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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

真冬のデート

2017年02月12日(Sun) 06:24:17

やっぱり、いやらしいよぅ。
セーラー服の少女は天を仰ぎながら、ため息交じりにそう言った。
けれども、足許にかがみ込んできた吸血鬼が、黒のストッキングのうえから唇を吸いつけてくるのを、それ以上咎めようとはしなかった。
色白の頬に、ルージュを刷いていないのにまっかな唇が、齢不相応になまめかしい。
細い眉毛を、ちょっとだけ悔しそうに逆立てて。
よだれに濡れた唇が、クチュッと音をたてて薄地のナイロン越しに圧しつけられてくるのを、
ベンチの座席の端をギュッと握りしめて、目をつぶってこらえた。

あー・・・
眩暈をこらえながら。
少女は上半身を頼りなさそうにぐらぐらと揺らつかせていた。
黒のストッキングは両脚とも、派手な裂け目を走らせてしまっている。
男はよほど、少女の履いているストッキングに執着しているらしい。
それでもまだ、好色な舌を擦りつけるのをやめようとせずに、薄地のナイロン生地をふしだらに皺寄せてゆく。
いよいよ少女の身体がバランスを喪った瞬間――
おっと。
目にもとまらぬ素早さで男は身を起こし、少女の傍らに座り込んでその身を受け止めた。
分厚い掌にがさつな手つきで髪を撫でられながら。
少女は口を尖らせて、「ばか」と言った。

連れだってたどる家路。
少女の足許はふたたび、真新しいストッキングで、隙なく染められている。
貧血が収まるまでベンチで横になっている間。
舐めるのはいいよ。でも、破かないで。
ちょっと切なげな顔をした少女の願いを容れて、男はチロチロと舌を這わせつづけていた。
はた目にはわからないけれど。
知的な墨色をした薄地のナイロン生地には、男の好色なよだれがたっぷりと、しみ込まされている。

家の玄関のまえで、男はコートの襟を立てたまま、言った。
じゃあね。
うん。
少女は濡れた瞳で、男を見あげる。
男はそんな少女のか細い肩を、優しく優しく抱きしめる。
黒マントの吸血鬼が、獲物を包み込んでしまうように、身体と身体を寄り添わせて。
少女はこの時を待っていたかのように、幸せそうにほほ笑んで、男に身をゆだねた。
木枯らしが控えめに吹き抜けるなか、ふたりはじっと佇んで、しばらくのあいだ、そうしていた。娘の帰りを待っている家族の立ち居振る舞いが、気配となって外に伝わってくる。
それはは、外でのふたりのようすを知りながら、わざと知らぬふりをしているかのようだった。

おいしかった。
男がぬけぬけと言うと、
女は白い目で男を睨みあげ、もういちど「ばか」と、言った。
けれども、玄関のドアを開けるときもういちどだけ振り向いた少女の目は、「またね」と本音を呟いている。
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