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妖艶なる吸血

淫らな吸血鬼と倒錯した男女の織りなす、妖しいお伽噺・・・

ともだち。

2017年04月22日(Sat) 15:23:35

この学園に潜入して、ひと月ちょっとが経った。
ミサキユウヤは、吸血鬼。
生まれつきではないはずなのだが、吸血鬼になる前のことは、あまりよく憶えてはいない。
記憶というものにあまり重きを置かなくなったのは、血を吸う性のせいだとは、なんとなく感じている。
身近な人間の脚や首すじを咬んで血を吸うなどというおぞましい行為など、いくら克明に憶えていたって仕方ないから。
それでも忘れられないのは、親たちからこの学校に転校になると告げられた時、
「安心をし。こんどの学校、吸血鬼を受け入れる宣言をしているんだって。
 クラスのお友だちの血を、好きなだけ吸えるんだよ」
と言われたこと。
ずっと人目を忍んでしてきた行為を、これからはもうおおっぴらにすることができる。
子どもらしい素直な歓びがある一方で、なにかにつけ疑いをさしはさむことを忘れない本能も、捨て去ることができずにいた。
――まてよ、そんなうまい話あるのか?
というわけで、当分は自分の正体を隠して、目立たない存在として新しいクラスにとけ込むことに腐心した。

転校生が注目を浴びるのは、最初の1~2カ月である。
目新しいうちこそいろんな人に声をかけられるけど、
もともとそんなに取り柄のあるわけではなくスポーツマンでもない彼が、人から忘れられるのは早かった。
意図してそう心がけた結果とはいえ、本人が寂しがるほどに。
――どこに行っても、居場所は教室の隅か日陰の廊下なんだな。
そのほうが、居心地はいいんだけど、と、自らを慰める。

その代わり――放課後の、だれかと2人きりになるほど遅い時間の教室は、彼の支配下に入ることになる。
その日の獲物に選ばれた少年は、なにも知らずに彼といっしょに2人きりになって、
むき出された飢えた牙を目のまえに、どうすることもできなくなって、咬まれていった。
軽度のマインドコントロールを心得ていたユウヤは、標的と決めた男子1人だけが教室に残るよう、周囲を仕向けることができたのだ。

――どうして親は、わざわざ男子校など選んだのだ?
吸い取ったばかりの血で口許をネットリさせながら、ユウヤはほんの少しだけ心で愚痴る。
それはやっぱり、どうせ支配するのなら、可愛い女の子のほうが良いに決まっているではないか。
ああ、そうだった。
ここは、吸血鬼を受け入れてくれるって宣言した学校だったっけ。
用心深くいまだに正体を隠している彼にとって、それはまだあまり実感できるありがた味を伴わないメリットだったけど。

血を吸った同級生の記憶は、その場で消すことにした。
うわさが広まるのを防ぎたかったのだ。
口封じに血を吸い尽してしまうという発想は、彼にも彼の家族にもない。
そこまですることはないじゃないか――そんな発想の持ち主である彼らにとっては、吸血鬼を受けれる街は、別天地のはずだった。
記憶を消された同級生は、翌日ほんのちょっと蒼い顔をして登校してきて、
でも仲間に向かってユウヤの存在に対して警告を発することはなかった。
そしてその日は、貧血気味の「お得意様」を除いた別のだれかと、帰りは2人きりになるよう仕向けていく。

咬まれた痕は咬まれた者にしか見えないから、彼が同級生たちに加えた犯罪の痕は、まだ当面気づかれることはないだろう。
濃紺の半ズボンに同色のハイソックスという、男子としてはマイナーなスタイルの制服も幸いした。
首すじでは目立つので、ハイソックスを引き降ろしたふくらはぎに咬みつくことで、
彼の痕跡はさらにしばらく長く、人目に触れずに済むはずだ。
もっとも――ハイソックスに独特な嗜好を持っていた彼はしばしば、衝動のおもむくままにそのまま咬みついて、
よだれをたっぷりしみ込ませながら痕を残してしまうのだが。

その日はしまった――と思った。
体育大会の翌日の事だった。
クラス一丸でがんばったすがすがしい記憶を振り払うことができなくて、その日はだれにも咬みつくことなく家に帰ったのだ。
貧血気味で迎えたその日、彼はだれかひとりを教室に残すためのマインドコントロールを取ることができなかった。

――母さんに頼んで、血を吸わせてもらおう。
脳裏に拡がりつつある眩暈を抱えながら、ユウヤはひっそりとそう思った。
母さんも吸血の習慣を持っていたが、同時にまだ体内にいくらかの血を残していた。
その点はユウヤも同じだったから、彼らは外部で獲物にありつけなかったときには、
お互いの血を吸い合いうことで当座の飢えをしのいでいたのだ。
この学校に来てから、しばらく母さんの血を飲んでいない。
女の柔肌に牙を突き立てるのは、実の母親が相手でも、ちょっとドキドキする。
ユウヤもまた、本来は青春真っただ中の中学生なのだ。

ふと顔をあげると、教室の入り口から中を覗き込んでくる生徒の姿が目に入った。
同級生の越川翔太だった。
「忘れ物?」
ぞんざいに投げた言葉に、祥太はううん・・・とかぶりを振って応えてきた。
そしてこちらに歩み寄って来ると、信じられない言葉を口にした。

もしかして、喉渇いてるんじゃない?

え・・・?
空とぼけようとして外した視線を、祥太は追いかけるようにまわり込んだ。
「朝からずっと具合悪そうにしてたけど、血が欲しいんだよね?」
祥太の質問は真正面過ぎて、応えを躊躇して黙りこくってしまった。
陰にこもった態度は相手を警戒させるから、よくない。
父から教わったことは、まだまだ付け焼刃に過ぎなかったと、いやというほど自覚する。
「だいじょうぶだから。知ってるだろ?ここは吸血鬼を受け入れているって」

祥太のことは、つい3日ほど前に一度、咬んだはず。
ほかの少年たちと同じように、ちょっと戸惑って、なんなく金縛りにかかって、唯々諾々と首すじを咬まれていったはず。
そのあと靴下を引きずりおろすつもりが、性急な衝動のままに舌を這わせて、ハイソックスをよだれまみれにしてしまったのが、いつもと違うところだった。
「ハイソックス咬み破るのが好きなんだよね?
 きょうはなんとなくきみに咬まれそうな気がしたから、新しいのおろして履いてきたんだ」
スッと差し伸べられた脚は、男子にしてはなだらか過ぎる、すらりとしたシルエット。
ひざ小僧のすぐ下までお行儀よく引き伸ばされた濃紺のハイソックスが、教室の窓から射し込む陽射しを照り返して、
真新しいリブをツヤツヤと輝かせている。
しぜんと口許を近寄せてしまい、気がついたら祥太のハイソックスに、じわじわとよだれをしみ込ませてしまっていた。
祥太はクスクスと笑いながらも、彼の行為を受け容れてくれた。
「なんか、くすぐったいな。あと、なんか、やらしいよね?」
行為の本質が伝わるのだろうか?
ユウヤはもういちど舌を這わせて、ナイロン生地のしなやかな舌触りを愉しむと、おもむろに咬みついていった。
牙の切っ先にまでよだれが伝い落ちるほど、喉の奥がはぜるほど、人の生き血に欲情していた。

あー・・・
祥太のあげるうめき声もかえりみず、ひとしきり血を吸い取ったあと顔をあげると、祥太は額を抑えて机に突っ伏していた。
だいじょうぶか?と声をかけ気づかうつもりが、もうどうしようもない衝動のまま、
座った姿勢を崩しそうになる祥太にのしかかって、教室の床の上に引きずり倒す。
そのまま身体を重ねていって、牙の切っ先で長髪になかば覆われた首すじをさぐっていった。
あ・・・
ユウヤの下で、祥太が再び声をあげた。
祥太はユウヤの邪魔をしないよう彼の二の腕に手を添えながら、いった。
「勃(た)ってるね?」
え・・・
ふとわれにかえると、おそろいの半ズボンのなかで、股間の一物が勃起しているのに気づいた。
そうなんだ。こうしているときにいつも感じるのは、この羞ずかしい劣情なのだ。
でも、待てよ。
身体を重ねた相手の変化を感じ取ったユウヤは、ニッと笑ってこたえていた。
「きみだって、勃ってるじゃないか」

「いいから咬んで」
言われるままに牙を埋めた首すじから、十代の少年の新鮮な血液を、じゅうぶんに摂取していく。
胸の奥の空しいすき間を暖かなものが埋めていくのを感じながら、
一方で股間の昂ぶりが一層熱を帯びるのも、感じないわけにはいかなかった。
2人の少年は、かたや血を吸う行為に、かたや吸われる行為に、しばらくの間熱中し続けていた。

きみ、血を吸った子の記憶を消そうとしたよね?
ぼくもだから、危うく忘れかけそうになったんだ。
でも・・・きみに咬まれるのがなぜか、ひどく愉しく思えて・・・忘れることができなかったんだ。
忘れちゃいけないって、そう思って、きみの行動に注意してたら、いつも違う子を狙って2人きりになろうとしているのに気がついて。
目をつけた子だけじゃなくって、順番に咬んでいるのは、弱らせちゃいけないって思っているんだなって思ったら、なんか怖くなくなっちゃって。
体育大会の帰り、だれにも声をかけないで帰ったから、ちょっと心配であとを追いかけたんだけど、
きみはいい顔をしていてさばさばと帰っていったから、みんなと頑張れていい気分でいるのを壊しちゃいけないと思ってあきらめたんだ。
ぼくで良かったら、時々声かけてね。獲物をつかまえられなかった時なんか特に・・・

血を吸われるのが快感で、記憶を抱え続けた子。
そんな子が、クラスにいたんだな。
ユウヤはいままでにない安ど感を、覚え始めていた。けれどもまだ、1日のブランクは埋め切れていない。
浅ましいと思いながらも、ユウヤはいった。
「もう少し、きみの血を吸ってもいい?」
祥太はくすぐったそうに笑って、いいよ、と、こたえた。
屈託のない、眩しいような笑みだった。
ユウヤは祥太の顔に唇を近づけて――気がついたら唇を重ね合わせていた。


かなりの貧血で緩慢になった足取りは、親に気づかれるほどだった。
「ショウ、疲れてるみたいだよ。早く寝たら」
気づかう母親がかけてきた声さえ、「憑かれている」って聞こえちゃうほどに。
ユウヤの支配を受け入れることにした少年は、思い切って口火を切った。
「うちのクラスに吸血鬼がいるんだ。ボク、今度から彼に血を吸わせてあげることにしたから」
母親は大きく目を見開いて息子を見、そして張りつめた視線をフッと、意図的にゆるめた。
「学校が開放されるって、そういうことなんだね」
あなたはそれでいいの?と問いかける母親に、ウン、と応えたときの顔つきを見て、
母親はちょっとだけ逡巡し、それから仕方ないかな、という笑みを浮かべて、いった。
「自分で決めたんなら、そうすればいいよ」

もうひとつ、お願いがあるんだけど・・・
祥太はちょっとだけおずおずとした声色になって、母親の顔色を窺った。
なにか出費を伴うおねだりをするとき、この子はいつもこうだから。
そう思いながら促す母親に、祥太はいった。
「うちの学校さ、四月から女子の制服も採用したでしょ?ボクこんどから、女子の制服で登校したいんだ」
ユウヤの彼女になってあげたくて・・・
うつむきながら、新たに自覚した欲求を告げると、母親は「わかった」とだけ、いった。
「父さんには私から、話をしておく」

その週の週末、祥太は母親に伴われて、入学の時制服を作ったお店に、採寸に出かけていった。
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