淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・
気の毒なことをした。
2017年02月28日(Tue) 06:07:26
かなりたっぷりと、血を吸ってしまった。
ご主人明日も、仕事なんだろう?
気の毒なことをした。
そういって、主人のことをしきりに気にかけるこの吸血鬼。
あたしを強引に愛人にしてしまってから、三か月後のことだった。
どうしてそんなになるまで吸ったのよ?美味しかったの?
そうじゃないけど、彼が抵抗をやめなかったんだ。ぶん殴られるのが怖くって、ついやりすぎたんだ。
ばかねぇ・・・
どちらの男に対してもそう呟いているあたしは、きっと悪い女。絶対、悪い妻。
彼は薬瓶をひと瓶、夫のために飲ませるようにと置いて行った。
翌朝、あたしに言われるままに薬を飲んだ夫は、けっこう元気を取り戻して、出勤していった。
うちの家の名前に泥を塗るやつを許すことは、とうていできないけれど。
喉が渇き過ぎたら、悪いことをするんだろう?
お前が献血して慰めてやらないと、そういうことになるんだろう?
だったらわたしが留守の時に家に招(よ)ぶか、わたしがいるときには出かけていって、献血すればいいじゃないか。
でもいちいち、わたしに断らなくていいから。
そんなこと――夫として許可するわけにいかないだろう?
まわりくどい寛大さをぶきっちょに示す夫に、あたしは妻としての最大の感謝を示す。
あとからついてきて、のぞき見する夫のまえ、ポルノ女優みたいによがってみせて、
ふたりの熱い関係を見せつけてあげることで。
お互いを気遣い合う、男ふたり。
きっとふたりは、同じような血の持ち主なのだろう。
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