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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

期限付きの吸血鬼

2017年04月17日(Mon) 07:38:34

俺は薄ぼんやりとした頭を抱えながら、目のまえで妻の佳菜美が吸血鬼に血を吸い取られてゆくのを、ただぼう然と眺めていた。
スーツ姿の妻は、自宅の畳のうえにあお向け、大の字になって、すでに意識をもうろうとさせている。
胸元をはだけられたブラウスのえり首にはバラ色のしずくを散らし、唇はただ切なげにあえぎつづけて、
精液に濡れた花柄のロングスカートはまくりあげられて、
肌色のストッキングに包まれたむっちりとした肉づきの脚を、太ももまで惜しげもなくさらけ出していた。

気前よく、自分からすすんで血を吸い取らせている――そんな錯覚に襲われたのは、なぜだろう?
近い記憶では、ついさっきまで自分自身が、そうしていた。
ある程度まで血を吸い取られてしまうと、血を吸われること自体がひどく快感になってしまって、やめられなくなるのだった。
きっと佳菜美も、そうにちがいなかった。
やつは佳菜美の血を、俺のときよりも美味そうに味わっている。
そして俺のときと同じように、佳菜美の血も吸い尽してしまうに違いなかった。
予想通り、佳菜美の体内をめぐる血液を、一滴余さず吸い取ってしまうと、
やつは初めて佳菜美の胸元から顔をあげ、
こっちをみてにまっと笑った。
とても満足そうな笑みだった。
俺も思わず、にまっと笑い返していた。

30分後。
佳菜美はけだるげに体を起こし、身づくろいをしていた。
乱れた髪を手ぐしで整え、頬に着いた血をタオルで乱暴に拭って、
吊り紐の切れたブラジャーを自堕落な手つきではずすと、くずかごのなかに放り込み、
くまなく唇を当てられて咬み破られてしまったパンストを脱ぎ捨てると、これもくずかごのなかに放り込んだ。
血がないのに身体が動いている――ということは、俺たちはその場で吸血鬼になってしまったのか?
「お察しのとおり」
俺と同年輩の吸血鬼は、またもにまっと笑った。
悪戯をしかけた悪童が、自分のしかけた悪戯がばれて舌を出すときみたいな、そんな笑いだった。
お前の女房は寝取ってしまったからな――そう言いたげな得意そうな笑みに、俺はむかっ腹を立てた。
「あんたがたは、他人の血がないと生きていけない。
 生き延びたかったら――そうだな――知り合いや親せきを一人ずつ家に招んで、血を吸うんだな。
 まず手始めは、息子と娘から血をもらうことだな」
「冗談じゃないわ!よりにもよって自分の子供からだなんて!」
妻は猛反発したし、俺も相手を罵った。
「そんなことないよ」
ふすまの向こうからの声に、俺たちはビクッとしてふり返った。
「僕たちの血でよかったら、吸いなよ」
半ば怯えた顔つきが、それでもはっきりとした意志を言葉にしてつむいでいた。
「小父さん、父さんと母さんを死なせないでくれて礼を言うよ。どういうつもりか知らないけどさ」
吸血鬼は、ふふんと笑った。
「親に似ずにいい子たちだな。せいぜい助けてもらえ」
やつはそう言い捨てて、スッと姿を消した。
妻の佳菜美のほうをかえりみると、もう顔つきが変わっていた。
もの欲しげな表情に、「若い子の血が欲しい」って、書いてあった。
「あなた、正美の血をもらうといいわ。あたし、勝哉のをもらうから」
妻に仕切られるまま、初めての吸血行為が、ぎこちない近親相姦のように始められた。
息子の勝哉は佳菜美の腕のなかで、
観念したように目を瞑った娘の正美は俺の腕に抱かれたまま、
うら若い血液で干からびた親たちの血管を浸してくれていった。
「あたし、父さんのために友だち家に招ぶからね」
腕のなかの正美のささやきに、俺は浅ましくも、「頼むね」と、言いつづけていた。

「あの子たちがまじめで、よかったわね」
「まったくだ。さすがに実の娘とセックスするわけにはいかないからな」
ホホホ・・・佳菜美がいやな笑いかたをした。
「あなた、怒るかもしれないけれど――あたしが家に招ぶ第一号は、浮気相手にするわ。奥さんがあたしに会いたがってるの」
浮気相手の妻が面会を要求する。
妻の言いぐさはさりげなかったが、それは修羅場じゃないかと、俺は思った。
「修羅場じゃなくしてしまいましょうよ」
自分のしたことを棚にあげて、妻はしゃあしゃあと俺を誘惑した。
あのひとの奥さんって、美人なのよ・・・と付け加えることを忘れずに。

翌日はたしかに、修羅場だった。それも一方的に、向こう夫婦にとって。
こういうときのつねとして、相手の奥さんはこぎれいなスーツでキメてきていた。
「たしかに美人だな」
俺は浮気妻をふり返って、にんまりとした。
「気に入って良かったね」
佳菜美は自分の亭主が浮気相手の妻に舌なめずりするのを、他人事みたいに笑って受け流した。
十数分後。
妻はいつもの浮気セックスに励んでいたし、
俺は俺で、ダンナのまえで人妻を抱くという素晴らしい経験を、満喫してしまっていた。
パンストを破られた脚をばたつかせて泣きじゃくりながら犯されていった女は、俺が首すじからそそぎ込んだ毒液にほだされて、
ものの数分もすると、もっと・・・もっとお!って、よがり狂っていた。

娘の同級生を襲ったのは、つぎの日のことだった。
「制服汚しちゃダメよ」
娘はそういって友だちに催眠薬入りのジュースを飲ませて眠らせると、
彼女の履いている紺のハイソックスをずり降ろして、ふくらはぎをあらわにした。
「ここなら目だたないから。一回血を吸ったら、いうこと聞くんでしょ?」
そういえば。
あのあと吸血鬼にも血を吸われてしまった娘は、毎晩のように制服に着替えると、どこかへと出かけてゆくようになった。
「処女の血って、人気あるみたい」
うつろな声色の呟きをうっかり聞き流しにして、俺はむき出しのふくらはぎに唇を吸いつけていた。
ピチピチとした生気を帯びた生硬な素肌が、俺の牙を妖しく疼かせた。

俺の父や兄は、妻の佳菜美が。
母や兄嫁は、俺自身が。
佳菜美の父と義弟は、妻の佳菜美が。
義母と佳奈美の妹とは、俺自身が。
そう、男は女の、女は男の血を欲しがるものなのだ。
そんなふうに俺たちは、周囲の男女を次々と、毒牙にかけた。
自分自身が灼けつくような渇きから、逃れるために。
そしてあっという間に、ひと月が経った。

「だいぶおおぜい、餌食にしたようだな」
吸血鬼はにんまりと笑った。
抑えつけた佳菜美から吸い取った血を、口許からしたたり落しながら。
「よくやった。褒美にお前たちを、もとの人間に戻してやるよ」
そういうとやつは佳菜美の首すじを咬み、俺の首すじにも咬みついた。
咬まれた牙から注入されたおびただしい液体が、俺にもとの生気を取り戻させた。
「どういうことなんだ」
「あとは俺と仲間とが、引き継ぐことにする。
 なにしろ、人間どもは警戒心が強いからな。
 見ず知らずの人間や、行きずりの人間を襲って血を吸うのは、結構難儀なのだよ。
 だから、お前たちを利用した。
 お前たちだったら、気を許して一人で家に来るやつがいるからな。
 これで、お前たちの周囲の人間は、全員俺たちの奴隷となるのだ」
そういうことだったのか――かすかな後悔が胸をかすめる。
そんな俺の胸中を察したのか、妻が言葉を添えた。
「あなた、毒を喰らわば皿までも よ」

こんどは血を吸われる愉しみが経験できるのよ。
あたし、たっぷり抱いてもらうの。あなたも好きなひとを選ぶといいわ。
あたしたちも、愉しんじゃいましょ。
そういえば、あたしの浮気相手の奥さま、言ってたわ。
貴男に血を吸ってもらえるのなら、亭主のしていることに目をつぶってもいいっていってくれてるの。
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