淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
タウン情報 吸血鬼を受け容れた街に新現象――ひっそりと広まる女装熱
2017年01月24日(Tue) 06:57:19
「来週から、女子の制服を着て学校に行きなさい」
高校二年生のとき、岸村裕美さん(仮名)は父親からそう言い渡され、面食らった。
翌日母親に付き添われて町内の制服販売店に行って採寸してもらい、
数日後にはできあがったばかりの女子の制服を着用して登校するようになったという。
受け入れ側の学校は、事前に父兄からの届出を受理しており、担任を通じて周知もされていたため、
同級生をはじめとした学校関係者は、女子の制服を着用した裕美さんを違和感なく受け容れたという。
「うちの学校の制服はブレザーだったので、まだ違和感は少なかったと思います。
セーラー服の学校の子は、登校初日の緊張感がハンパじゃなかったみたいですよ。
でも、私のときも、スカートの下がスースーして、慣れるのに何日もかかりました」
裕美さんは、笑いながらそう語る。
女子の制服を着用して登校する男子生徒は、同校ではそれほど珍しくないという。
街は数年前から吸血鬼と共存を開始しており、女性の家族や知人の身代わりとなるために女装をする男性が増えたためである。
市内に三店舗ある制服販売店にもこうした現象は認知されており、男子生徒が女子用制服の採寸をするための試着コーナーを設けているところもある。
制服販売店を経営して30年になる「尾釜制服店」の店主(55)は、
「数年前、それまで売れ残っていた大きい子用の制服の在庫が一掃されて大助かりだったのですが、
その後も注文が相次ぎ、問屋さんにも事情は話せず困りました」
と笑う。
斜陽化著しかった呉服店も、息を吹き返しつつある。
「この数年、成人式のお振袖を着たいという男性が目だっています。特に赤や紫など、普段は着られない色が好まれているようです」
創業百二十年以上という「須木物和装店」の店主(70)も、そういって目を細める。
「いまの若い人は、いいですね。私のころには考えられなかったことです」
レンタルよりも買取が圧倒的に多いのは式後に恋人の吸血鬼に振り袖姿を披露し、血を吸ってもらうからと言われているが、
日常も好んで婦人物の和服に身を包む男性が増えるなど、
「家族の身代わりに吸血されるため」という本来の意図を越えたかかわり方をするケースも増えてきたようだ。
最初に取材した裕美さんは言う。
「私は男女どちらでもありそうな名前だったので不自由していませんが、明らかに男の名前という人は、名前を変えちゃう人もいるようですよ」
最初は「息子を生んだはずなのに」と嘆いたという両親は、自身も吸血を体験してからは裕美さんの立場に理解を示すようになり、
誕生日には婦人物のスーツをプレゼントされることもあるという。
市内の企業にOLとして勤務する裕美さんは、近々市内に住む20代の男性とお見合いをする。
「いまでも正式な場での着付けは、母に見てもらっているんですよ」
と恥じらう裕美さん。良縁に恵まれることを記者も願っている。
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