士で競争になっちゃいますね」
「だいじょうぶだと思います。あの人たち、仲間どうしでけんかはしないことになっているみたいだから」
よどみなくそう応える彼女に、僕は同じ種類のマイノリティ同士が感じるような共感を覚えた。
お相手の吸血鬼氏に、逢わせてもらえませんか・・・?という僕の問いに、彼女はちょっと嬉しそうに頷き返した。

想像した通り、彼女のお相手は、彼女のお父さんよりも年上の、老紳士だった。
初対面のときの彼女がみせた穏やかな雰囲気が、彼女を支配している男の気配をそれとなく、にじませていたのだ。
老紳士を前に、僕は自分でも思いがけないことを口にした。
「SМが本当に好きという人は、パートナーに縄をかけるときも丁寧に縛るそうですね」
思わず口を突いて出たそんなぶしつけな言葉を、紳士は穏やかに受け止めてくれた。
「あなたは適切な表現をよくご存知ですね」
私どもはSМはやりませんが、吸血行為というのは、それに近いものなのかもしれません。
もちろん、栄養の摂取という切実な部分もあるけれど。
私たちはしばしば、純粋な愉しみとして、パートナーの血を吸いますからね。
紳士はそうつけ加えた。
たしかにそうだろう。彼らはSで、僕らはMだ。
そして、SとMとは、またとない取り合わせで、ウマが合う。
僕はつづけて言った。
「彼女が一生独身でいることを、貴男は望んでいらっしゃるのですか」
「そんなことはない。彼女には、ぜひ幸せな結婚をしてほしいと望んでいる。
 けれども彼女のほうが、頑として拒んでいるんだ。
 私との関係が知れてしまって、それで平気でいる夫はいないだろうと。
 彼女のお母さんは、離婚歴があるんだ。
 お母さんもわしに血を恵んでくれていて、それが最初のご夫君にばれてしまったのでね。
 いまのご主人は、わしらにも理解のあるお人だから、ご主人もわしと仲良くしてくださるのだよ」
母親にできることが、娘さんにも可能だと良いのだが・・・
吸血鬼という陰にこもった役柄とは裏腹に、少なくとも表向きだけは地震を肯定的に生きているようにみえたその老人は、
初めて悩ましい表情を泛べた。
まるで、まな娘の行く末を案じる年老いた父親のように、僕の目には映った。
相手は吸血鬼で、僕自身もその身に血を宿した人間。
なのに相手は獣にはならずに、こうして会話が成立している。
このひとは、僕の友だちと同じ種類の存在だ。僕ははっきりと、そう感じた。
「ほかの吸血鬼と対象が被った場合、どうしているのですか」
紳士はにっこり笑って言った。
「わしらは仲間うちでは争わない。代わりばんこにやるよ」

彼女とは、輪姦の場で知り合ったらしい。
詳しくは話してくれなかったが、用心深い良家の娘がふと見せた隙に巧みにつけ入って、
初心だったころの佐知子さんのことを、仲間数人で分かち合ったらしい。
それでもそのなかでは、彼がまっさきに彼女のスカートの中に手を入れたのだ、と、誇らしげに語り、
彼女は紳士の隣で、そんな子供じみた自慢話を、くすぐったそうな含み笑いを泛べて聞いている。
初体験の記憶から、悪しき感情はすべて消し去ることができているのだろう。
図に乗った彼は、さいしょに娘をいただいて、それから母親を狙ったのだという。
「だって、娘の血が旨ければ、当然母親にも興味を持つものだろう?」
紳士の大真面目な言いぐさに、僕は思わず吹き出してしまったが、そんな非礼を紳士は笑って受け流してくれる。
「でも、ご主人はそんな関係を許してくれなかったんですね?」
「そうだったね。本当に残念だった。相手の女を離婚させてしまうのは、吸血鬼としては失格なのだ」
そんな理屈、初めて聞いた。
けれども彼がその離婚を心から悔いているのは、態度を見てわかった。
「ま、いまのご主人にめぐり会えて彼女は幸せになったのだから、それはそれでよいとしているし・・・」
紳士はちょっと含み笑いをして、それから言った。
「もっと嬉しかったのは、前のご主人が前非を悔いて、わしのところにやって来て、再婚相手を紹介してくれたことかな」
前妻を幸せにしてくれたお礼と、わしと後悔をさせたおわびをしたいから、喉が渇いたときにはうちに来てくれと誘われたというのだ。
「もちろん、ありがたく頂戴した。ご主人のまえでね」
佐知子さんがさすがに、「かわいそうだわ、お父さん」と言うと(そう、彼女の実の父親のことなのだから)
「そんなことはない。わしが新しい奥方がはしたない声をあげるまで放さなかったら、
ファインプレーだとほめて下さったんだぞ」
老吸血鬼は、娘より若い佐知子さんに向かって、まるで子供が意地を張るような態度で言い張ったけれど。
さりげなく使われた敬語にも、妻を二人までも寝取った相手に対する敬意と親しみが滲んでいた。
それにしても、「前非」なのだな、と、僕は思った。
「あのときは逆らってしまって、悪かったね」
佐知子さんのお父さんは、そんなふうに言って、前妻を征服した彼の旧悪を、自分の前非にすり替えていったのだろうか。
彼の老吸血鬼に対する態度が、僕の未来と重なったような気がした。
僕は覚悟を決めて、口を開いた。
もっともそんな構えをする以前に、言葉のほうがなにかに引き寄せられるように、するすると出た。

「彼女との結婚を望んでいます。
彼女は貴男との交際を続けることを希望していますが、僕はかなえてあげようと思います。
貴男が信用できる男性だと感じたからです。
僕の新妻を支配する権利を、貴男に差し上げます。
未来の坂上夫人の純潔を勝ち得た男性に対して、敬意を払いたいのです」
感に堪えたような佐知子さんの視線を頬に感じながら、僕はつづけた。
「でも、お願いがあるんです。僕には子供のころから血を吸わせている親しい友だちがいます。
 たぶん彼も、僕の妻となる女性の血を欲しがると思います。
 佐知子さんに彼を近づけることを、許してください。
 貴女にも――僕の幼なじみのことを、好きになってもらいたい」
「きみは友だち思いなんだね」
老紳士は目を細めた。
「きみのお友だちの身になれば、いまのきみの言葉がどれほど嬉しいことか・・・同じ吸血鬼として、きみの態度に感謝する」
彼は自分自身の独占欲よりも、同族の幸せを優先する男らしい。
吸血鬼になる前には、彼自身自分の血を吸った相手に、妻を差し出したのではないか?ふとそんな想像が、頭をよぎる。
「わしより若いとなると、食欲も旺盛だぞ。だいじょうぶかな?」
老紳士はまな娘をからかう老父のような目をして、彼女にいった。
「セックスもタフかも知れない・・・」
そう言いかけてあわてて口をふさいだ彼女を前に、男ふたりは声を合わせて笑った。
「どうやらきみとは、仲良くやっていけそうだ」
紳士は僕の肩に手を置いた。
「私もそう感じます・・・それともうひとつだけ」
「なんなりと、言ってごらん」
「彼女のことを、まだ処女だと思いたいのです。
僕の婚約者の佐知子さんを、改めて貴男に紹介します。
彼女の夫として、僕は佐知子さんが坂上家に入る資格があるかどうか、知りたいと思っている。
だから、血を吸うことで彼女の身持ちを確かめて欲しいのです。
佐知子さんが処女だと言ってくださったら、私は貴男に処女の生き血を差し上げたことになります。
そして――僕の未来の花嫁の純潔を、改めて貴男に差し上げたいのです。
吸血鬼の理解者として、最良の贈り物を差し上げたいので。
それから、同じことを僕の友だちにもしてあげるつもりでいるんです」
「きみはなかなか、友だち思いなんだな」
紳士は目をしばたいた。
「その友だちのなかに、どうやらわしも入れてもらっているみたいだね」
もちろんですよ、と、僕はいった。


紳士の棲む街で挙げられた僕たちの婚儀は、盛大なものになった。
もちろん、淫らな意味で。
新婦は新郎のまえ、おおぜいの吸血鬼のために純白のウェディングドレスを精液に浸す羽目になったし、
もの慣れた新婦の母親はもちろんのこと、
もの慣れない新郎の母親までもが、永年守ってきたはずの貞操を、婚礼の引き出物がわりに蹂躙されてしまった。
もっともの慣れないはずの僕の父が意外に泰然としていて、
「よく見ておきなさい。
しっかり者のお母さんのお行儀の悪いところなんて、なかなか見れないんだから」
なんて、僕に耳打ちすると、母が新しい恋人に夢中になれるように、自身は悠然と座を起っていったのだ。
花嫁を寝取られるというある意味最悪の災難を悦びに変換出来る能力は、父の遺伝かも知れないと、初めて思った。
じつは前の晩、あらかじめ呼び寄せられた僕の両親は、次々と紳士の毒牙にかかって献血を強いられていた。
彼の持つ毒液の魔力も相まって、彼と意気投合することのできた父は、その最愛の妻の貞操を、こころよく譲り渡していた。
“免疫”を喪失した母もまた、きゃあきゃあと小娘にたいにはしゃぎながら、しっとりと装った黒留袖を、露骨にたくし上げられてゆく。

父の勤め先の人たちも、なかなかだった。
妻以外の女性に手を出す特権を持てるのは、自分の妻を差し出した男性だけ・・・というルールがすぐに行きわたると、
彼らのうちなん人かは、同伴の夫人が晴れ着姿を着崩れさせて祝いの舞を乱れ舞うことに即座に同意してしまった。
夫たちの同意をいいことに、身持ちの正しい奥方も、そうでない奥方も、いちように手荒にあしらわれ、
首すじを咬まれたあげく、犯されていった。
三人も立て続けに経験してしまうと、たいがいの人妻たちはひと声悩ましいうめきを洩らし、悲鳴を喜悦の嬌声に変えていった。

父の上司と同僚は、かねて母に目をつけていたらしい。
自分の妻の貞操と引き替えに、父が見ている目のまえで、黒留袖を着た母を羽交い絞めにして、襟足から卑猥な掌を差し入れてゆく。
父は、「ごゆっくりどうぞ」と声をかけて、妻の受難を許容する雅量をみせていた。
その場限りというのは怖いもの。
参列者に伴われた良家の夫人の実に半数以上が貞操を喪失し、
その見返りを受けた夫たちは意中の女性の晴れ着をはぎ取り、淫らな祝い酒に酔い痴れていったのだった。

佐知子さんの実父さんも、参列していた。
彼はいまの奥さんのことも紳士に譲り渡していたので、淫らな宴への参列資格はじゅうぶんにあったのだが、あえてそうした輪からは遠ざかっていた。
見返りを求めない態度に、むしろ潔さが漂っている。
「奥さんを二人も、あのひとに差し出したそうですね」
僕が称賛のまなざしを向けると、彼からも同じ種類の視線が返されてきた。
「きみだって、自分のお嫁さんの純潔を、なん度も捧げているそうじゃないか。
こんど、うちの春代もそんなふうにして、彼らにもてなすことにしてみるよ」
彼の足許では、黄色の着物を着込んだいまの奥さんがみんなに転がされていて、
着物の下をはね上げられて豊かな太ももをあらわにしている真っ最中だった。


あとがき
きのうの朝おもいついたお話を、読み直してあっぷしました。
さいしょはタイトル通り佐知子さんがヒロインなのですが、
後半になると花婿のお母さんや佐知子さんのお父さんが大活躍?してしまいました。
(^^ゞ
とくに佐知子さんのお父さんは、べつにお話を創ってみたい気がしています。
期待せずにお待ちください。^^
前の記事
見返り。
次の記事
ちょっぴり解説。

コメント

コメントの投稿

(N)
(B)
(M)
(U)
(T)
(P)
(C)
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://aoi18.blog37.fc2.com/tb.php/3387-6af349d2