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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

気丈な姑 2

2017年04月11日(Tue) 07:50:13

息子さんの挙式のときからね、貴女にひと目惚れしていたんですよ。
貴女がお嫁さんの浮気の件で私を叱りに見えたとき、
あのときとおなじスーツを着てきたのに気づいて、夢かと思ったくらいです。
気がついたら貴女に迫って、咬んでいました――。
そんな口説き文句を、いけしゃあしゃあと囁く彼は、わたしよりも年上の吸血鬼。

「いいじゃないの、少しくらい。
 美那子さんがするよりも、罪は軽いわ。もう子供を産む心配は、ないんですから」
浮気は夫に対する裏切り行為なのだと、日ごろから嫁を非難するときには必ずついてまわったあのふた言目は、すっかり忘却の彼方らしい。

「いつでも吸わせてあげる」
と、妻は男を家に誘い、わたしのまえで抱かれていったし、
「切羽詰まってるらしいの、あなたもいらして」
と、わたしの血まで栄養補給に提供させられた。

「喉が渇いているんだって。行ってあげなきゃ」
と、夜中もいとわず彼の邸を訪問するときは、必ずこぎれいなよそ行きの服に着替えていった。
「きれいなブラウスを、持ち主から吸い取った血で濡らすのがお好きなんですって」
そんなフラチな嗜好までこころよくわきまえて、よそ行きのブラウスを気前よく汚させる女。
「ストッキングを穿いた脚を咬むのがお好きなの。破いて愉しむんだって。いやらしいわよねぇ」
のろけ話をするような嬉々とした口調でそんなことまで夫に語り、
やはり気前よく真新しいストッキングを脚に通して出かけていって、ためらいなく咬み破かせる女。
そんな女に、いつの間になってしまったのだろう?

とどめのひと言は、家にあげた情夫と組んづほぐれつしたあとに、彼の腕のなかで呟いた言葉。
「もっと若いうちに、お逢いしたかった。
 そうすればもっと美味しい血を差し上げられたし、もっと若い身体で抱いてもらえたのに」
わたしは夫として、引退したほうがよいのか。それとも、かなわぬと知りながら妻を堕とした相手と闘うべきなのか?
思い詰めかけたわたしの気分をほぐしてくれたのは、意外にも彼のほうだった。
「あんたにはつねづね、感謝している。佳い奥様をおもちで、羨ましいですよ」
同性としての賛嘆の念が、瞳の奥の深い輝きにこめられていた――

妻もまた、わたしには少し、気を使っているらしかった。
遣っている最中は、つい言葉のやり取りも過激になるというもの。
「俺だけのものになってくれ」という彼に、
「とっくになっているじゃないの。あたしは一生あなたのもの」
夫のわたしが聞いていると知りながら、そんなことを口走りつつも、
「でもあのひとに、感謝してね。あのひとあってのあたしだし、あたしあのひとのこと心から尊敬しているの」
夫とは絶対別れない・・・愛人の切なる願いを無にしてまで、そう宣言していた。

種明かししてあげようか。
あるとき妻は、意地悪い笑みをたたえながら(それが、わたしに戯れかかるときの、昔からの彼女の癖なのだ)、こちらへとやって来て、囁いた。

ほんとうはね。最初からあなたと別れる気はないの。
彼にもその気はないの。
だって彼、なん人もの血を吸わないと生きていけないでしょ。一夫一婦ってわけには、いかないのよ。
だから、人の妻を餌食にするのがお得意なわけ。
あのひと、言ってたわ。
悠子を近田夫人のまま犯しつづけたいって。
あたし、あのひとの趣味に合わせることにしたの。
身を近寄せる妻の息遣いが、いつになく色っぽい。
いつのまに、彼女はこんな面を持ち合わせるようになったのか。
わたしは彼女をその場に押し倒し、ふたりは久しぶりに夫婦らしい交歓をともにする。

いままで黙認してたけど。こんどはっきり彼に言おう。
永年連れ添った愛妻の悠子を紹介します。
末永い交際を、どうぞよろしくお願いします――と。
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