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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ハイソックスのころ。

2017年02月21日(Tue) 07:12:48

遠い昔、男の子でもハイソックスを履いていたころのこと。
ハイソックスを履いたふくらはぎを咬まれて吸血鬼になってしまった僕は、
吸血鬼を受け容れることを決定したこの街で、いままで通り登校することを許可された。
学校で不用意にクラスの子を襲わないように、
母さんや担任の女教師、母さんよりもちょっと若い養護教諭の先生の献血つきで。
仲の良かった男子のなん人かも、献血に協力してくれた。
吸血鬼から伝染(うつ)されたハイソックス・フェチの性癖も理解してくれて、
血を吸っても良い日には、わざとハイソックスを履いてきてくれた。
でももちろん、中にはそうではない子も多かった。

「履いてあげる靴下考え中だから」――
そういって僕の吸血をえん曲に断ってきたのは、仲良しだったSくん。
さいしょは本気にして、いつあのお気に入りの、赤のラインの入ったハイソックスを履いてきてくれるのだろう?と思っていたけど、
それ以来、彼はハイソックスを学校に履いてこなくなった。
「悪いけど、キモチ悪い。ゴメンな」
そういって去っていった友だちもいた。
そのたびに声をかけてくれたのは、Kくんだった。
「気にすんな。こっち来なよ」
Kくんはいつもそういって、僕を後者の裏に呼んで。
毎日のように履いてきているハイソックスのふくらはぎを、咬ませてくれるのだった。
半ズボンの下眩しい、真っ白なハイソックスのうえから、僕は夢中になって、Kくんの足許に唇を吸いつけていった。
スポーツマンのKくんの血はいつも活き活きとしていて、心身ともに僕のことを力づけてくれた。
教室に帰るとき、Kくんはハイソックスをはき替えないで、
赤黒い血のシミをわざとそのままにしてクラスのみんなと親しんでいた。

まつ毛の長いやさ男のYくんも、僕に同情的だった。
いつも女の子みたいな、薄手のストッキングみたいなハイソックスを履いていて、
Kくんが部活に行ってしまった後、「ちょっと」と僕のことを呼び止めて、
だれもいなくなった教室で、ハイソックスの脚を咬ませてくれた。
貧血に翳る憂い顔がどことなく女ぽくて。
Yくんの血を吸っているときは。
なぜか、異性の血を吸っているときのような陶酔感を覚えていた。

年月が経って、わかったことがある。
もちろん、吸血鬼になった僕のことを不気味がった子もいたけれど。
離れていった多くの仲良したちが警戒したのは、僕に彼女を奪(と)られちゃうかも?ということだったらしいことを。
それと察したKくんは、自分の彼女を真っ先に紹介してくれた。
「処女の血が好きなんだろ?ぼくの彼女紹介してあげるよ」
みんなの前で僕にそういって周囲を驚かせたKくんは、
翌日みんなの前で、恋人の優子さんを紹介してくれた。
学校の成績が良くて快活な優子さんは、万年学級委員。
Kくんとは似合いのカップルだった。
「映画のヒロインになったみたい・・・」
優子さんは両手で恥ずかしそうに口を覆い、「きゃー」とおどけながら、僕に首すじを咬ませてくれた。
「ハイソックス汚したらママに怒られるから、きょうはゴメンね」
Kくんを含むみんなの前で堂々と吸血された優子さんはサバサバとした言葉づかいで、
僕のフェチな行動を封じていった。

翌日のこと。
Kくんはみんなのいないところに僕を呼んで、
隣の教室から呼び出していた優子さんと引き合わせ、「きょうだったらOKだから」といって、
紺のライン入りのハイソックスを履いた優子さんの脚を、僕に咬ませてくれた。

優子さんとは、二人きりで逢ったこともあるけれど。
妖しい関係には、とうとうならなかった。
Kくんとの友情が、それだけたいせつなものだったから。
そしてKくんがじつはだれよりも、僕に優子さんを奪(と)られてしまうのを心配していたから。

初めて性的な関係を結んだのは、同性のYくんだった。
女のような憂い顔の持ち主のYくんは、じつはいまでいうトランスジェンダーだった。
そんな言葉も認識もない時代、彼はずいぶん悩んだらしいけれど。
ある日のこと、彼女のできない僕のことを気遣って、
就職して家を出たお姉さんが高校生だったころの服を着て現れて。
真夜中の公園で、デートをしてくれた。
両親がYくんを家に残して結婚記念旅行に出かけた夜だった。
僕たちは初めてキスを交わし、Yくんのなまなましい呼気に触発されて獣になった僕は、
Yくんの穿いていたスカートの奥に、好奇心に満ちた掌を、荒々しくまさぐり入れていった。

意外だったのは、その後のSくんの行動だった。
「履いてきてあげる靴下考え中だから」と言いつづけていた彼は、
卒業間際になって、僕がずっと気にしていた赤のラインのハイソックスを履いてきて、
だれもいない教室で、こっそり咬ませてくれたうえ、こんど彼女を紹介してあげるとまで、約束してくれた。
期待しないで待っていたら、ほんとうに彼女を連れて家までやって来た。
彼女は、頑なな性格のSくんを和らげる力を持った少女だった。
Sくんの言うなりになって、僕に咬まれてしまうと。
「時々二人で、遊びに来るね」と、約束してくれた。
僕が過ちを犯したのは、寛大なKくんの花嫁の優子さんではなく、S夫人のほうだった。
一見頑なな彼が、ひそかに見せてくれた特殊な性癖に、僕は生涯かけて感謝することになる。

そのほかにもなん人か、奥さんや恋人を献血用にと紹介してくれた友だちがいた。
僕は彼らの血も吸っていたから、彼らの芯に意図するところを吸い出した血の味から読み取って、
彼らの連れてくる奥さんや恋人を、抱いたり抱かなかったりした。
でも――いまでもいちばん記憶に残る血の味は、
Kくんの彼女だった、優子さんのもの。
彼女への想いは、かなえられることのない淡い想いとして、いまでも僕の心の奥に秘められている。
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