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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

気丈な姑 6  吸血鬼の遠い記憶

2017年04月13日(Thu) 08:00:19

「イヤです!血を吸われるなんて・・・お義父さま、お義母さま、どうか堪忍してくださいッ!」
うら若い白い頬に血の気をのぼせ度を失って訴える少女に、大人たちは諭すように告げた。
「なあ初枝さん、堪忍していただくのはこちらのほうですぞい。
 あのお方を慰めることができるのは、もはやあんたのうら若い血しかないのですからの」
朴訥な父はとどめを刺すようにそう告げたし、
「初枝さん、世の中きれいごとでは済まないことがあるのですよ。
 当家の人になってくださるのなら、ここをこらえていただかないと」
そういう母は、いつの間にか初枝の背後にまわり込んで退路を断っている。
母の頬は鉛色で生気がなく、首すじには赤黒い痣がふたつ、くっきりと浮かんでいる。
「もう遅いのじゃ。お招きしておるのでな。初枝さんの血を吸うのを、愉しみにしておられたのじゃ。
 当家の嫁として、粗相のないようにしてくだされや」
父の顔色も蒼く、首すじには母のそれと同じ間隔を置いて、ふたつの痣。
そしてそのまがまがしい記憶をいまだに消せずにいる俺も、同じ痣をふたつ、首のつけ根に疼かせていた。

つぎの記憶は、自分の嫁になる少女が、黒衣の男に立ったまま抱きすくめられているところ。
「ああっ!」
涙声の悲鳴を呑み込んで、唇をキュッと噛みしめるのと。
抱きすくめた初老の男の口許から覗いた牙が、彼女の首すじに突き立つのとが、同時だった。
黄ばんだ犬歯が、その尖った切っ先を白い素肌に埋め込まれてゆく光景は、いつ思い出してもどきりとする。
「諦介さん、たすけてえっ」
自分を呼ぶ叫び声に、思わず耳をふさいだあの日。
けれどもつぎの記憶はさらに鮮明に、俺の脳裏に灼きついている。

黒のストッキングの足許に、俺と両親の血を吸ったその男は舌を這わせて、
薄黒く上品に透けたふくらはぎを、舐めくりまわす。
その有様を無念そうに見おろす少女の目線は、すでに理性を喪いかけて宙を迷っていた。
白い首すじにしたたるバラ色のしずくが、ピンク色のブラウスのえり首を浸そうとしているのに、
もはや彼女はそんなことなど意に介していないのだ。
男の卑猥な唇は、薄手のストッキングがくしゃくしゃになるまでいたぶり抜いて、
しまいに牙を突き立てて咬み破っていった。
少女はふらふらと身を崩し、その場にあお向けになって、
あお向けになった少女のうえに、彼女の未来の夫からすべてを譲り渡された幸運な男がのしかかり、
ねだり取った花婿の権利を、無垢な肢体に行使してゆく。
太ももまでめくれ上がったスカートの奥に、逞しくそそり立つどす黒い魔羅が忍び込んでゆくのを、
鋭利な牙が初枝の首すじに埋め込まれるのを見たときと同じくらいドキドキしながら、
とうとう視線を外すことができずに、さいごまで見届けてしまっていた。
そそぎ込まれた精液は、彼女のスカートの裏側を濡らしただけで、身体の秘奥を侵すことがなかったのは。
たんに、処女の生き血をもっと吸い取りたいだけだったのだと、容易に想像することができた。

三か月後に決まっていた祝言の日取りを俺はもう三か月伸ばして、
やつが初枝の身体からむさぼり取る処女の生き血の量を増やしてやることにした。
いぶかる初枝の両親がすべてを納得するのに、時間はかからなかった。
一人でも多く支配して、享受する血の量を確保したかったあの男の手で、
初枝の両親もまた、うちの両親と同じ運命に堕ちてしまったのだから。

それからどれほどの年月が流れたことか。
「黒のストッキングがお好きなの?いつものことながら、いやらしいわね」
軽い非難をこめた目で、女は俺を上目づかいで睨みつける。
その目線にかすかな媚びがあるのを、俺も、彼女の亭主も、見逃してはいなかった。
「いいわ。穿いてきてあげる。今度のあなたのお宅の法事、お手伝いに伺うわ」
女は亭主のまえ、気前よく咬み破らせてくれた肌色のストッキングを穿いたまま、
これ見よがしに亭主に見せつける。
「ね、黒のほうが、目だつわよね?」
不承不承に頷く亭主は、チラッと俺のほうを窺い目線を交えると、
「わたしも心配なので、伺うよ」
と、言ってくれた。
きっと、失神した女房をかばって自宅に連れ帰る役目を、引き受けてくれるつもりなのだろう。

この夫婦は、このあいだモノにした若夫婦の、婿さんの側のご両親。
嫁の不倫を咎めようとして俺の邸に上がり込み、返り討ちに遭ってしまった、おっちょこちょいな女だった。
その実、悪賢い嫁が口うるさい自分の姑を堕落させるために仕組んだ罠だったということに、いまだに気づいていないけれど。
俺の褥で弄ばれて、汚され尽したあとなのに、
いまだに元教師らしい凛とした潔癖さを失くしていない。
「そこが好ましい。そこに惚れた」
よりにもよって亭主にいうことではなかったけれど、いわずにはいられなかった。
あんたの女房は良い女だ と。
亭主をまえにぬけぬけと、女はいった。
「ねえ、今度から悠子って呼んで。ほかにそう呼ぶのは、ダンナだけなの」

五十に近い齢を感じさせないうら若さを秘めたこの女は、いま俺を癒すだけではなく、救おうとさえしている。
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