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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

小悪魔

2017年02月09日(Thu) 06:08:09

長い長い黒髪で首を締められたら、どんな気分になるかわかりますか?

そんな一節。どこかの本で読んだはず。
その子のことを初めて見かけたときに、どうしてそんな言葉が思い浮かんだのか。いまでもよくは、わからない。
「そんなこと感じたの。あなた、直感が鋭いわね。女の子みたい」
あとになって僕の話を聞いた彼女は、そういってクスッと笑った――

僕が彼女に初めて会ったのは――もういいや、リサという本名で書いてしまおう――この街に越してきて10日ほど経ったある日のことだった。
「大変です。ご主人が大けがをされました」
父さんよりもずっと年上のその律儀そうな白髪頭の男が僕の家を訪れて、母さんにそう告げたのだ。
リサはその男の娘だといって、あとについて来たのだった。
不機嫌そうな怒り顔で、へどもどとあいさつをした僕には返事すらしないで、睨み返してきた。
おでこがまる見えになるほどひっつめたポニーテールの長い長い黒髪は、真っ白なカーディガンになまめかしく映えていた。
まだ、年ごろというには入り口の年代のはずなのに。
まだ、同じクラスの子として出会って、2週間もたっていないのに。

「早く行こ」
よそ行きのスーツに着替えるのに時間を取られた母さんと、先導役のはずの自分の父親を置いて、
リサは僕の手を取って、いきなり駆け出した。
つんのめりそうになりながらも、僕は必死であとを追った。
彼女の握力は強く、振り放すこともできないままに。
母さんの姿が見えなくなるほど走ったあと、さすがに息を切らしたリサは、「こっち」とみじかく告げると、
道を外れた生垣の向こうへと、僕のことをいざなった。
いきなり押し倒されて尻もちをつかされた僕は、「なっ、なにを・・・!?」って言ったきり、二の句をつぐことができなくなっていた。
首のつけ根のあたりに彼女の歯を感じて、身動きできなくなっていたのだ。
長い長いポニーテールは、こういうふうに使うのだと言いたげに僕の首に素早く巻かれ、
窒息しそうになった僕は、じたばたしながら結局どうすることもできずに、そのまま首を噛まれていった――

「吸血鬼だったの?きみ・・・」
無言の哂いで応えるリサの頬は、僕から吸い取った血を、まだぬらぬらさせていた。
「うちのパパに、あなたのママを襲うチャンスをあげてくれる?」
否応なしのお願いだった。
「ちょっとのあいだ、ここから覗いているだけでいいんだから」
え?
イタズラっぽく輝く黒い瞳にそそのかされるようにして、生垣の向こうの道に目をやると。
そこで母さんがたったまま、リサの父さんに噛まれているところだった。
さっき僕が、リサに噛まれていたのと、おなじように。
強く横抱きにされた母さんは、どうすることもできずに目を白黒させながら、首すじを嚙まれつづけて、
チューチュー音をたてて、血を吸われている真っ最中だった。
チャコールグレーのジャケットの肩先に、真っ白なブラウスに、吸い取られた血が点々と散っているのが、
ドキドキするほど・・・なまめかしかった。
なんで、「なまめかしい」なんて、感じてしまうんだろう?
訝しく思う僕の首すじに、リサはまたも嚙みついてきた。
「だれかが血を吸われているのを見ていると、こっちも欲しくなっちゃうんだから」
って、言いながら。
彼女はつねるような痛みを無遠慮にねじ込んできて、容赦なく僕の身体から血を吸い取っていった。

「すまないですね」
太い樹を背に追い詰められた母さんは、足許にかがみ込んでくる男をまえに、やっぱりどうすることもできないで、
しっかりとした肉づきのふくらはぎに、唇を吸いつけられてしまっていた。
脚に履いていた肌色のストッキングが、くしゃっと引きつれて、みるみるうちに破けていった。
貧血を起こした母さんがその場に尻もちをついてしまうと、リサは僕を引きずり出すようにして生垣から通りのほうへ引返して、
仰向けに倒れた母さんのすぐ傍らに僕のことを引き据えると、こんどは足許に噛みついてきた。
噛み破られたハイソックスに滲んだ血が、生温かく拡がった。
母さんの隣で僕が、リサにハイソックスの脚を噛まれていって。
僕の隣で母さんが、リサの父さんに肌色のストッキングをびりびりと破かれていって。
「こっち行きましょ」
リサは僕のことを引きずり回すようにして母さんの傍らから離すのと、
リサの父さんがまるで獣が獲物を漁るようにして、母さんのブラウスの胸を押し拡げるのとが、同時だった――

「うふ。お〇ん〇ん、勃ってるよね。たいがいの子が、そうなんだ。男の子って、面白いね」
半ズボンのうえからあてがった手をそのままベルトにかけて、僕の腰周りを引き剥ぐと、
リサは遠慮会釈なく、僕のペ〇スを咥えていった。
ためらいなどかけらもない、慣れたやり口だった。
まだ稚なげな唇が僕のペ〇スを呑み込んで、舌先が挑発するように、先端を刺激する。
思わず不覚にも。
びゅびゅびゅっっ・・・と、吐き出してしまった。彼女の口のなかで。
「行儀悪いね」
リサはしんそこ怒った顔つきで僕を睨み、それでもゴクゴクと呑み込んでしまった。
「ほら、あんたのママも、愉しんでいるわよ」
指さす方向でくり広げられる情景を、目にしたくはなかったけれど、やっぱり目を向けてしまった。
向けた目はそのままクギづけになって、唖然とした僕の横顔を面白そうに眺める視線に応えることさえ忘れていた・・・

「洋太のパパ、大好き!」
自宅のソファでくつろいだ父さんに、ソファの後ろからリサが抱きついたのは、その数日後の土曜日のこと。
僕と同じ経緯で、父さんはあの長い長いポニーテールの黒髪を、まんまと巻きつけられてしまって。
窒息寸前まで追い込まれながら、首すじを噛まれていった。
「お前、母さんを誘い出して噛ませたんだって?」
そう訊いてくる父さんの目は、怒っていなかった。
お互いにお互いの首すじにつけられた、同じサイズの歯形を見つめ合いながら。
「まあ、仕方ないか」と、うつろに笑い合ってしまっていた。
さっき、リサの父さんに連れ出された母さんは、夫婦のベッドに押し倒されて、切ない吐息を吐きつづけている。
気前よく咬み破らせてしまったストッキングは、早くも片方、脱がされていて。
花柄のフレアスカートは、齢不相応に逞しい腰の侵入を受けるままにくしゃくしゃにされて、
それを父さんはドア越しに、眩しそうに見つめている。
「よそで話しちゃ、ダメだぞ。父さんと母さんの不名誉になるからな」
目を白黒させながら、母さんの浮気現場から目を離せなくなっている父さんのことを冷やかすように、リサは言った。
「だいじょうぶよ。うちのクラスの転校生のお母さんは、みんなうちのパパが食っているから」

それ以来。
リサのパパと母さんの交際が、半ば公然と始まった。
「うちのパパ、あなたのママが気に入ったみたい。
 2日に一度は連れ歩いているわ。
 ほかの子のママよりも回数多いし、逢っている時間も長いみたい」
ひとをこばかにしたようにフフッと哂うリサは、つぎの瞬間悩ましい目つきで、僕に迫る――
「あなたもあたしに、噛まれてくれるわよ・・・ね・・・?」
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