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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

通い合う村

2017年02月28日(Tue) 05:53:31

ある村では、家長だけが人妻に通う資格を持つという。
そして、その家の長が人妻のもとに通う夜、ほかの者がその家に住む人妻に通うことができるという。

「お宅のお父ちゃん、夕べはうちに来たんだぜ」
幼なじみの健吉にそういわれて、富美也はちょっと照れくさかった。
一家の長が夜だれかのお宅にお邪魔するというのがどういう意味なのか、もちろんよく知っているから。
そして夕べは、一家の長のいない家として、自分の妻がよその男に抱かれた夜だから。
「そっか。うちには伯父貴が遊びに来た」
富美也もさりげなく、健吉にそういった。
「そうか。お互い様みたいだな」
健吉は人ごとのようにそういうと、ひと呼吸おいてから呟いた。
「ああいうのって、つい視ちゃうよな」
「お前も?」
驚いて振り向く富美也の反応は、健吉にとって予想外だったらしい。
けれども見つめる目と目がお互いに対する共感を認め合うと、
ちょっとだけ照れくさそうに、健吉は笑った。
「うちでよかったらいつでもどうぞって、お父ちゃんに伝えといて」
どうやら富美也の父にとって、健吉の若妻はお得意先になっているらしい。
「ウン、わかった」
つとめて明るく返すと、健吉はなおも言った。
「でもさ」
「なに?」
「お前のお父ちゃんのほんとの狙いって、じつは貴和子さんなんじゃない?」
貴和子は、富美也の妻である。

そうかもしれない、と、富美也は思う。
戯れに若い嫁のお尻を触るくらい、ごくふつうの日常のように思っていたけれど。
父の貴和子に対する戯れは、執拗なところがあった。
スカートの奥に手を入れられたことも、二度や三度ではない。
それも、富美也の見ているまえでのことだった。

「今夜、貴和子が健吉のとこに泊まることになったから」
勤めから戻った富美也は、父の聞こえるところで母にそういった。
「おやまあ、急な話だねえ」
母親はなんの疑念も持たない声で、返してくる。
「あちらの冬子さんとは、昔から仲良しだもんねえ」
疑念のない声色は、それでもじゅうぶんに、耳をそばだてる夫の気配を意識していた。
そう――富美也が「開花」したのは、母がまだ若いころ夜這いを受け容れているところを目にしてしまったのがきっかけだった。
時代はくり返すんだな、と、富美也は思った。

案の定お父ちゃんは、夜になるとどこかへと、いそいそと出かけていった。
母は母で、だれかのところに電話をかけている。
久しぶりに、若い衆を呼び込むつもりらしい。
富美也は居場所のなさを感じたが、さりとて父が妻に通う図を見たいとは、さすがに思わない。
健吉はたぶん、夫婦の営みを交わすのだろう。
義父と嫁とが密通する部屋とは、部屋を隔てて。
一見なんでもないはずのひと晩が、富美也にとっては、とてもとても長かった。
あくる朝、晴れ晴れとした顔で、時間差を置いて帰宅した父と妻とを、富美也は腫れぼったい顔で出迎えていた。

以来折々、妻の貴和子は夜健吉の家に出かけるようになった。
そのあとを追うようにして、父もまた、そわそわと家を空けるようになった。
母は母で、昔なじみの若い衆を、家に引き入れるようになっていた。
「あんたも、覗きに行けばいいじゃないか」
母はあっけらかんと、息子に笑いかけてくる。
のどかな土地だ、と、改めて富美也は思う。

そのうちに。案の定。
健吉の家では、男どうしが獲物を取り替え合っていると、聞こえてきた。
もともと父は、健吉の若妻と好い仲だった。
富美也の妻の貴和子が健吉の家にしばしば泊りに行っていることは、もう近所では評判になっていたから、
貴和子と健吉の仲が取りざたされるのも、ごくしぜんな成り行きだった。
健吉はいまでは、手持無沙汰な夜を過ごすことはない。
幼なじみと新妻とが乱れ合う夜は、うぶだった健吉にとって刺激の強すぎる眺めだったが、
父と母から受け継いだ血が、それを歓びに塗り替えていくのに、そう時間はかからなかった。

健吉の父もまだ健在だったから、人妻に通う権利をもたなかった。
けれども、
夫が承知している場合は、自由に人妻と逢って構わない。
そんな便利な不文律も、この村には伝わっているのだった。

義父を迎えるため、貴和子が初めて外泊をした夜。
表むきは、健吉と貴和子が通じ合うのを、貴和子の夫が承知した――そういうことになっていたから。

ひとつ夜。
父は息子の幼なじみの若妻と、息子自身の新妻を代わる代わる抱く。
その家の若い夫は自分の妻が抱かれるのを目の当たりにしながら、自分は幼なじみの新妻に息荒く挑みかかる。
まだなんの権利も得ていないもう一人の若い夫は、けれどももっとも貴重な権利を手にしたかも知れなかった。
妻が時間差でまわされるところを、夜通したんのうする羽目になっていたから。
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