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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

喪服選び。

2017年02月28日(Tue) 06:50:25

ねぇねぇ、いろんなのがあるわよ。
婦人服店の一角、それもブラックフォーマルのコーナーで、妻はウキウキしながら服選びを始める。
自分の服ではない。
夫であるわたしに、婦人もののブラックフォーマルスーツを買おうとしているのだ。

あなた、こんなのどうかしら?ブラウスにフリルがついているわよ。
それとも、こういうシンプルなのも、初めてならいいかな。
あっ、これもいいかも。腕が透けててセクシーよ。

片手間を装い、おざなりにウンウンと肯きながら、実は熱っぽい目線で服たちを見比べているわたし。
わたしの女装趣味に、妻はとても寛大だ。
女の服になじんだのは。
親しい友人である吸血鬼が妻の血を欲しがるのを抑えるために、
女の服を着て彼の相手をしたのがきっかけだった。

けっきょくわたし一人の血では足りずに、妻を襲われ征服されてしまったいま。
わたしたち夫婦は、夫婦そろって女の服を着て、彼の家へと足を向ける。
おそろいのストッキングを穿いたつま先を、若い血潮をふんだんに欲する男の家へと向ける。

そんな彼が、ひとつの提案をした。
わたしが血を吸い尽されてしまったと、わたしの身内全員に告げることを。
お式にはみなさん、黒のストッキング穿いてくるわよね?
妻が意味深なことを呟いて、自分の情夫を軽く睨んだ。
この街ではしばしばくり広げられる、吸血鬼たちのカーニバル。
偽装された弔いの場は、すぐに彼らの狩り場に変わる。

あなたも、参列しなくっちゃ。
でも、あなただってばれたらいけないわ。
女の喪服を着て、自分のおそうしきに参列するのよ。
そんなきわどい思いつきに妻は夢中になり、妻の愛人もまた、渋るわたしの背中を押した。
面白そうじゃないか、やって見せてよ。

この婦人服店に来る男性客は、意外に多い。
わたしのような寛大な夫たちが、多く住む街だから。
男性用の試着室へと妻に伴われ、狭い試着室のなか、真新しい喪服といっしょに置き去りにされる。
ワンピースの脱ぎ着は、どうしても背中に手が届かなくって、妻に手伝ってもらった。
漆黒のブラジャー、漆黒のスリップ、漆黒のショーツ。
そして、深い深い黒一色のワンピースにボレロ。
足許はもちろん、薄墨色のストッキング。

女の服を着た夫をまえに、妻は無邪気にはしゃぎながら。

いいわあ。いいわあ。とっても似合う♪
このカッコであなた、吸血されるのよ。
あのひとの牙は強烈よ。あなた、いちころで参っちゃうはずよ。

わたしの記憶では。
咬まれて、いちころに参っちゃって、妻まで紹介してしまったのは、わたしのほうのはず。
でも、そんな順番は、いまではもう、どうでもいい。
偽りの弔いの席には、兄夫婦も妹夫婦も呼んである。
もちろん、彼らのあいだの年ごろになりかけた娘たちも来るだろう。
それに、この女にとっては目の上のこぶである、自分の姑もそのひとりのはず。
しつけに厳しかった気丈な母が、全身から血をむしり取られて淫らに堕ちる光景を、わたしは目にすることになるのか。
あらぬ妄想がつぎからつぎへとわいて出て、黒の喪服に包まれたわが身は、妖しくほてり始めてくるのだった。
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コメント

今日も楽しく拝読いたしました。

>片手間を装い、おざなりにウンウンと肯きながら、実は熱っぽい目線で服たちを見比べているわたし。

イヤイヤを装いながら興味津々の気持ちがとても理解できます。一人ではなかなか行きづらい
婦人服売り場ですが、奥様に唆されてブラックフォーマルを買うことになるとは、面白いシチュエーションですね。


>漆黒のブラジャー、漆黒のスリップ、漆黒のショーツ。そして、深い深い黒一色のワンピースにボレロ。足許はもちろん、薄墨色のストッキング。


ゆいがいつも着用する喪服と同じですよ。
喪服は魔物ですね^^
by yui
URL
2017-02-28 火 23:05:28
編集
>yuiさん
ご返事が遅れました。
このお話は、女装者の心理を意識しながら描きました。
特にご指摘のところは、けっこうすらすらと描けました。
おそらく、”魔”の訪れが濃密だったのでしょう。

ブラックフォーマルという衣装には、不思議な魔力があるように感じます。
女性の礼装というものそのものが、魔力をまとっているのかも。
by 柏木
URL
2017-03-02 木 06:00:51
編集

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