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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

むかし話~鬼と新妻

2017年02月09日(Thu) 07:23:38

昔々、ある村に、凄腕の吸血鬼が棲んでいた。
かつては村人たちを吸い殺し、屍体を寺の山門の梁にぶら提げてさらしものにしたというが、真偽のほどは定かではない。
いまでも人妻や娘をかどわかしては血を吸い、生娘はそのまま家に帰したが、
人妻やすでに男を識っている女は、夜もすがら愛し抜かれて骨抜きにされ、夢見心地で家路をたどったそうな。
生娘が無傷で返されるのは、鬼が生娘の生き血を好むからだと言われていて、
その証拠にいちど吸われた娘はなん度でも、鬼に誘い出されて、村はずれにある鬼の棲み処に自分から出向いていくようになるのだった。

作治は去年、隣村から嫁をもらったばかりだった。
嫁の齢は19、鬼がこれに目をつけぬはずはない。
鬼は作治の新妻をなん度か狙ったものの、
それが白昼だったためか、女にのぼせあがって手元が狂ったものか、まだ想いを遂げ切れないでいた。
けれども鬼が嫁を汚してしまうのは時間の問題と、だれもが観念していた。
どうやら鬼は、いつにもまして真剣なようだったから。
嫁の不行儀をしつけるのは姑の役割であったけれど、
その姑にしてからが鬼にモノにされていて、もう長いご縁もあるものだから、
下手をすると姑が嫁を村のしきたりになじませるために、作治の嫁を連れ出しかねないふうだった。

作治は身体の弱い男だった。
鬼を退治して嫁を守るなど、思いもよらず(作治に限らず、そんなことのできる男はいなかった)、
とうとう思いかねて鬼の棲み処を訪ねていった。
作治は鬼に頭を下げて、自分の嫁を襲わないでくれと願ったが、
鬼はあべこべに言ったものだった。
お前の嫁に惚れてしもうた。いちどで良いから想いを遂げさせてくれまいか。
旧家の跡取りだった作治は自尊心の強い男だったので、憤然としてそれを断り、家に一歩も近寄るなと言ったものだった。
その翌日、鬼は作治の嫁をつかまえて、ひと晩かけてたっぷりと、愛し抜いたものだった。

数日後。
病弱な作治の財産を狙っていた近場の悪党どもが、こぞって何者かにひねりつぶされたと、村の者たちは噂した。

さらに数日後。
作治がふたたび、鬼の棲み処を訪ねてきた。
お前のおかげでわしの嫁は、めろめろになってしもうた。
夜な夜なお前を恋しがって、夜の営みもままならぬ。
勝手に通え。
そのかわり、わしがおらぬ昼間の間だけぢゃぞ。

そして一年後。
鬼に惑った作治の嫁は、作治と鬼とに代わる代わる愛されて、
それでも立派に作治の跡取りをもうけていた。
鬼は種なしだったので、女を犯してもその家の血すじを乱すことはしなかったのだ。
作治の家は裕福だったので、嫁は子供を下女に任せて自由に昼間は出歩いて、鬼の棲み処を訪ねていった。
「勝手に通え」と突き放したはずの作治は、嫁の後をひっそりと尾(つ)けていって。
行先を確かめるだけでは済まさずに、鬼が嫁を愛し抜いて行く様を、やはりひっそりと、見届けていくという。
見栄っ張りな作治の、さいきんの言いぐさは
「うちの嫁は身持ちが固くて、鬼に迫られても三月は操を守った」とか、
「鬼のやつ、たいがいの家の嫁はすぐに手なずけてしまうのに、
うちの嫁に限ってはそうはいかず、のぼせあがったあまりに、想いを遂げるまでになん度も仕損じたそうな」
とか抜かしてをるそうな。
きっと。
作治の跡取りが成人して嫁を迎えたあかつきには。
姑だけではなくて義父までも、鬼が跡取りの嫁の密(みそ)か夫(お)となるよう、そそのかしていくのだろう。
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